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ブルワーズ戦の好投でダルビッシュ有は周囲の雑音を沈めることができるのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
27日のブルワーズ戦で今季初安打を放ち笑顔をみせるダルビッシュ有投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ダルビッシュ有投手が現地27日のブルワーズ戦で今季5度目の登板に臨み、6回を投げ3安打1失点(自責はゼロ)8三振と見事な投球を演じ、勝ち星こそつかなかったがチームの勝利に貢献した。カブス移籍後2度目の本拠地球場登板で披露した好投に、地元ファンから「ユー・コール」も巻き起こった。

 このオフはFA市場の低迷が続く中、数少ない大型契約を獲得してカブス入りしたダルビッシュ投手だったが、シーズン開幕してからは決して順調なスタートを切れてはいなかった。この日の登板前まで4試合に登板し、成績は0勝2敗、防御率6.86。しかも4試合の登板中3試合が5回途中で降板しており、先発ローテーションの核としての役目を果たせていなかった。

 ダルビッシュ投手への期待が大きかった分、このような状況にメディアが納得できるはずもなかった。そんな不満が噴き出したのが、前回登板した21日のロッキーズ戦の後だった。

 4回まで無失点に抑えていたものの、5回2死一塁から相手投手のタイラー・アンダーソンに四球を与えると、そこから崩れるように集中打を浴び5失点され逆転されてしまい途中降板する結果に。試合後ダルビッシュ投手について聞かれたウィルソン・コントレラス捕手が「2アウトで安心しきってしまうように見える」と発言したことで、メディアから一気にダルビッシュ投手に対して懐疑的な声が出るようになったのだ。

 地元紙の中には、ダルビッシュ投手の加入で結果的にチームを去ることになったジェイク・アリエッタ投手が移籍したフィリーズで好投を続けていることもあり、『Does Yu Darvish see what Jake Arrietta is doing for his new team?(ダルビッシュ有はジェイク・アリエッタが新チームでしていることを理解しているのか?)』という辛辣な見出しで報じる有様だ。

 もちろんジョー・マドン監督はそんな批判的な声に対して、ダルビッシュ投手の擁護に回った。前回の登板後に監督室で個別に話し合いも行った上で、「彼がしっかり(気持ちを入れて)投げていないという考え方は明らかにでたらめであり間違っている」と完全否定し、以下のように説明している。

 「彼は世界を見渡しても最強の投手の1人だ。米国のみならず世界においてだ。しっかり投げない投手が、そこに到達するのは不可能だ。どんな好投手でも時にはいいプロセスを進めない時もあるが、必ずそこから脱するものだ。

 まさに我々はそこにいる。今は自分の投球に集中し、しっかりそのプロセスを進んでいくということで、いい話し合いを持てた。彼も十分に理解できたと思っている。彼はこれまでも数多くの成功を収めてきた選手だ。今はいろいろ適応している最中だ。期待は大きい?その通りだ。彼は素晴らしい選手。それを証明してくれるだろう」

 残念ながらマドン監督がどんなに擁護しようとも、ダルビッシュ投手が結果を出さなければやはりメディアは納得はしてくれないだろう。それはスプリングトレーニング中の大谷翔平選手の報道ぶりを見れば明らかだ。

 果たしてダルビッシュ投手はこの日の好投を機に、調子を上向かせることができるのか。すべてはその1点に尽きる。彼本来の投球を披露できるようになれば、メディアの声はあっという間に賞賛に変わっていくだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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