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MLBオーナーが正式承認! 2020年シーズン運営方針の中身とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
果たしてMLBはシーズンを実施することができるのだろうか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLBと選手会合意の2020年シーズン運営方針が正式承認】

 すでに日米メディアが報じていたように、新型コロナウイルスの影響でシーズン延期が続く中、MLBと選手会が協議を続けた結果、今後のシーズン運営方針で双方合意していたが、現地時間の3月27日にオーナーが満場一致で賛成したため、正式に承認された。

 運営方針の内容について、すでにMLB公式サイトをはじめ複数メディアが報じているので、この場で主な内容を解説していきたい。

【シーズンの開幕時期】

 今なお米国内では新型コロナウイルスの感染拡大が続いている状況ということもあり、現時点で具体的な日程は決まっていない。

 ただMLB、選手会ともに試合が実施できる環境さえ整えば、少しでも多くの試合を実施することで合意している。その場合、10月まで公式戦、11月にポストシーズンを実施することになる。

 公式戦の日程およびポストシーズンの試合形式(開催場所も含む)に関しては、今後MLBと選手会で小委員会を設置し、協議していく予定。

 また試合が実施できる環境とは、以下の3条件がクリアになったことを意味する。

 ・人々の集会に関して制限がなくなる

 ・フライト移動の制限がなくなる

 ・医療専門家が試合を実施しても選手、ファンに危険が及ばないと判断する

 ただし状況によっては無観客試合の実施や開催場所の変更も考慮していく。また現時点でスプリングトレーニングの再実施、またシーズンを開幕できた際の出場ロースターの登録可能人数についても決まっておらず、今後も協議を続けていく。

【サービスタイムの扱い】

 今シーズン終了後にFA権を取得予定の選手たちに関しては、サービスタイム(MLB在籍期間)はシーズンがどんなかたちで実施されようとも、シーズンを通して出場ロースターもしくは故障者リストに入っていれば、1年間のサービスタイムを得ることができる。

 またシーズンが中止された場合でも、対象選手たちは2019年に取得したものと同様のサービスタイムを得られることになり、基本的にすべての選手が来オフにFA権を取得できることになる。

 ただし年俸調停に関してはルールの見直しを行う予定。現時点で詳細については未定のまま。この点については大谷翔平選手も影響を受けることになる。

【年俸の支払い】

 選手会はシーズンが中止されたとしても、年俸支払いを求めてチームやMLBを相手に訴訟しないことで合意。

 MLBは選手に対し、4、5月分として総額1億7000万ドル(約187億円)を支払う。シーズンが開幕した場合、この資金はシーズン中に支払われるサラリーの1部としてみなされる。またシーズンが中止になった場合でも、選手はこの資金を返金する必要は無い。

 選手会は選手を4つのタイプに分け、この資金を分配していく。

【ドラフト】

 MLBはドラフト実施(本来は6月10日実施予定)を7月20日まで延期することができる。

 通常は各チーム40巡目まで指名できるが、今シーズンは5巡目までに制限する。また2021年のドラフトも20巡指名に留める。

 ドラフト指名を受けた選手に対し、チームは最高で10万ドル(約1100万円)の契約金を支払うことができる。ドラフト外で契約した選手に対しては、2万ドル(約220万円)に制限する。

 国外選手の獲得期間も7月2日以降に延期される。これまで国外選手を獲得するための資金プールをチーム間でトレードできたが、当面は禁止する。

 現時点でも不透明な要素がかなり多いし、今もシーズンが開幕できるのかどうかも分からないことに変わりはない。とりあえず新型コロナウイルスの状況を見守っていくしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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