Yahoo!ニュース

サイヤング賞へ一直線? メッツのデグロムがQSのMLB新記録を塗り替えた安定感

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB記録となるシーズン23試合連続QSを達成したジェイコブ・デグロム投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズンのサイヤング賞有力候補の1人、メッツのジェイコブ・デグロム投手が現地21日のナショナルズ戦に先発し、7回を投げ3安打1失点8三振の好投で今シーズン9勝目を挙げた。またこの日もクォリティ・スタート(QS)を達成し、今シーズンのQSを23試合までに伸ばし、MLB新記録を樹立した。

 念のためQSを説明しておくと、MLBでは先発投手の安定感を示す指標として使用されるデータで、6イニング以上投げ、3自責点以内に抑えた試合をQSとするものだ。これまでMLB記録は1968年のボブ・ギブソン投手と2005年のクリス・カーペンター投手の22試合連続QSだった。

 サイヤング賞を争う上で勝利数が9というのは、現在ナ・リーグの最多勝はマックス・シャーザー投手の17勝ということから考えても、明らかに物足りないものがある。だがそれ以外の成績は特筆すべきものだ。防御率(1.77)はリーグ1位で、三振数(259)、イニング数(209.0)でもシャーザー投手に次いでリーグ2位と競り合っている。さらに選手のチームへの貢献度を示すWAR(Wins Above Replacement)でも、ここまで9を超えているのはシャーザー投手、アーロン・ノラ投手、デグロム投手の3人しかいない。

 普通に考えれば、投手3部門のうち2部門にリーグ1位に立っているシャーザー投手の方が有利だろうが、安定感という面ではリーグでただ1人防御率が1点台のデグロム投手の方が上だろう。今シーズンのサイヤング賞争いでは元巨人のマイルス・マイコラス投手らの名もあがったりもしていたが、やはりシャーザー投手、デグロム投手の一騎打ちとみるべきだろう。あとはサイヤング賞の投票権を持つ記者たちがどう判断するかにかかっている。

 ちなみに前述のギブソン投手、カーペンター投手ともに、連続QS記録を達成したシーズンにサイヤング賞を受賞している。だがその一方で、1956年に同賞が誕生して以来、先発投手で10勝以下の勝ち星で受賞した投手は1人もいない。

 果たしてデグロム投手の歴史的なサイヤング受賞は実現するのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事