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京都ハンナリーズは天皇杯バスケで台風の目になれるか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都のオフェンスを牽引するマブンガ選手(左から4人目)とスミス選手(左端)

 天皇杯・皇后杯バスケの決勝ラウンドがさいたまスーパーアリーナを舞台に、4日に開幕する。男女ともに8強が出揃い、全日本のタイトルを争う。

 男子は大会連覇を狙う千葉ジェッツをはじめ、昨シーズンのBリーグでチャンピオンシップに進出した8チーム中5チームが決勝ラウンドに進出に成功。そんな中、第3ラウンドで優勝候補の一角だったアルバルク東京を破り初のベスト8入りしたのが京都ハンナリーズだ。

 東京戦はあくまで相手チームが日本代表3選手(竹内譲次選手、田中大貴選手、馬場雄大選手)がFIBAワールドカップ2019アジア地区予選に招集されていたため大きなハンディがあっての勝利ではあったが、それ以降Bリーグでの12月の月間成績は7勝4敗と勝ち越ししに成功し、その間琉球ゴールデンキングスやシーホース三河のトップチームを破る金星を挙げている。今でははまった時の京都はトップチームでも手がつけられない存在になっている。

 京都の攻撃を牽引するのはジュリアン・マブンガ選手とジョシュア・スミス選手で、他チームも常にこの外国人2選手を警戒している。マブンガ選手は内外から得点を決められるシュート力がある一方で、ドリブル力もありPGの役割も果たせる理想的なオールラウンド選手だ。またスミス選手はシーズン開幕当初はオーバーウェイトだったこともあり、動きに精彩を欠きディフェンス面でも穴になっていた感があったが、12月に入るとコンディションも上がり先発に定着し、完全にペイント部分を圧倒する存在になっている。12月の11試合中8試合で得点とリバウンドでダブルダブルを記録。現在ではBリーグ屈指のパワー選手の仲間入りをした感がある。

 だが京都の本当の強さは総合的なチーム力だ。三河と琉球を破った際も外国人2選手に頼り切ることなく、選手全員でバスケットボールを共有し、チーム全員が攻撃に参加している時にその力を発揮している。昨年最後の試合となった先月30日の大阪エヴェッサ戦でも、チーム全体で21アシストを記録しながら4選手が2桁得点を挙げる活躍で相手チームを圧倒した。試合後浜口炎ヘッドコーチは「(天皇杯は)一発勝負のカップ戦でトーナメント制ですが、チームとしてもいいチャンスですし、ハンナリーズがある程度力があるんだよということを証明する非常に良い機会だと思うので、しっかり頑張りたいと思います」と意気込みを話してくれた。

 ただ今シーズンの京都はとてつもない強さを発揮する一方で、下位チームにあっさり敗れる脆さも併せ持っている。三河戦に勝利した後で迎えた29日の大阪戦でも60-82で大敗を喫している。天皇杯のような一発勝負ではこうしたプレーのムラが命取りになる。その辺りはキャプテンの内海慎吾選手も十分に理解している。

 「(29、30日の大阪戦は)正直な話、2つ合わせてプラマイゼロですね。シーズン前半の一番のバッドゲームと一番のベストゲームが一緒に来たかなという感じですかね。(2試合目でしっかり修正できたが)僕が感じているのは修正力というよりかは、どちらかと言うと1試合目の気の緩みがこのチームの弱点であるかなと感じています。前回の試合(三河戦)でいい試合をした後だけにどうしても気の緩みは仕方ないんですけど、もしこのチームが西地区の1位を狙っていくのであればそういう試合をしてはいけないと思いますし、それができているから琉球さんは1位にいますし、やはりベストゲームをした後でもいい試合をしていかねばならないと思います」

 今シーズンの京都は開幕から好調を維持し続け、現在も16勝12敗で西地区2位につけ、チャンピオンシップ進出圏内をキープしている。これまで内海選手には何度となくチームに対する手応えを確認してきたが常に「まだないです」を繰り返し、今回も「まだチームに自信は芽生えていない」と断言する。しかしチームとして試合を重ねながら彼の感じ方も少しずつ変化しており、今回の天皇杯に「期待はしています」とも話してくれた。

 まず京都は4日に準々決勝で西地区最下位の西宮ストークスと対戦する。普通に考えれば京都有利ではあるが、勝敗の内海選手が指摘する気の緩みが出てしまう可能性もある。だが西宮に快勝できれば確実にチームは勢いを掴むことになり、トップチームとも対等に渡り合える力を発揮してくれるだろう。

 果たして天皇杯での京都の快進撃は現実のものになるのだろうか…、

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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