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ツインズが採用した外野手4人の守備シフトは今後MLBに波及していくか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ツインズ指揮官として4年目のシーズンを迎えたポール・モリター監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現在のMLBでは守備シフトが大きな戦略になっている。MLB挑戦1年目の大谷翔平選手に対しても早くも守備シフトを採用しているチームがあるように、データ解析が進化するにつれ守備シフトは大きな成果を生んでいる。

 そんな中、現地30日に行われたツインズ対ブルージェイズ戦で、ツインズが今まで以上に大胆な守備シフトを採用したのだ。MLB公式サイトでデータ解析を専門に扱っているマイク・ペトリエロ記者がツイートで報告している。

 対象となった選手はブルージェイズのジャスティン・スモーク選手。昨シーズンは38本塁打を放っている長距離打者だ。守備シフトの配置図を見てもらった通り、なんと遊撃手を外野に回し4人制をとり、さらに残りの3人の内野手もすべて一二塁間に集めてしまっているのだ。ここまで極端な守備シフトはかなり珍しい。

 もちろんツインズがこのシフトを採用したのはデータ上の裏付けがなければ不可能だ。スモーク選手の場合、ゴロは一二塁間に集中し、フライは外野まで届き全方向に飛んでいるということだ。そこで効率的にアウトを奪うのに適した守備位置というのが今回のシフトに繋がったのだろう。

 確かにスモーク選手の打球分布チャートをチェックしてみても、外野に飛んだ打球は全方向にまんべんなく飛んでいるが、内野の打球は一二塁間が多くなっている。ただ決して三遊間の打球も決して少なくはないので、そこは一二塁間の打球を増やす投球の組み立て方も加味されているはずだ。

 ちなみにこの日のスモーク選手は、二ゴロ、二ゴロ、右越え本塁打、二ゴロ、左翼エラー──と5打数1安打だった。さすがに本塁だけではシフト守備では防ぎようがないが、それ以外は打ち取ることに成功している。ただリプレーをみる限りだと、スモーク選手の全打席でこのシフトを採用しているのではなさそうだ。左翼エラーになった第5打席は遊撃手が外野に回っていれば、防げていた可能性が高い。

 いずれにせよ同じ安打を許してしまうなら、長打より単打の方がダメージが少ないのは明らかだ。今後はスモーク選手のような長距離打者の長打を警戒する意味でも外野手4人制は効果的な守備シフトではないだろうか。今後他チームにも波及していくか楽しみなところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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