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クローザーを託されたファビオ・カスティーヨは西武投手陣の苦境を救う

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
交流戦明けからクローザーに抜擢されたファビオ・カスティーヨ投手(筆者撮影)

 西武が交流戦明けから投手陣の整備に着手し、ファビオ・カスティーヨ投手を先発からクローザーに配置転換した。

 ここまで開幕から首位を走り続ける西武だが、依然としてリーグでダントツ1位のチーム打率を誇る攻撃陣が好調を続ける一方で、投手陣は開幕当初の好調を維持できず、現在はパ・リーグで唯一防御率が4点台に沈み危機的状況に陥っていた。

 特にリリーフ陣は首脳陣が期待していたニール・ワグナー投手から増田達至投手へと繋ぐ“勝利の方程式”が完全に崩壊。2勝1敗、防御率4.85のワグナー投手は現在2軍で調整中で、0勝4敗11セーブ、防御率5.61の増田投手もクローザーから外れ、まだ本来の投球を取り戻していない。さらに20試合以上登板している主力リリーフ陣の中でも防御率が4.00未満なのは小石博孝投手(3.55)しか存在してない。

 今後シーズン後半戦を見据えリリーフ陣を安定させるためにも、新たな“勝利の方程式”を確立することが急務だった。そこで新クローザーに抜擢されたのがカスティーヨ投手だった。今年西武入りしたドミニカ人右腕は開幕から先発路テーション入りし、12試合に登板し、5勝4敗、防御率4.21と今一つチームの期待に応えることができていなかった。しかも与四球はここまでチーム最多の41と制球力にも不安さがありクローザーの適性にやや難があるようにも見えるが、カスティーヨ投手の配置換えについて土肥義弘投手コーチは以下のように説明してくれた。

 「球のスピードがかなり魅力というのが一番ですね。実は先発していた時も初回から球が荒れるということはなかった。そう考えたら疲労とか出た時に荒れ始めるので、1イニングだったらそんなに荒れないのかなという予測の元に決めました。(転換後は)ここまでいい投球をしてくれているので、これからもちょっと期待したいなと思ってます」

 土肥コーチが指摘しているように、カスティーヨ投手には打者を圧倒できる150キロを超える速球を有しているほか、緩急をつけられる落差の大きいチェンジアップがある。転換後ここまで5試合に登板し、失点はされているものの1勝2セーブ1ホールドとしっかりクローザーの役目を果たしており、ここまではしっかり期待に応えている。ただ5試合中2試合で3四球を記録しており(残り3試合は無四球)、多少不安要素も覗かせている。

 今回の配置転換についてカスティーヨ投手自身はどう感じているのか。彼のマイナーリーグでの通算成績をチェックしてみると、登板数は360試合中先発は66試合と主にリリーフ投手として活躍していた。だがセーブ機会登板数は38試合で通算セーブ数も25と、クローザーとしての経験は決して豊富ではない。

 「あまりクローザーの経験はないけど、主にロングリリーバー(複数イニングを任させるリリーフ投手)としてやってきた。今年はキャンプから先発投手として調整してきたから先発で投げるコンディションを整えてきたけど、(配置転換を告げられてからは)今は自分はリリーフ投手なんだと気持ちを切り替えた。そこからは試合に臨む度にリリーフ投手として投げることに慣れてきている。これからもリリーフとして投げることに何の問題もないよ」

 それではカスティーヨ投手はクローザーとして成功するためには何が重要だと考えているのだろうか。

 「クローザーはチームが勝つ場面で投げなくてはならない。どんな状況であろうともチームが勝つために1イニングをしっかり投げ切ること。それが最も重要なことだと思う。

 先発と違い、体調面でも精神面でも毎試合投げる状態を整えておかないといけないと思う。今はキャッチボールやジムでのコンディショニングに関してもやり方を変えている。リリーフ投手としての経験もあるし、常に準備だけは怠らないようにしている」

 とにかくクローザーが安定しない限り、リリーフ陣全体も安定してこない。もちろん本来のクローザーだった増田投手の復活も期待したいところだが、チームとしてはカスティーヨ投手が好投を続ける限りこのまま彼に任せる方針のようだ。

 まさにシーズン後半戦のカギを握る存在になりそうなカスティーヨ投手。彼の大車輪の活躍が10年ぶりのリーグ優勝を現実のものにしてくれるはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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