イチローが自分の夢を実現する上でNPB復帰は本当に得策なのか?

2018年のイチロー選手はどのユニフォームに袖を通すことになるのか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLB公式サイトのバリー・ブルーム記者が17日付けでイチロー選手関連の記事を公開した。そのタイトルは『With no MLB offer, Ichiro might return to Japan(MLBのオファーがなければ、イチローは日本に戻るかもしれない)』というものだ。

 この記事が登場して以来、日本ではにわかにイチロー選手のNPB復帰の可能性が大きな関心事となっている。しかし記事の内容を検証する限り、記事の副題『Agent holding out hope that he can find a big league job for outfielder(エージェントはMLBからの契約を獲得できる希望を持ち続けている)』からも分かるように、エージェントのジョン・ボッグス氏は今もMLBからもオファーを模索しているし、記事の中で一言も“NPB復帰”について言及していない。あくまで昨年末にイチロー選手が日本で発言した「(日本復帰の可能性は)ゼロじゃないといってしまうと『可能性はあります』ということになっちゃう」を引用して、ブルーム記者がその可能性を説いているに過ぎない。結局状況は何も変わっていないのだ。

 改めて説明するまでもないが、イチロー選手は50歳まで現役を続けることを目標にしている。昨シーズン終了前にもマーリンズの番記者に対しその意思を明らかにするとともに、マーリンズ残留希望を表明している通りだ。残念ながらマーリンズが来シーズンの契約オプション権を破棄したためFA選手の道を選択するしかなかったわけだが、イチロー選手の目標は今も生き続けている。

 だがここで重要になってくるのが、“どこで”50歳まで現役を続けたいか、ということだ。もしイチロー選手がリーグに関係なく現役を続けたいというのであれば、今シーズンのNPB復帰は何の支障もない。しかし彼がMLBに固執し、野手としての最年長記録更新を狙っているのであれば、NPB復帰は得策とはいえないだろう。44歳という年齢を考えれば、今NPBに復帰してしまうと将来的にMLBに戻ってくるのはほぼ不可能になってしまうからだ。

 現在MLB野手として最年長記録を保持しているのはフリオ・フランコ氏の49歳だ。彼は1995年、1998年に千葉ロッテ、2000年にはKBOのサムソンに在籍していたが、いずれも翌年はMLBに復帰した経歴を持っている。ただし千葉ロッテ時代はまだ30代だったので年齢的な障害はそれほどなかったといっていい。

 しかし41歳で迎えた2001年シーズンはどのMLBチームとも契約できずに、とりあえずメキシコリーグに所属するしかなかった。そこからシーズン途中にブレーブスと契約することに成功し、改めてMLBで活躍できることを証明したことで結局2007年シーズンの49歳までMLBのグラウンドに立つことができた。実はフランコ氏も50歳まで現役を続けることを目標にしており、2008年も再度メキシコリーグに所属しMLBからのオファーを待ったが、結局届くことなく現役引退を余儀なくされている(ちなみに2014年にも独立リーグで現役復帰し7試合だけ出場している)。

 またMLB史上最多の1406盗塁を記録しているリッキー・ヘンダーソン氏も44歳で迎えた2004年シーズンはMLBからのオファーが届かず独立リーグに参戦し、シーズン途中でドジャースとの契約を勝ち取っている。しかしMLB復帰後は十分な活躍をすることができずドジャースとの再契約までには至らず、翌2005年も独立リーグからMLB復帰を目指したが実現することはできなかった。

 つまりイチロー選手のような年齢になれば、どんな優秀な選手でもMLBから契約オファーを受けるのは決して簡単なことではない。フランコ氏やヘンダーソン氏のように、シーズンが開幕してもオファーが届かないことだってある。しかしメキシコリーグや独立リーグに所属しながらコンディションをしっかり整えておけば、シーズン途中でさえもMLBに復帰できる可能性もあるし、そこからしっかり活躍できればオフにMLBチームと再契約する可能性もあるのだ。しかしNPBに在籍してしまえば、シーズン途中でのMLB復帰はほぼほぼ不可能になってしまう。

 あくまで個人的な感覚で恐縮だが、イチロー選手が現役を続けたいと考えている限り、彼を獲得してくれるNPBチームは常に存在すると思っている。そうであるならば、仮にイチロー選手がMLBの舞台にこだわりたいのであれば、NPB復帰を焦る必要は無いし、最終手段でいいはずだ。

 一方で多分ファンの中には、メキシコリーグや独立リーグに所属することで、イチロー選手の経歴にキズをつける必要はないと考える人もいるかもしれない。だが経過はどうあれフランコ氏はメキシコリーグからMLBに復帰することに成功し、史上最年長の49歳まで現役を続けたことで球界の誰からも尊敬の眼差しを向けられる存在になっている。周りからどう思われようが、結局は何を成し遂げたかが重要なのだ。

 自分も含め多くの人たちがイチロー選手は今でも十分にMLBで活躍できると感じているはずだ。それは当の本人も同じだろう。その気持ちが潰えない限り、どんなかたちであれMLBのグラウンドに戻ることを最優先に考えてほしいし、それを切に願っている。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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