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カブスのホーム試合にシーズン開幕から観客が入るかもしれない特別な理由と隠れたオーナーの副収入

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
リグリーフィールドの名所になっている住居ビル屋上に設置された観客席(筆者撮影)

【シカゴの地元TV局レポーターが意味深ツイート】

 現地時間の7月1日にMLB全30チームが、サマーキャンプの集合日を迎えた。MLBのガイドラインによれば、この日までに選手、コーチ、スタッフを含めキャンプ全参加者がPCR検査を受けたことになる。

 今回のPCR検査は、MLBから依頼を受けた医療機関が統轄し診断を行うもので、エンゼルスやドジャースなど多くのチームが3日からキャンプを開始するため、それまでに検査結果がチームに通達される模様だ。

 まずは現時点で、リーグ内でどれ程感染が広がっているのかが気になるところだ。

 そんな中、シカゴのニュース専門局WGNでレポーターを務めるジョッシュ・フライドマン氏が、カブスに関する気になるツイートを投稿している。

【本拠地球場の外にある名物観客席】

 その内容を簡単に説明すると、情報筋の話として、シカゴ市がカブスの試合に観客を動員することを認可し、MLBから試合日程が発表されるのと同時にチケット販売を開始するというものだ。

 もちろん今シーズンのMLBは当分の間、無観客試合で実施されることになっているのはご存知の通りだ。

 つい先日もカブスでビジネス部門の球団社長を務めるクレイン・ケニー氏が地元ラジオ局に、すでに限定数の観客を動員できる現状にあるとの見通しを明らかにし、MLBから無観客試合で実施するよう要請を受けたばかりだ。

 だがフライドマン氏が報告している観客受け入れ許可とは、本拠地球場「リグリーフィールド」内の観客席を指しているのではない。“別の”観客席のことなのだ。

 シカゴの中心街に位置するリグリーフィールドは周辺を高層住宅ビルに囲まれていることから、外野側に並ぶ住宅ビルの屋上から試合が観戦できる環境にあった。そして1980年代に入るとカブス人気が高まりを見せ、ビルのオーナーたちが屋上に観客席を設置し、一般に有料で開放するようになり、現在では「Wrigleyville rooftops(リグリー村の屋上群)」として、リグリーフィールドの名所的な存在になっている。

 つまりシカゴ市はこの名物観客席について、キャパシティの25%までなら動員することを許可したというものだ。もちろんこの観客席についてはカブスの管轄外なので、MLBとしても手が出せない状況といえる。

【カブス・オーナーの大事な副収入?】

 実はシカゴ市の判断には、明確な根拠がある。すでにイリノイ州政府が新型コロナウイルスによる活動自粛を緩和し、州内の商業施設についてキャパシティの20%までなら受け入れを許可しているのだ。

 この許可は、リグリーフィールドとホワイトソックスの本拠地球場「ギャランティード・レート・フィールド」も対象に入っており、そのため前述のケニー氏の発言に繋がっているというわけだ。

 つまり州政府やシカゴ市から見れば、名物観客席を規定範囲内で開放することは何の問題もないということになる。

 だがここで見過ごすことができないのが、名物観客席を開放することになった場合、その利益を手にするのは他ならぬカブスのリケッツ・オーナーなのだ。

 同じくフライドマン氏のツイートによれば、現在では名物観客席の大半を占める16カ所の所有権をオーナー家族が有しているという。もし観客席が販売されればとんでもないプレミア席なので、高騰化は必至だ。そうなればリケッツ・オーナーはさらに収入を得ることになる。

 見方を変えれば、リケッツ・オーナーの“抜け道”的な収入源になるわけだが、状況によってMLBは何らかの対応を迫られることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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