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今や新人賞最有力候補に躍り出た伊藤達哉を支え続ける人一倍の負けず嫌い精神

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
最近ではドリブルの突破力とシュート力の高さを見せている伊藤達哉選手(筆者撮影)

 シーズン開幕から京都ハンナリーズで先発PGを務める伊藤達哉選手が試合を重ねるごとに、その存在感が増している。

 昨年2月に京都入りしたものの昨シーズンは出場機会はなし。開幕当初はBリーグでの実戦経験不足もありプレーに安定感がなかったが、現在は自慢のディフェンスに加え、オフェンスでもPGとして試合の流れを見極める判断力を遺憾なく発揮し、好調を維持する京都にとって欠かせない存在になっている。

 ここまで負傷のため欠場した12月30日の大阪エヴェッサ戦を除き、残り37試合すべてで先発出場を果たしている。開幕前に新人賞最右翼と目されていたアルバルク東京の馬場雄大選手が1月1日の千葉ジェッツ戦で負傷してから長期欠場を余儀なくされており、現時点では伊藤選手の方が最有力候補に躍り出たといっても過言ではないだろう。

 だが京都の浜口炎HCの目から見れば現在の伊藤選手の活躍ぶりはまったく驚きではないとし、以下のように説明している。

 「最近の試合でもシュートをミスした後でもすぐまたシュートを狙いにいってます。それも外したんですけど、まあハートが強いですね。それとどんな状況でもあまり変わらない(プレーができる)。アグレッシブにインサイドに入って得点を取るようになりましたし、このチームをどういう風にしていけばというバランス(感覚)っていうのがシーズン開幕当初よりもいろいろ掴めてきているんじゃないかと思っています。それが成長といえばその部分が成長しているんだと思います。

 ただ元々彼はあれくらいの力がある選手だと思うので、ここのチームに来たからああいう技術ができて、ああいうシュートが打てて、ああいう抜いていく力が身についたわけではなくて、元から大学の時からああいう力があったんです。シーズン初めは周りのプレーヤーとの兼ね合いもあって様子見というか、PGとして自分をどう生かすかというのが彼にとって一番難しかった部分だと思うんですよね。そこが見つかりつつあるんじゃないかなと凄く感じてきてます」

 東海大学時代には平成28年度のユニバーシアード日本代表にも選出された逸材であり、伊藤選手のポテンシャルの高さは誰もが認めるところだ。最近ではその能力をBリーグの舞台でも普通に発揮できるようになってきた。やはり伊藤選手本人も、ここまでの経験値が現在のプレーに反映できるようになったと話す。

 「本当に慣れだと思いますね。外国人選手が自分のチームにも相手チームにもいてというのが当たり前の環境で今できているので、これがやはり慣れなんだなと自分も思いますね。

 大学の時は自分で点を取らなくてもいいからディフェンスで相手を威圧して、そこから自分がスティールして周りを生かすというのをメインでやってきたんですけど、それじゃBリーグでは通用しないというか、それプラスアルファ何かがないといけないということで、自分のスピードを生かしてゴールにアタックするというのは富樫くん(千葉ジェッツ)ほどではないにしても、それに近いものはあると思っているので、新しい自分の強みになったのかなとは思います」

 ある意味大学時代までは伊藤選手の能力を最大限に発揮しなくても通用している部分があった。それがBリーグという高いレベルに身を置くようになり、オフェンス面でもPGとして更なる能力を開花し始めているというのが現在の伊藤選手なのだ。浜口HCや本人も指摘するように、富樫選手のように積極的に得点を狙いにいく姿勢が間違いなくプレーの幅を広げることにも繋がっている。

 「そうですね。そこ(シュートを狙える場面)を打たなかったら相手も守りやすいですし、自分のプレーの幅も広がらないし、打たないと何も始まらないので…。入るに越したことはないんですけど、ダメでもとりあえずトライして、それがすぐには良くはならないとは思うんですけど、自分の何年後か長いスパンで考えた時に、自分の(理想とする)選手像じゃないですけどそこに近づけられると思うので、それは続けていかなきゃいけないと思ってます」

 Bリーグで通用するようになった伊藤選手だが、だからと言って現在のプレーに満足しているわけではない。常に自分なりの理想像と向き合いながら選手として更なる高みを目指している。

 「Bリーグに入る前から富樫くんとか日本代表クラスの選手のプレーを見てきたので、そこには近づきたいじゃないですけど、やっぱ日本代表には入りたいと思ってますし、Bリーグに入る前からずっと考えてました。こういう風になりたいみたいな…。

 オフェンスでは富樫くんで、ディフェンスだったら篠山選手(川崎ブレイブサンダース)だったり橋本竜馬さん(シーホース三河)ですね。そういうのを合わせた…。理想は高いんですけど、そうでないと(自分が)努力できないというか、今のまま止まっちゃう気がして…。常に自分の中に高い目標を設定するようにはしています」

 こうした伊藤選手の向上心を支えているのが、他人にも、さらに自分にも絶対に負けたくないという揺るぎのない負けず嫌い精神なのだ。

 「本当はメンタル的にはそんなに強くは無いんです(笑)。何なんですかね。ただ本当に負けず嫌いなんで『何くそ』みたいな…。そこは大学時代に陸川先生(東海大HC)に教わってきたので。そこがBリーグで出せてるというか、『陸川イムズ』というのがあるんですけど、それが今生きているかなと思ってます」

 もちろん負けず嫌いだから、他の新人選手たちにも負けるつもりはない。現在も新人賞受賞はかなり意識しているという。

 「(意識)しちゃいますね。やっぱり新人賞ってプロ生活の中で最初の年にしか獲れないじゃないですか。優秀選手とかはそれ以降にも獲れますけど、そこにはこだわっているじゃないですけど、それを獲ったらさらに自信に繋がると思うので、そこは目指してやっていければいいかなと思います」

 まだ東京をはじめとする東地区の強豪チームとの試合を残し、京都はまだまだ厳しい戦いを強いられている。それでもチームが初のチャンピオンシップ進出を実現した時には、伊藤選手も新人賞を手元にたぐり寄せていることになるはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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