1回負けても終わりじゃない! 公式大会でリーグ戦を導入するボーイズリーグ大阪阪南支部の試み
日本の少年野球は現在、秋季大会のシーズンを迎えている。中学生の場合ならこの時期から2年生主体のチームに変わり、新たなシーズンに臨むことになる。
公益財団法人日本野球少年野球連盟(以下、ボーイズリーグ)でも各地で中学生の部で支部予選が始まっているが、関西ブロック大阪阪南支部では3年前から独自の試みを実施している。同支部が管轄する連盟主催の公式大会すべて(春、夏、秋の年3回の支部大会)でリーグ戦を導入しているのだ。この秋の関西秋季大会支部予選でも9月15~17日の日程で、予選リーグが実施された。
今回の実施概要を説明すると、同支部所属の13チームを4つのグループに分け、それぞれがリーグ戦を行う。予選勝ち抜けはポイントで争われ、チームは勝敗に合わせ、ポイント(コールド勝ち3点、勝ち2点、負け0点、コールド負けマイナス1点、引き分け1点)が与えられ、各グループで1位になった4チームと2位に入った上位2チームの計6チームが9月22、23日で実施予定の決勝トーナメントに進出できるというものだ。
こうした公式大会は現在でも、トーナメント方式で実施されるのが通例だ。阪南支部の安藤忠正支部長によれば、ボーイズリーグの関西ブロックでもリーグ戦を導入しているのは阪南支部だけだという。それでは阪南支部ではなぜ3年前からリーグ戦を導入しているのだろうか。安藤支部長は、以下のように説明してくれた。
「もちろん(予選リーグを導入しても)結果として強いチームが残ってくるということですけれども、こんないい方は失礼かもしれませんが、弱いチームはいつも1回戦で負けて元気がないと。そういったところで1つ負けても…、今回でもワイルドカードを取り入れて2位を引き上げるようにしてあげると、子供たちの目が変わってくるというか、試合の楽しみ方が変わってくるのかなという期待をしています」
(リーグ戦導入前は)異議もありました。阪南支部では年に1回新年会を兼ねて監督懇親会をやっていまして、そこでこんな(リーグ戦)のがありますよと意見交換を行ってきました。皆さん野球人ですから、その辺の主旨を含めてリーグ戦を導入することで1つでも多く試合ができたらいいなというチームの理解もありました」
現在では阪南支部ではリーグ戦を戦うことが当たり前の世界になり、所属チームのプレースタイルにも変化が生じてきているようだ。同じく安藤支部長の証言だ。
「監督さんの試合の運び方が変わってきましたね。一発勝負で勝たなきゃいけないというのではなく、もうちょっとのびのびやらせてあげたいというので、(選手たちが)元気よくバットを振るようになってきました。
送りバントも少し減ってきました。ランナーが出ると必ず送りバント、三塁にランナーがいたらスクイズという監督もいましたけど、3年目で監督さんも変わってきたのか減ってきましたね」
一発勝負のトーナメント方式では、指導する監督もどうしても目先の勝利にこだわる戦術をとる傾向が強くなるものだ。それがリーグ戦を採用することで、もっと選手たちにのびのび野球をやらせようという戦術が増えてきたという。また現在では、勝敗表を常にチェックし他のチームの状況を確認しながら、どうやったら予選リーグを突破するかを思案することを楽しみにしている監督もいるらしい。
阪南支部では今後もリーグ戦を継続して実施していく意向だが、これが他支部にも広がっていくのかといえば、そう簡単ではないようだ。安藤支部長も支部ごとで抱える運営面の難しさを指摘する。
「他の支部にも我々阪南支部がリーグ戦を実施していることが広まりつつありますけど、やはりそれぞれの支部で運営面の難しさがあると思います。
今年は阪南支部は13チームでやってますけれども、これが20チームを超えるような支部になってくると、(リーグ戦導入が)いいことではあると分かっていても、5日で終わっていたものが7日、8日の大会になるとしんどいということになってしまいます。そういうところの苦労はありますね」
阪南支部でもリーグ戦導入とともに大会日程の調整を余儀なくされている。だが支部全体の話し合いで、現在もリーグ戦を継続してきている。以前本欄で日本ハムの吉井理人投手コーチから見た高校野球の現状を考察した記事を公開しているが、現在のトーナメント方式よりもリーグ戦の有益性を指摘している。ボーイズリーグに限らず少年野球に携わる各組織の事情があるのも理解できるが、リーグ戦導入が可能な環境があるのであれば、やはり検討に値するものではないだろうか。
年代ごとに1年を通して大会が続く少年野球界でリーグ戦を導入するのは決して簡単なことではないのは理解している。だがリーグ戦を導入することで、いい意味で選手も指導者も変化するという事実は無視できない。果たして阪南支部の試みは野球界への警鐘になっていくのだろうか。