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新キャプテンに指名されたチーム最年長37歳のアイラ・ブラウンが大阪エヴェッサの意識改革に挑む

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新加入ながら大阪のキャプテンに指名されたアイラ・ブラウン選手(筆者撮影)

【アーリーカップでチーム力の高さをうかがわせた大阪】

先週末開催されたBリーグのアーリーカップの関西地区で3位に終わった大阪エヴェッサ。しかし準決勝で同大会初優勝を飾った京都ハンナリーズに77―78の大接戦を演じた他、1回戦の西宮ストークス戦は102―63、3位決定戦のバンビシャス奈良戦も95―73と、B2チーム相手に大勝している。

今シーズンの大阪は、bjリーグ時代に黄金期を築き上げた天日謙作HCが復帰し、選手も昨シーズンから6選手を入れ替えるテコ入れを行った。今回のアーリーカップでは、そんな新生チームの可能性をうかがわせたのではないだろうか。

【キャプテンに指名された37歳のアイラ・ブラウン】

そんな新生チームを象徴する存在といえるのが、新加入ながら天日HCから直々にキャプテン就任の要請を受けた、帰化選手のアイラ・ブラウン選手だろう。

2011―12シーズンに富山グラウジーズ入りして以来、日本のリーグに所属してきたブラウン選手。2016年8月に日本国籍を取得すると、代表チームにも選出され主力として日の丸を背負ってきた。まさにキャプテンに相応しい実績を誇る選手だ。

だが今年8月に37歳になったチーム最年長のベテランであり、日本国籍を有しているとはいえ米国生まれだ。言葉や文化の違いもあり、キャプテンを担う上で難しい面があるような気がしないでもないが、天日HCはブラウン選手のキャプテンシーに最大限の評価を与えている。

【早くもチーム内にブラウン効果が浸透】

「彼は人間的にも非常に素晴らしいですし、ハードワーカーで人一倍練習するし、ウォームアップをやる中で一番声を出しているのが彼です。37歳で経験があって、でもそんなこと(声出し)を若い子に任せない。すべての人が彼から見習うことが多いんじゃないかなと思います。

彼は日本人なので(英語、日本語の)両方コミュニケーションがとれるし、経験も積んでいるので、キャプテンに適任じゃないかなと思い、彼にやってくれないかと頼んだら、やると言ってくれました。非常に助かってます」

実はアーリーカップでも、ブラウン選手のキャプテンシーが垣間見られるシーンがあった。試合前のシュート練習を終了する際、最後はブラウン選手のダンクに合わせて全選手が一緒にジャンプすることで締めくくっていた。チーム広報に確認したところ、すでにチームの儀式になっているようだ。ブラウン選手を中心に、チームが一体感を増しいている証拠といえるだろう。

【新キャプテンが標榜する自信とチームの意識改革】

Bリーグ発足以来、3シーズン連続で負け越している大阪だけに、今シーズンは新生チームとして大いなる飛躍を目指している。ブラウン選手に話を聞いたところ、度々「change culture(チームの意識改革的な意味)」という言葉を繰り返している。

「今シーズンは多くの素晴らしい選手たちが加わったことで、これまでとはまったく別のチームになったと言っていい。チームとしてまとまりもあり、お互いがコミュニケーションをとり合い意思疎通もしっかりできている。

だからと言って自動的に強豪チームになれるわけではない。1つの目標に向かってチーム一丸となって目の前の試合を1試合ずつ戦っていきながら、少しずつ選手の意識が変わっていくことで、チームは強豪チームへと変貌していくことになる」

そうしたチームのまとめ役を担っているのが、ブラウン選手なのだ。

【ブラウン個人も新たなチャレンジに挑む】

今シーズンのブラウン選手はキャプテンという重責のみならず、選手個人としても新たなチャレンジに挑もうとしている。これまで主に4番ポジションを担ってきたが、今シーズンは先発として3番ポジションを任されることになったのだ。

「自分にとって新たなチャレンジだ。自分より動きの素早い選手と対峙し、ビッグマンと協力しながらピック&ロールにも対応しなければならない。1試合のみならずシーズン60試合で安定したプレーができるようにしなければならない。

このオフはこれまで以上に、PGのようにボールハンドリングや動き回る選手にパスを回す練習をこなしてきた」

ブラウン選手としてはオフェンス面に関しては3番でも問題ないようだが、ディフェンス面での対応をカギになると考えているという。

【飛躍的に向上したシュート成功率】

さらに3番ポジションを担う上で必要になってくるのが、ウィングマンとしてのシュート能力だが、今回のアーリーカップにおけるブラウン選手のシュート成功率は目を見張るものがあった。

3試合を通じてのシュート成功率は、なんと63.6%を記録。さらに3点シュート成功率も57.1%高い数値を残している。

元々ブラウン選手のシュート能力は決して悪くはなかった。琉球ゴールデンキングス時代の2017―18シーズンには、シュート成功率49.0%、3点シュート成功率40.9%記録していたが、昨シーズンは負傷のため出場試合も減ったことが影響したのか、シュート成功率40.9%、3点シュート成功率37.1%まで落ち込んでいた。

そのためこのオフは、3番ポジションの練習とともにルーベン・ボイキンACらとシュート能力向上に努めてきた。アーリーカップで対戦した奈良のクリストファー・トーマスHCも、以下のようにブラウン選手を評している。

「アイラはこのオフに自分のプレーを再構築したようだ。現在の彼は次々にシュートを沈めるシューターになっている。元々から悪いシューターではなかったが、やや決め切れる力が落ち、どちらかと言えばドライブ中心の選手だった。

だが今は彼がシュートを打つ構えをすれば、すべてがリングに吸い込まれていくようだ。NBAでコーチをしてきてベン・ゴードンやクレイ・トンプソンなど素晴らしいシューターを見てきたが、アイラもその域に達した偉大なシューターになっている」

今シーズン大阪飛躍のカギを握る選手こそ、チーム最年長のブラウン選手なのだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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