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中学までPGだったダバンテ・ガードナーの巨漢Cらしからぬコートビジョン

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2年目のBリーグで圧倒的な存在感を示すダバンテ・ガードナー選手(本人撮影)

 Bリーグは第9節を終了し、シーズンの4分の1を消化した。個人成績では得点部門で新潟アルビレックスのダバンテ・ガードナー選手が独走態勢をしいている。

 第9節の敵地で戦った滋賀レイクスターズ戦でも、ガードナー選手は圧巻のプレーを披露した。第1戦は24得点、9リバウンド、第2戦に至ってはチーム全得点の半分を超える43得点、16リバウンドの活躍で、チームを連勝に導いた。ガードナー選手を止めることができなかった滋賀のショーン・デニスHCは諦め気味に以下のように話している。

 「今シーズンのルールの解釈上、彼を止めるのは不可能だろう。サイズもあり、彼は思い通りに狙った位置にボールを運ぶことができる。我々もダブルチームをしかけたり様々なことを試みたが、簡単にディフェンスを破られてしまった。決して運動能力が高い選手だとは思わないが、彼のサイズを考えると止めるのは難しい。これは他のチームも直面しなければならない問題だ」

 デニスHCが指摘する通り、身長203センチ、体重132キロはリーグ内でも屈指の巨漢選手だ。同HCの指摘を裏づけるように、ここまでガードナー選手の平均被ファウル数(相手チームがガードナー選手にファウルを与えた数)は8.2と、皆が手をこまねいている状況だ。滋賀との第2戦でも9回のファウルを引き出し、計16回のFT機会を得ることに成功し、その15本を沈めている。滋賀のキャプテン、狩野祐介選手も「あれだけFTをうたれると、流れを持ってこられない。ビッグマンもファウルトラブルでイライラしていた」と悔しそうに話すしかなかった。

 ガードナー選手の得点能力は単に体格が優れているからだけではない。シュート感覚やシュート可能範囲も通常のセンターよりも優れていると言わざるを得ない。ペイントエリアに入れなくても高確率でシュートを決められるし、ディフェンスで多少体勢を崩されてもしっかりシュートを決めきれるバランス力も兼ね備えている。

滋賀戦でペイントエリア外からフェイドアウェイシュートを狙うガードナー選手
滋賀戦でペイントエリア外からフェイドアウェイシュートを狙うガードナー選手

 さらにガードナー選手の凄さは単なるシューターに留まっていないということだ。時にはポイントガードのようにボールの運び役を務めたり、常に選手たちに指示を出し続けながらハーフコート・オフェンスを統率しているのだ。ここまでの平均リバウンド数が10.1を記録しているのは何ら不思議ではないが、平均アシスト数は2.1、平均スティール数も0.9を記録していることからも、彼がオールラウンドな面でチームに貢献しているのが理解できる。新潟の庄司和広HCもガードナー選手に対し、絶大な信頼を寄せている。

 「彼(ガードナー選手)と五十嵐中心のチームであることに変わりないんですが、彼は非常にバスケIQも高いですし、自分が何をしなければいけないか、何が必要かというのを解っている選手です。また練習の取り組みもそうですし、プライベートな部分とかでもチームメイトとしっかりコミュニケーションがとれる選手なので、彼に対してこちらから指示をだすことは少ないですね。なのでボールを預けていますし、プレーも預けています」

 そうしたHCの考えはガードナー選手もしっかり理解している。本人も今シーズンはチームプレーを意識しながらコートに立っているという。

 「今シーズンはこれまで以上にチームプレーを意識して試合に集中できている。日本に来てからはポイントセンターみたいな役割をしてきているから慣れているよ。試合をコントロールするのは好きだし、昨年以上に自分のプレーに自信が持てている。ケイ(五十嵐選手)やシュンキ(畠山選手)と素晴らしいPGがいるので、自分のプレーをより容易にしてくれている。

 (ここまで圧倒的なプレーを続けているが)自分がやるべきことと、やってはいけないことをしっかり見極めているからだと思う。相手がダブルチームにきた時は無理をせずパスを出すよう心がけている。今年のチームには素晴らしいシューターが揃ってるからね」

 それにしても巨漢のガードナー選手が、なぜPGのような役割を器用にこなすことができるのか。その秘密を本人が明かしてくれた。

滋賀戦でファストブレイクからノールックパスを繰り出すガードナー選手
滋賀戦でファストブレイクからノールックパスを繰り出すガードナー選手

 「実は子供の頃はPGをやっていたんだ。高校時代からはポストを任されることが多かったけれど、昔からインサイドでもアウトサイドでもプレーしていたんだ。小さい頃から自分が一番大きかったよ。でもうちの家族は全員大きかったけど、皆ガードもできたんだ。たぶんその家系を引き継いだのかな。なので高校でも大学でも時折PGをやった経験もある。

 なので新潟でもPGがファウルトラブルになった時に数試合PGをやったことがある。日本に来た最初の年は得点することを最優先にしてきたけど、今はチームが勝つためにディフェンスやアシストも集中するようにしている」

 日本に来て3年目のシーズンを迎えるガードナー選手。今ではすっかり日本が気に入り、現在は少しでも長くBリーグでプレーすることを望んでいるという。これからも日本のファンを楽しませてくれることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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