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44日間で計53試合! 活動再開のカージナルスを待ち受ける地獄の超過密スケジュール

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
カージナルスは超過密日程を無事に消化することができるのか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【活動再開するカージナルスの新日程を発表】

 新型コロナウイルスのチーム内クラスターが発生し、7月29日のツインズ戦を最後に活動自粛していたカージナルスが、現地時間の8月15日から活動を再開することになった。

 同じくチーム内クラスターで自粛期間を経たマーリンズ以外、各チームが20試合近くの公式戦を消化する中、ここまでカージナルスは5試合しか戦っていない。

 すでにロブ・マンフレッド・コミッショナーも、約2ヶ月間という短縮シーズンで残り55試合の消化は難しいとの見解を示す一方で、シーズンが成立するよう、できる限り60試合に近づけたいという意向を表明していたのだが、14日に発表された新スケジュールは驚愕するものだった。

 まさにカージナルスにとって“地獄のスケジュール”といえるものだ。

【44日間で計53試合、オフは2日のみ】

 15日のホワイトソックス戦を皮切りに、9月27日のブルワーズ戦まで、44日間で53試合を消化するという超過密日程だ。

 しかも8月は休み無しで、9月に入ってようやく2回のオフ日が組まれている。いうまでもなくほぼ毎日試合を戦わなければならないのだ。

 もちろん1日1試合ペースで消化できるはずもなく、何と11回のダブルヘッダーが組まれている。またそのダブルヘッダーの組まれ方も尋常ではない。

 ダブルヘッダーが組まれている日を列挙すると、8月15日、同17日、同19日、同27日、9月5日、同8日、同10日、同14日、同16日、同18日、同25日──と、両月とも1日おきに3回のダブルヘッダーを戦う期間があるのだ。

 果たしてカージナルスの選手たちは、この日程を無事に消化することができるのだろうか。

【公平感を欠く過密日程】

 この日程を消化できれば、マンフレッド・コミッショナーの意向通り、公式戦全日程終了時点でカージナルスは58試合を消化することになる。ただ米メディアによれば、もしカージナルスがポストシーズン進出を争っているような場合は、さらにポストシーズン開始前に残り2試合も消化させる予定だという。

 その結果カージナルスがポストシーズンに進出できたとして、すでに疲弊しきった彼らが、他チームと対等に戦えるとは到底思えない。この過密日程自体が不公平感を拭いきれない。

【MLBは記録よりもビジネス優先】

 それだけではない。MLBは長い歴史を育みながら、偉大な記録を輩出しそれを大切にしてきた。

 これまでスケジュール重視のマイナーリーグでダブルヘッダーを7イニング制で実施していても、MLBがあくまで9イニング制に固執してきたのも、記録に対する敬意であり、選手たちに公平な機会を与えるためだ。

 にもかかわらず、カージナルスは7イニング制のダブルヘッダーを11回も戦わなければならないのだから、記録の尊さは完全に無視されているとしか思えない。

 そうした状況で生まれた記録を、ファンはどう思うのだろうか。

 今シーズンがすべてにおいて異例ずくめだということは理解できる。だが今回の過密日程を見ても垣間見られるように、ビジネスを優先したあまり現場を軽視していないだろうか。

 果たしてファンの人たちは、どれだけ今シーズンに正当性を見出しているのだろうか。そして現場で新型コロナウイルスと戦いながら試合を続けている選手たちは、MLBの姿勢をどう見ているのだろうか。

 とにかく釈然としない気持ちを抑えられないのは、自分だけではないはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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