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外国籍選手初のアシスト王誕生か? ルール改正で完全覚醒したジュリアン・マブンガのゲーム支配力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都ハンナリーズの4連勝を支える活躍をみせるジュリアン・マブンガ選手(筆者撮影)

 シーズン前には苦戦が予想されていた京都ハンナリーズが、ここまで着実に勝ち星を積み重ねている。17日のシーズン第3節では、開幕4連勝を続けていた琉球ゴールデンキングスを迎え94-89で撃破。4連勝を飾り、西地区首位タイに躍り出ている。

 すでに本欄でも指摘しているように、永吉佑也選手の出場停止処分、外国籍選手(デイヴィッド・サイモン選手)の獲得遅れというマイナス要因を抱えながらも、浜口炎HCが育て上げたベテラン日本人選手たちの存在がそれを帳消しにする活躍をみせている。

 だが、それら日本人選手たち以上にチームを支える存在になっているのが、ジュリアン・マブンガ選手だろう。それは彼の個人成績をみても明らかだ。ここまで5試合の平均スタッツは、18.2得点、8.2リバウンド、10.2アシスト、1.6スティール、1.4ブロックショット──と、すべてのカテゴリーでリーグ上位にランクしている。まさにオールラウンドの活躍をみせている。

 なかでも驚異的なのがアシスト数だ。13日の横浜ビー・コルセアーズ戦でリーグ最多記録に並ぶ16アシストを記録したほか、ここ3試合は連続2桁アシスト(計42アシスト)をマークし、アシスト部門で単独トップを走っている。Bリーグ発足以来、外国籍選手および帰化選手の活躍が目覚ましく、個人タイトルも彼らに奪われてしまう傾向にあったが、アシストだけは2シーズン連続で日本人選手がタイトルを獲得してきた。今シーズンのマブンガ選手は、間違いなくそれを脅かす存在になりそうだ。

 ここまでのハンナリーズの快進撃と自身の活躍について、マブンガ選手自身はどう感じているのだろうか。

 「確かにユウヤ(永吉選手)は出場できないし、マサ(片岡大晴選手)もケガをして選手不足の状態にあるが、とにかく選手皆がチームとして攻守ともによくなっていくように、毎日必死で頑張っている。今自分たちは先を見据えるのではなく、目の前の1試合1試合をしっかり戦うことだけを考えている。

 チームが自分を信頼してボールを預けてくれる。あとそこからは自分の判断に任されている。今日(キングス戦)は10本くらいしかシュートを打たなかったけれど(実際は9本)、もちろん打つ気になればもっと打てるよ。ただただアタックし続けながら、相手のディフェンスがどう動いてくるのかが読めるようになってくるし、自分は他の選手のプレーをよくすることができる。

 たとえば前半はアタックのたびにあまりシュートは狙わずにパスを出し続けると、後半戦はパスを恐れてディフェンスが変わってくる、そうやって相手ディフェンスを読んでいる。16アシストの時も自分のシュートのことではなく、とにかく正しい選択をすることだけを考えていた。デイヴィッドがオープンなら彼にボールを回したし、ユウスケ(岡田優介選手)がオープンなら彼にパスを出した。自分はわがままな選手ではない。チームのためにプレーしている」

 マブンガ選手は昨シーズンからハンナリーズにリクルートされている。2016-17シーズンに滋賀レイクスターズに在籍していた彼の試合コントロール能力に着目していたからだ。レイクスターズでは得点部門でリーグ3位に入るシューターとして活躍していたが、ハンナリーズに移籍してからはボール運びやオフェンスの組み立ても任されるようになり、オールラウンド選手としてのマブンガ選手の本来の能力を発揮するようになった。

 それではなぜ今シーズンに入って、さらに個人成績が上昇しているのだろうか。

 「一番大きいのは、今シーズンの自分は40分間プレーしていることだ(笑)。確か昨シーズンは平均4アシストだったと思うけど、平均出場時間も22分(正確には21分55秒)だったからね。出場時間がほぼ倍になっているんだからアシストも倍の8くらいになって当然だ。今はそれより上回って10を超えているけどね。とにかくバスケットボールを正しい方向でプレーしたい。ただそれだけだ」

 今シーズンから外国籍選手および帰化選手の出場ルールが変更になり、外国籍選手はすべてのクォーターで2選手が出場できるようになった。特にハンナリーズの場合、日本人ビッグマンの永吉選手を失っていることもあり、浜口HCはマブンガ選手とサイモン選手を「試合になっている間は38分は使っていくつもりです」と明言している。ここまでのマブンガ選手の平均出場時間37分17秒が示す通り、フル回転で出場し続けていることで、個人成績も大幅にアップしているのだ。

 実は今シーズンのマブンガ選手には、アシストばかりか他の記録にも期待がかかる。12日のビー・コルセアーズ戦で15得点、11リバウンド、14アシストでトリプルダブルを達成しているのだが、現在のような活躍を続けていけば、十分にシーズン・トリプルダブル(シーズンの平均個人成績でトリプルダブルを達成すること)の可能性があるのではないかと思っている。

 もちろん簡単な記録ではない。NBAでもシーズン・トリプルダブル達成者はオスカー・ロバートソン選手と、現在2シーズン連続でシーズン・トリプルダブルを続けているラッセル・ウェストブルック選手の2人しか存在していない。NBAより8分試合時間が短いBリーグではさらに難しくなってくるだろう。

 「自分はリーグで最も優れたオールラウンド選手だと思っている」

 難しい記録なのは理解しているが、今シーズンのマブンガ選手に期待を感じずにはいられない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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