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中嶋監督代行が投手陣を見事に蘇生! オリックス先発陣が両リーグ初の4試合連続で7イニング以上登板

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
中嶋聡監督代行になりオリックス投手陣は着実に蘇生し始めている(筆者撮影)

【中嶋監督代行が指揮した2週間】

 突然の監督交代劇を経て、中嶋聡監督代行がオリックスの指揮を執り始めてから約2週間が経過した。ここまで11試合を戦い、5勝5敗1分けと勝率5割をキープしている。

 この11試合の内7試合が、今シーズン全く歯が立たなかったソフトバンク、ロッテとの対戦だったことを考えれば、その健闘ぶりが窺い知れるだろう。

 しかもこの11試合のスパンだけで見ると、勝率5割以上の成績を残しているのは、オリックス以外ではソフトバンクしかないのだ。明らかにチーム状況は変化し始めていると考えていいだろう。

 本欄でも中嶋監督代行が就任以来、西村徳文前監督とは違う“らしさ”を発揮する采配をしていると指摘していたが、ここに来て明確な違いが浮き彫りになっているのが投手起用だ。

【両リーグ初の4試合連続7イニング以上登板】

 確実にいえることは、中嶋聡監督代行になって投手陣が間違いなく安定の方向へ向かっている。

 その最たる例が、先発投手陣だ。先発投手たちはより長いイニングを任されるようになり、直近の4試合は全員が7イニング以上を投げている。今シーズンここまで先発投手が4試合連続で7イニング以上投げたのは、両リーグを通じてオリックスが初めてのことだ。

 さらに中嶋監督代行が指揮した11試合で、5イニング未満で降板したのは、ケガから復帰した山岡泰輔投手が3回で交代した8月27日のソフトバンク戦のみ。残り10試合は全投手が、最低でも5イニング以上を投げ切っている。

 しかも掲載している表を確認すれば理解できるように、この11試合で7イニング以上投げた先発投手の数は、パ・リーグでトップなのだ。

 シーズン開幕直後に山本由伸投手や山岡投手など若手有望投手が揃うオリックスは。着実に投手王国の道を歩んでいると解説させてもらったが、いよいよその本領を発揮し始めたようだ。

(筆者作成)
(筆者作成)

【中継ぎ陣の整備にも積極的な中嶋監督代行】

 先発陣が安定してくれば、必然的に中継ぎ陣の負担も減ってくる。やはり表を見てもらうと理解できるように、この11試合での中継ぎ平均起用数では、ロッテとオリックスだけが3人未満に留まっている。

 しかもオリックスは、中嶋監督代行が就任直後の8月22、23日の西武戦で、2試合連続で5人の中継ぎ陣を起用して以降、ここ8試合はすべて3人以内の起用が続いている。

 また、それまでフル回転が続いていた中継ぎ陣を整備するため、勝ちパターンの主力投手を除き、2軍から積極的に選手を登用。中嶋監督代行になって富山凌雅投手、漆原大晟投手、飯田優也投手らが1軍に昇格している。

 就任会見で「全員でやりますし、まだまだ2軍にも選手がいますし、それを全部自分では分かっているつもりなので、その全部を使っていきたいと思います」と公言していた通り、まさに選手全員を使ってチームの流れを変えようとしている。

【まだまだ良くなりそうな先発投手陣】

 確実に投手陣の状況が改善しているものの、中嶋監督代行は現状に満足しているわけではない。

 9月2日のソフトバンク戦後、囲み取材で以下のように話している。

 「(先発投手が)1点もやれないという状況をまたつくってしまっているというのがすべてだと思います。どうにか先発ピッチャーを楽に投げさせられるように考えていきます」

 中嶋監督代行は序盤で点を取れる展開をつくれず、先発投手に必要以上のプレッシャーをかけてしまっていると感じている。そうしたプレッシャーを排除する試合展開をつくれるようになれば、まだまだ先発投手陣は良くなっていくとの考えがあるからに他ならない。

【唯一の気がかりは先発投手陣の球数増】

 ただ唯一気がかりなのは、先発投手陣が長いイニングを任さるることで、球数も確実に増えていることだ。

 西村前監督が指揮していた期間で、先発投手が110球以上投げた試合は5試合だったが、中嶋監督代行になってすでに同じ5試合に到達している。こうした球数増が、先発投手陣にどう影響を及ぼすのかは今後の展開を見守っていくしかない。

 ただ5試合の内120球以上投げている試合は、9月1日のソフトバンク戦に登板した山本投手だけ(121球)で、残り4試合は110球台に留まっている。やみくもに球数を投げさせているわけでないということも付記しておくべきだろう。

 中嶋監督代行の下、オリックス投手陣はこのまま快進撃を続けていくことになるのだろうか。リーグ最下位チームながら面白い存在になりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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