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早くも交流戦巧者ぶりを発揮するソフトバンクはこのまま波に乗れるのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
工藤監督にとっても交流戦4連覇がかかっている(筆者撮影)

 プロ野球は交流戦が開幕したが、12球団で唯一ソフトバンクが3連勝スタートを切った(DeNAは1試合が雨天中止で2連勝)。セ・リーグ2位の阪神を相手に、1カード3連戦としては5月1~3日のロッテ戦以来の3タテ。ここまで苦しい戦いが続いていただけに、カード勝ち越しも4カードぶりのことだった。まさに理想的なかたちで交流戦をスタートさせることができた。3連戦を戦い終えた工藤公康監督は以下のように話している。

 「こうやって3つ勝てると勢いにも乗れるし、次にも繋がるかなと思います。(いいかたちで5月を終え)また6月も(いいかたちを)つくれるように(成績を)残せるように、みんなで力を合わせて頑張ります」

 過去の実績が示す通り、ソフトバンクほど交流戦を有効活用しているチームは存在しない。ここまで交流戦が実施された過去13年間で交流戦優勝は7回で、逆に負け越したのはわずか2回しかない。通算成績も192勝114敗12分けと勝率.628で、2位の日本ハム(勝率.546)を大きく引き離しダントツの1位を残している。さらに工藤監督が就任した2015年に18試合制になってからは、ここまで交流戦3連覇を続けている。

 昨シーズンも交流戦開幕前まで楽天に3.5ゲーム差の2位だったが、交流戦で優勝を飾ったことでゲーム差を1.5まで縮めるだけでなく勝ち星で楽天を上回る(楽天が40勝に対しソフトバンクが42勝)ことに成功し、完全に追撃態勢を整えている。今シーズンもここまでチーム状況が万全ではないだけに、交流戦で例年通りの成績を残して状態を上向かせたいところだろう。

 早くも明るい兆しが見え始めている。3連戦の最終戦に登板した中田賢一投手がやや終盤に乱れたものの8回途中まで投げ今季3勝目を挙げている。先発投手が8回までマウンドに立ったのは5月18日のロッテ戦で東浜臣投手が完投して以来。中田投手自身にとっても4月21日の日本ハム戦以来今シーズン2度目のことだった。

 「今日中田くんが長く投げてくれたことで本来6回、7回(で投げるところ)のピッチャーが休養することができたんで、非常によかったと思います。ちょっとうしろ(リリーフ陣)に負担がかかっているところがあるんで、そこはいろいろ考えながらやっていきたいと思います」

 工藤監督が説明するように、ここまで昨シーズンの勝利の方程式だったデニス・サファテ投手、岩嵜翔投手の2人がともに戦線離脱し、リリーフ陣が総動員でその穴をカバーしている状態だ。少しでも負担を軽減させる意味でも、先発陣の奮起は必要不可欠だ。そんな中での中田投手の好投はリリーフ陣を立て直す上でも大きな意味を持つもので、投手起用という面で今後の戦い方にプラスしかない。

 ただリリーフ陣の状況を見てもわかるように、今シーズンのソフトバンクは例年以上に厳しい状況にあるのは間違いない。その一方で上位チームとの直接対決がない分ゲーム差を縮めるのが難しい交流戦ではとにかく勝ち星を積み上げていくしかない。果たして今シーズンのソフトバンクはどこまで交流戦巧者ぶりを発揮できるのか。いろいろな意味で今後の戦い方に注目が集まるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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