大谷翔平が2番打者としてマイク・トラウト以上に優れた能力

エンゼルスにとって大谷翔平選手が2番を打つことは大きな意味を持っている(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 エンゼルスのマイク・ソーシア監督が、現地15日のアストロズ戦から大谷翔平選手を2番で起用し始めた。個人的には“時が来た”という思いだった。ここまでの大谷選手の打撃を見てきて、まさに彼が現在のMLBであまりに理想的な2番打者だったからだ。あくまで2番に入った大谷選手の活躍次第だが、今後も2番定着は十分に有り得ると感じている。

 日本ハム時代でも1番を任されたことはあるが、2番はなかった。大谷選手のような長距離打者を2番に置くというのは、あまり日本球界にはない発想だと思う。だが現在のエンゼルスの中で大谷選手ほど2番に相応しい選手はいないと断言していいくらいだ。

 順を追って説明していこう。まずは現在のMLBにおける2番打者の理想像だ。実は1990年代にもトニー・ラルーサ監督がマーク・マグワイア選手やラリー・ウォーカー選手のような長距離打者を2番で起用することがあったが、その当時は奇策的要素が強く定着することはなかった。しかし現在はセーバーメトリクスによる戦術が発達し、すべてデータに裏づけられた起用に基づいている。

 その中で2番打者に求められるものは、クリーンアップの得点力を生かせる得点効率の高い選手ということだ。つまりクリーンアップを迎える前に高い確率で得点圏に進塁できる選手ということになってくる。そこで重要になってくるのが出塁率と長打率だ。出塁率が高いのは説明する必要はないだろうが、高い長打率が必要とされるのは一打で得点圏に進める確率が高くなるためだ。

 日本では現在も犠打が大きな戦術の1つになっているが、当然のことながらアウトを無駄にせず効率よく得点圏に走者を送り込むことの方が理想的なはずだ。その確率の高い選手を2番に置くのは何らおかしいことはない。ここ数年MLBでデータとしてOPS(出塁率と長打率を単純に足したもの)が重要視されるようになったのはそのためだ。

 今シーズンのエンゼルスは、42試合中の40試合でマイク・トラウト選手が2番を任されてきた。彼のOPSは5月15日終了時点で、両リーグ合わせて2位の1.082(ちなみに0.9以上で一流打者といわれる)と飛躍的に高い。それだけ自分の力で効率よく得点圏に出塁していることを意味する。実は大谷選手も規定打席に達していないものの、OPSは1.015とMLBでも7位に相当する高い数値を残している。もちろんチーム内ではトラウト選手に次いで2位に入っている。

 さらに2番打者に求められる能力が、走力の高さだ。勘違いしてほしくないのは盗塁数が多いかどうかではなく、単純にベースを走るスピードが速いかどうかだ。もちろん盗塁も大きな魅力の1つだが、OPSの高い選手は盗塁しなくても得点圏に進塁できる確率が高い。そこでさらに走塁スピードが加わることによって、クリーンアップの長打に期待しなくてもホームに戻ってこられる確率も増してくるわけだ。

 そこで今シーズンのエンゼルス野手の走塁スピードをチェックしてみると(MLB公式サイト統計)、チーム最多の盗塁数を残しているトラウト選手が秒速29.4フィートでチーム1位にランクしているのは当然だが、実は2位に入っているのが同28.1フィートで大谷選手なのだ。ちなみに大谷選手の走塁スピードはDH部門で堂々のMLB1位にランクしている。つまりチーム内ではOPS、走力ともにトラウト選手に並び立つ存在であり、トラウト選手以外では最も2番打者に適している打者なのだ。

 ただここまでのデータならば、OPS、走力ともに大谷選手より優れているトラウト選手を今まで通り2番で起用すればいいということになってしまう。なぜソーシア監督が大谷選手を2番で起用したいのかは別の理由があるからだろう。それは大谷選手が左打者だからではないかと睨んでいる。

 単純な話ではあるが、一塁までの到達することだけを考えた場合、右打者のトラウト選手よりも左打者の大谷選手の方が有利だ。走塁スピードに大きな差がないのであれば、距離が短い方が先に到達できるのは明らかなことだ。そこで検証したいのが併殺数だ。仮に走者をおいて打ち損じた場合でも併殺を防げれば、チャンスを残すことができるからだ。

 ここまでトラウト選手は併殺機会が23回あり、そのうち併殺を許しているのはわずか3回だけで、併殺阻止率は87.0%に達している。決して悪い数値ではない。だが大谷選手はそれをさらに上回り、16回中1回のみの93.8%なのだ。つまりチーム最多の盗塁数を誇るトラウト選手と併殺されにくい大谷選手という2人の特性を生かした方が、より相手チームにとって驚異的な打線を組むことができるというのは明快だろう。

 この打順が機能するようになれば、間違いなく大谷選手とトラウト選手がMLB最強の1、2番コンビになり、エンゼルス打撃陣の破壊力はさらに増すことになるはずだ。まずは大谷選手が2番打者として今まで通りの打撃ができるかどうかを見極めていくしかない。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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