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毎試合を“一戦必勝”で臨むサンロッカーズ渋谷がシーズン終盤で波乱を巻き起こす?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都戦2試合で計90得点を叩き出す活躍をみせたロバート・サクレ選手(筆者撮影)

【敵地で京都ハンナリーズに連勝!光ったサンロッカーズ渋谷のチーム力】

 佳境に入ったBリーグはシーズン第29節を迎え、各地で熱戦が広げられた。東地区4位のサンロッカーズ渋谷は敵地で京都ハンナリーズと対戦し、ロバート・サクレ選手の2試合で計90得点を記録するなどスピード感溢れる波状攻撃を展開し、97対93、105対103と接戦を制し連勝に成功した。

 最近のハンナリーズは2月以降、川崎ブレイブサンダース、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、栃木ブレックスらの強豪チーム相手に互角、もしくはそれ以上の戦いを演じてきた。そのハンナリーズ相手に――しかも敵地で――連勝するのは決して簡単なことではない。それは裏を返せば、現在のサンロッカーズのチーム力が決してハンナリーズに引けを取っていないことを意味するものだ。

 ハンナリーズは前節の試合で脳震盪を起こしていた伊藤達哉選手が出場できなかったこともあり、負傷を抱える綿貫瞬選手を投入してまで勝ちを狙いにいっていた。それだけに浜口炎HCは「試合を終えての率直な感想は2試合タフなゲームで、瞬を無理して2試合使って、ジュリアン(マブンガ選手)、デイヴィッド(サイモン選手)もフル、フル出場させての2敗というのは相当痛いですね」と本音を漏らしている。

【シーズン序盤でのHC解任劇!伊佐HC体制で始まった新たなチーム作り】

 一方のサンロッカーズは、ここまで決して順風満帆なシーズンではなかった。シーズン開幕から1勝7敗という予想外のスタートを切り、チームは10月26日に勝久ジェフリーHCの解任を発表。ACから内部昇格のかたちで伊佐勉氏がHCに就任し、シーズン途中ながら新体制で新たなチーム作りをしていかねばならなくなった。

 その中で試合を戦いながらチーム状態を上向かせるという作業は、決して簡単なものではない。それは同じくシーズン途中でHCが交代しているレバンガ北海道とライジングゼファー福岡も、現在残留プレーオフ争いをする位置にいる状況からも明らかだろう。

 しかもロッカーズが所属する東地区はリーグ最強の激戦区だ。同じ地区に現在リーグ全体でトップ3を形成する千葉ジェッツ、ブレックス、アルバルク東京が揃い、スケジュール的にも他地区チーム以上のタフな試合を戦っていかねばならないという、ある意味ハンディも背負っている。

【コーチ、選手が実感!確実に改善されてきたチーム状態】

 だからこそハンナリーズ相手の連勝は、サンロッカーズにとって大きな意味を持つものだった。伊佐HCも現在のチーム状態に手応えを感じ始めているようだ。

シーズン途中でHCに就任した伊佐勉氏(筆者撮影)
シーズン途中でHCに就任した伊佐勉氏(筆者撮影)

 「やっと自分が求めているものを、(選手たちが)頭でも身体でも理解してきているのかなという印象はあります。ただまだそれを長い時間できないというのが現状でありまして…。

 実際練習できる時間があまりないので、試合を通して微調整していくしかないんですが、僕の考えが浸透しだして、一番いいのは(選手が)モヤモヤしながらではなくてアグレッシブにオフェンスもディフェンスもできているというのが躍動感あふれるバスケットになっているのかなとは思います」

 それは伊佐HCのみならず、選手も実感できているようだ。サクレ選手は以下のように話している。

 「誰がどれだけスコアするかなんて関係ない。試合を通じてチームとしてアグレッシブに正しいシュートを打ち続けることができるかが重要で、そこは選手みんなもしっかりやっているし、自信になりつつある」

【望みをつなげるWC入り!残り全試合が“一戦必勝”】

 今節の連勝で、サンロッカーズのシーズン成績は23勝26敗になった。依然として地区内上位1チームに大きく引き離されている状態だが、チャンピオンシップに進出できるワイルドカード争いで富山グラウジーズに3ゲーム差まで詰め寄り、完全に射程圏内まで追い上げることに成功している。

 もちろん伊佐HCも、ワイルドカード入りに意欲満々だ。

 「あくまでも僕らはチャンピオンシップに(進出できる)、ワイルドカードの2つ目(の枠)に向かうべく日々練習していますし、試合もしています。

 もう1戦1戦戦って勝つしかありませんので、それは実際僕らとしてはプレーオフと同じなので、プレーオフ・モード全開で当たって砕けろではないですけど、砕けないようにどんどんぶつかっていきたいなと思います」

【残り11試合は死闘の連続!台風の目になれるか?】

 だがサンロッカーズを待ち受けるのは、過酷ともいえる状況だ。シーズン残すところ11試合となり、そのうち7試合が地区内上位3チームとの対戦なのだ。もちろん彼らに勝っていかねばワイルドカード入りの望みは潰えてしまうし、また彼らに勝つことで地区優勝争い、さらにはチャンピオンシップで台風の目になる可能性は十分にある。

 伊佐HCは上位3チームとの戦いにまったく気後れしていない。

 「東地区はどこも強いんですけれども、ゲーム自体は戦えているんですよ。手応えもあるんですけど、最後のエラーだったりミスというところの差で結果的にはすべて敗けているので、その差がもしかして大きいのかもしれないですけど、ただ間違いなく戦える位置にはいるのかなと思います。

 (試合の)最後のところもですけど、エラーをいかに減らすかによって上位のチームにしっかり勝ち切ることができるのかなとは思っています」

 サクレ選手も伊佐HCに追随する。

 「今シーズンも一方的な展開で負けたのは数試合しかない。あとは接戦に持ち込んでいる通り、選手皆が勝ちたいという気持ちを忘れずに戦っているからだ。このチームの一員でいることに誇りを感じている。

 今は先のことを考えても仕方がない。とにかく目の前の試合を全力で戦い抜くこと。結果は二の次だ。とにかく目の前のことだけに集中していきたい」

 コーチ、選手が一丸となったサンロッカーズ。残り11試合に全身全霊を注ぎ込む覚悟だ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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