昨季セーブ王のケンリー・ジャンセンは本当に球威が落ちてしまったのか?

今シーズンは開幕から精彩を欠いているケンリー・ジャンセン投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年ナ・リーグのセーブ王に輝いたドジャースのケンリー・ジャンセン投手が開幕から不振が続いている。ここまで7試合に登板し、0勝1敗、防御率8.10、被打率も.286と厳しい数字が並ぶ。しかもすでに2度のセーブに失敗(昨年は42度のセーブ機会で失敗は1度のみだった)しており、完全にクローザーとしての役目を果たせていない。

 4月17日のパドレス戦で2点を奪われ2度目のセーブに失敗した際、MLB公式サイトでジャンセン投手の不振についてレポートしているのだが、今シーズンは明らかに球威不足、制球力不足なのだという。

 ジャンセン投手といえば、その代名詞ともいえる150キロを超えるカットボールで勝負する投手で、全投球の8割以上をカットボールが占める。MLB歴代1位のセーブ数を誇るマリアノ・リベラ投手を彷彿させる。記事によれば、昨シーズンのカットボールの平均球速は93.2マイル(約150キロ)だったのだが、今シーズンはここまで91.1マイル(約147キロ)に留まっているという。さらに制球力に関しても昨シーズンはストライク率が42.3%だったのに対し、今シーズンはわずか22.6%でしかないという。まさにジャンセン投手の本来の投球とは程遠い内容だ。

 そこでMLB関連サイトの『Baseball Savant』上で公開されているデータを元に、改めてジャンセン投手の投球について検証してみた。公式サイトのように昨シーズン全体のデータではなく、より正確を期すため今シーズンの登板数と同様に、昨シーズンの開幕後登板7試合だけに絞って比較してみた(ほぼ同様の季節時期の投球が比較検証できると考えたため)。

 昨シーズンは1試合平均投球数は14.6だったが、今シーズンは18.4に上昇している。もちろん前述通りストライク率が落ちているのだから球数が増えるのは仕方がないところだが、それでも極端に増えている訳ではないことは理解できるだろう。

 ただ顕著だったのが、やはり球威だった。昨シーズンは全102球中87球のカットボールを投げているのだが(占有率84.19%)、その内31球が93マイル以上を計測している。しかし今シーズンは全129球中108球のカットボールを投げ(占有率は83.72%)、なんと93マイル以上を計測したのはたった8球しかないのだ。

 つまり昨シーズンは同じ時期でも150キロを超えるカットボールを投げられていたのに、今シーズンはほとんど150キロを超えていないのだ。明らかにジャンセン投手の球威不足は季節が原因ではないということだ。それでもジャンセン投手の生命線であるカットボールの占有率を落とすことはできないのだが、これ程の球威不足では苦境に立たされているのも当然だ。

 元々は強肩で恐れられた捕手だったが、ドジャースからの進言で2009年に投手に転向。翌年にはメジャー初昇格を果たし、サクセスロードを歩み出した。2012年から本格的にクローザーを任され、ここまで毎年のように(2015年は負傷で開幕に出遅れる)65試合以上の登板を重ねてきた。さらに昨年と一昨年はポストシーズンでクローザーの枠を超え複数イニングを任せられるなど、大車輪の活躍をみせていた。

 そうした疲労の蓄積が考慮され、スプリングトレーニングではスロー調整を許されていた。オープン戦もわずか5試合の登板でシーズン開幕に臨んでいた。体調面もまだまだ万全ではないはずだ。

 「これから良くなっていくしかない。まだシーズンは始まったばかりだ。自分の何が悪いのかなんて考えるべきではないし、決して自信を失うつもりもない」

 果たしてジャンセン投手の球威不足は一過性のものなのか、それとも完全に失ってしまったのか。もう少しの間は答えがだせそうにない。今は温かくなってくる季節を迎えながら、彼の投球がどう変化していくのかを見守っていくしかない。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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