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ダイヤモンドバックスが期待する平野佳寿の即戦力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
すでにDバックスから“勝利の方程式”として期待されている平野佳寿投手(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 ダイヤモンドバックスが現地22日、オリックスから海外FA権を行使しMLB挑戦を表明していた平野佳寿投手の獲得を正式発表した。すでに各メディアが報じているように、契約内容は2年で総額600万ドル(約6億6000万円)で、各シーズンそれぞれ最大で100万ドル(約1億1000万円)を獲得できるインセンティブが付与しているという。

 すでに年俸3000万ドル(約33億円)を超える選手が続々出現しているMLBで、その1/10の年俸300万ドルはかなり安いと思うかもしれない。しかし昨シーズンの年俸総額がシーズン開幕時点でMLB24位だったダイヤモンドバックスにとって300万ドルは決して安い金額ではない。実際同シーズンで300万ドル以上の年俸を得ていた選手はたった6人しかいなかったくらいだ。逆にポジション別で一番年俸額が抑えられるリリーフ投手に対しこれだけの契約を用意したということ自体、チームの平野投手に対する期待の表れともいえる。

 実際MLB公式サイトが報じたところでは、平野投手の獲得に成功したマイク・ヘイゼンGMはすでに“勝利の方程式”の一角を担う投手としてのみならず、クローザー候補としても期待しているほどだ。

 「7~9回を投げる力がある投手が(平野投手を含め)3人いると考えている。現時点では誰がクローザーになるかは明確ではない。スプリング・トレーニングで誰がどの役目にフィットするのかを見極めた上で結論を出したい」

 昨シーズン39セーブを挙げていたクローザーのフェルナンド・ロドニー投手がFAでツインズに移籍してしまったため、来シーズンのクローザーはまだ決まっていない。ヘイゼンGMが説明しているように、現時点では平野投手の他に、昨シーズンはセットアップを務めていたアーチー・ブラッドリー投手、さらにレイズからトレードで獲得した通算44セーブを記録しているブラッド・ボックスバーガー投手のいずれかが抜擢されることになる予定だ。いずれにせよ平野投手を含めたこの3人がチームの勝ちゲームで投げる“主力リリーフ陣”を担うことになる。

 昨シーズンはトレイ・ロブロ新監督を迎え、西地区2位で6年ぶりにポストシーズン進出を決めたダイヤモンドバックス。その原動力になったのがナ・リーグ4位の得点力はさることながら、先発陣、リリーフ陣ともに同2位のチーム防御率を誇った投手力だった。その投手力を来シーズンも維持するために必要な戦力として、平野投手は迎え入れられた。現時点で40人枠に入る投手で平野投手より年上なのはエースのザック・グリンキー投手のみという状況を考えると、やはりベテラン投手としての経験も加味されての獲得といえるだろう。

 だからと言って平野投手が周囲から多大なプレッシャーを受けるというわけではない。その点ではダイヤモンドバックスは理想的なチームといえる。実は取材するメディアが極端に少ないチームなのだ。スプリング・トレーニングのみならずシーズン中も常時取材するメディアはMLB公式サイトと地元紙の2人だけ。後は地元TVやラジオがホーム試合に顔を出すくらいで、たぶんホーム試合でも普段は合計で10人程度だ。もちろん来シーズンは日本人メディアがある程度帯同することになるだろうが、それでもオリックスの時ほどメディアに囲まれることなく野球に集中できるはずだ。

 さらにダイヤモンドバックスは本拠地フェニックスでスプリング・トレーニングを行えるMLB唯一のチームだ。早めに住環境を整えてしまえばスプリング・トレーニングも自宅から通えるし、練習やオープン戦を戦いながらシーズンに備えて家族と一緒に私生活の準備をすることもできるのだ。これはダイヤモンドバックスの選手だけに与えられた特権だ。初めての海外生活をスタートする上で、精神的な負担を相当軽減することができるはずだ。

 今年3月に侍ジャパンの一員としてアリゾナでのミニキャンプを経験しており、同地の気候、キャンプ施設の環境などの基礎知識があるのも大きい。MLB1年目からこれほど好条件でスプリング・トレーニングを迎えられる平野投手。まずはシーズン開幕までにクローザーの座をものにできるかが最大の注目点になる。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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