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観客席で観戦していた選手が退場処分に! メッツ対ナショナルズ戦で起こった珍事の理由とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
観客席で観戦していて退場処分を受けたスティーブン・ストラスバーグ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【メッツ対ナショナルズ戦で珍事が発生】

 現地時間の8月13日に行われたメッツ対ナショナルズ戦で、珍事が起こった。

 この日球審を務めていたカルロス・トーレス氏が、試合には関係のないベンチ外の選手を退場処分にしたのだ。試合中継を担当したSNYが、退場シーンの動画をTwitter上に投稿している。

 退場処分を受けたのは、ナショナルズの大黒柱スティーブン・ストラスバーグ投手。この日はベンチ外で観客席から試合を見守っていたのだが、突然トーレス球審から退場処分を言い渡され、観客席を去る姿が映し出されている。

【無観客試合で不平不満が球審に筒抜け?】

 米メディアによると、ストラスバーグ投手が退場処分を受けた理由は、トーレス球審のストライク、ボール判定に不満を口にしたためだという。

 映像にあるように、ストラスバーグ投手はトーレス球審からかなり離れた観客席に陣取っていたのだが、やはり無観客試合のため、運悪く彼の声はトーレス球審まで届いてしまったようだ。

 現在MLBが定めた新型コロナウイルス対策のプロトコルによれば、各チームは緊急補充を目的に余剰選手を遠征に帯同できるようになっており、出場ロースター28人以外の選手はベンチに入れず、ソーシャルディスタンスを保つため、観客席などで待機することが義務づけられている。

 この日登板予定のなかったストラスバーグ投手もベンチ外選手として、観客席から試合を観戦していたというわけだ。

 それにしても無観客試合は、やはり聞こえなくてもいい声まで筒抜けのようだ。日本でもシーズン開幕当初は無観客試合で実施され、ヤクルト対中日戦でTV中継の声がグラウンドにも届いてしまい、中日の与田剛監督からコースがばれてしまうと抗議が出たこともあった。

【メッツ番記者も球審に疑問ツイートを投稿】

 もちろん球審は観客席のファンも退場させる権利をもっているのだが、観客席にいた選手が退場処分を受けるのは前代未聞だ。ただ今回のストラスバーグ投手に関しては、彼に同情する人が多いようだ。

 というのも、この日のトーレス球審の判定はかなり不安定で、ナショナルズばかりかメッツからも不満の声が出ていたようだ。

 メッツ番記者の1人、アンソニー・ディコモ記者もその1人だ。彼はMLB公式サイトのデータを引用し、ナショナルズのオースティン・ボース投手が、ピート・アロンソ選手と対戦時の投球で、2球の判定ミス(ボールをストライク、ストライクをボールと判定)があったと指摘している。

 今や球場に設置された最新追尾システムを利用し、瞬時に判定ミスまで確認できるようになった。やはりMLBが模索しているように、時代はロボット審判導入に流れているのかもしれない。

 MLBは今後も無観客試合での実施が続く予定で、今後もストラスバーグ投手のような選手が現れることになるもかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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