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大谷翔平にとっても朗報?! 2020年シーズンが中止になっても取得予定全選手にFA権を認可

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
来オフのFA市場の目玉と言われていたムーキー・ベッツ選手もFA権を取得(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【米通信社がシーズン中止でも取得予定選手にFA権認可と報道】

 米最大の通信社、AP通信は現地時間の3月25日、MLBと選手会が協議した結果、2020年シーズンがこのまま中止に追い込まれたとしても、今シーズン終了後にFA資格を得られる予定だった選手たちに通常通りFA資格を与えることで合意したと報じた。

 すでにアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表した新型コロナウイルスに関するガイダンスに従い、早くても5月中旬まで開幕延期を決めていたMLBだが、ここまで短縮シーズンになった場合のサービスタイム(MLB在籍期間)について選手会と水面下で協議を続けてきた。

 今回の報道を受け、選手側の要求が全面的に受け入れられたかたちで合意した模様だ。

【サービスタイムとは?】

 MLBファンの方ならご承知の方も多いと思うが、統一労働協約(CBA)でしっかり契約内容が規定されているMLBでは、サービスタイムが重要な意味を持つ。

 例えば日本ではFA資格を得られるのは「MLB在籍6年」と説明されているが、6年連続でMLBの公式戦に出場していたとしても、すべての選手がFA資格を得られるわけではない。あくまでサービスタイムで6年に達しなければならない。

 サービスタイムの計算方法は簡単で、現在の162試合制のシーズンは公式戦が186日間で実施されており、そのうち172日間に出場ロースター(今シーズンから26人枠)もしくは故障者リスト(あくまでメジャーリーグの故障者リスト)に入っていれば、1年間のサービスタイムを与えられる。

 逆に出場ロースター入りが172日未満の選手は、すべて日割り計算となり、毎年のように公式戦に出場していたとしても172日に達するまで1年間のサービスタイムを与えられない。

 そうしたルールがある中で、すでにシーズン開幕が遅れ、短縮シーズンがほぼ確実視されている現状では、172日以上のシーズン実施が困難になるため、選手会がサービスタイムの見直しを求め、MLBと協議を続けてきたというわけだ。

【筒香、山口、秋山の日本人3選手は対象外】

 AP通信によれば、今回の合意により、今シーズンが中止になった場合、選手たちは2019年シーズンに得たものとと同じサービスタイムを得られることになった。

 つまり今シーズンにMLBデビュー予定の選手は対象外になるという。そこには筒香嘉智選手、秋山翔吾選手、山口俊投手も含まれており、もし仮に今シーズンがキャンセルになった場合は、彼らは1年間のサービスタイムを得ることができず、来シーズンがシーズン1年目という扱いになる。

 ただし短縮シーズンでもシーズンが実施され、シーズンを通して出場ロースターに入っていれば、全選手に1年間のサービスタイムが与えられることで合意されているので、その場合は彼らにも同様に1年間のサービスタイムを得られることになる。

【年俸調停もサービスタイムがベース】

 今回の合意で得をしたのは、FA資格獲得予定選手だけではない。実は大谷翔平選手にとっても朗報なのだ。

 FA資格のみならず、年俸調停の資格を得られるのもサービスタイムをベースとしている。サービスタイムで3年間をクリアすると初めて年俸調停の権利を得ることができ、サービスタイムが6年に達するまで年俸調停の権利を有することになる(ただし途中で契約解除されFAになってしまう場合は除く)。

 過去2シーズンで故障者リストに入りながらもメジャーのロースターに入り続けた大谷選手は、サービスタイムでも2年をクリアしている。つまり今シーズンがどんなかたちで終わろうとも1年間のサービスタイムが与えられることになるので、大谷選手は自動的に年俸調停の資格を得ることになった。

 これで来シーズンは年俸の大幅アップが期待でき、ようやく大谷選手も億単位の年俸を得られるのは間違いない。ちなみに年俸調停の権利を得た1年目での最高年俸は、2018年にカブスのクリス・ブライアント選手が合意した1085万ドル(約12億円)だ。

 すでに通常実施が困難になった今シーズンで、ブライアント選手に迫るような大幅アップは不可能だと思うが、2年ぶりの二刀流復帰でしっかり活躍できれば、2017年の日本ハム時代に得ていた2億7000万円(推定)を大幅に上回れる可能性は十分にあるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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