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経験豊富な外国人選手から見たBリーグの実力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都ハンナリーズの外国人選手たち(左からマブンガ、ダブ、スミス)

 昨シーズンは西地区5位に終わった京都ハンナリーズ。今シーズンは三遠ネオフェニックス相手にホーム2連勝で開幕すると、第2節は適地に乗り込み強豪千葉ジェッツ相手に1勝1敗に持ち込む健闘を見せ、開幕ダッシュをしかけようとしている。

 そのチーム好調の原動力になっているのが、マーカス・ダブ選手、ジュリアン・マブンガ選手、ジョシュア・スミス選手の外国人選手たちだ。それぞれ三者三様に外国リーグを経験しながら日本へやって来た彼らにとって、Bリーグとはどんな存在なのだろうか。彼らの証言からBリーグの実力を考えてみたい。

●マーカス・ダブ選手

 まずは3人の中で最もベテランである32歳のダブ選手だ。昨シーズンから京都に在籍し、日本でのプレーは今年で2年目。Bリーグに参戦するまで、ベルギー、台湾、フランス、イスラエル、NBADリーグ(現Gリーグ)の各リーグでプレーを続けてきた。

 「Bリーグは素晴らしいリーグだと思う。昨シーズンの成功でNBA経験者を含めよりレベルの高い外国人選手が集まってくるようになった。このまま順調にいけば、数年後には中国のようなリーグになるかもね。昨年初めてBリーグに参戦した時から、日本に来られて良かったと感じている。できればあと数年は日本でプレーしてリーグが成長していく姿を見守りたい。

 日本人選手のバスケットのレベルはかなり高いと思う。昨シーズンはほとんど情報を知らない状態で日本に来たけど、何試合かプレーして皆が素晴らしいプレーをするので正直驚いた。選手たちは本当に練習熱心だし、絶対に手を抜かない。ビックリしたよ。

 すでに日本には素晴らしいポイントガードやウィングの選手が揃っている。現在も数選手は海外リーグでプレーできる実力があると思う。あとはビッグマン(フロントコートの選手)だね。近い将来若手有望選手たちが頭角を現してほしい。Bリーグで外国人選手たちと競い合うことでかなり成長の助けになるはずだ。

 Bリーグの盛り上がりは本当に凄い。アリーナ内があんなに盛り上がるのはフランスくらいしか経験がないかな。しかもBリーグは試合前からダンスをしたり演出も凄い。そんなのは他で味わったことがない。ファンと選手が一体化するのは自分も楽しくて仕方がない」

●ジュリアン・マブンガ選手

 次にマブンガ選手だ。彼は新入団選手だが、これまで2年間滋賀レイクスターズに在籍し、bjリーグからBリーグへの過渡期も実体験している。来日前はイタリア、イスラエルの各リーグに在籍し、海外経験も豊富だ。

 「(過去2年間の体験から)リーグとして着実に強固になっていると思う。それと同時に資金力も上がっているのかもしれないけど、特に企業チームなどは着実に戦力を増している。でもリーグ全体的にレベルが上がってるので、誰にでもチャンスがあると思っている。実際自分たちも強いチームになれると感じている。もちろんリーグ全体として改善の余地はあるが、良くなっているのは実感している。自分もそうだが、プロスポーツとして選手、コーチがそれぞれの立場から常にベストを尽くそうという姿勢を感じる。

 他の海外リーグと違うのは、やはり体格面だね。イタリアなどではNBAでプレーしている選手がいるくらいフィジカルに優れた選手が多いけど、日本もたくさん良い選手はいても大抵は1~3(ガードとウィング)のポジションを担う選手で、自分たち外国人選手が4、5(フロントコート)を任せられている。今は外国人選手のプレー時間を制限してそうした状況を変えようとしているようだけど、まだ海外リーグとの差はあると思う。

 ただ決して多くはないけれど、現在も印象的なビッグマンがいるよ。トヨタ(アルバルク東京)と栃木の双子選手(竹内公輔・譲次選手)とか、渋谷にいる背番号0の選手(満原優樹選手)は凄く才能ある選手だと感じている。技術レベルは誰でも練習すれば上がっていくものだし、今後も成長していくと思う。

 日本がずっとオリンピックに出場できていないのは知っている。ただBリーグの誕生で今後さらに日本国中にバスケットボールが認知されるようになってくれば、競技人口も増え、さらに若い有望な選手たちが育ってくると思う。このままBリーグが順調に成長していけば、数年後にはオリンピックに出場できるようなレベルまで上がっていけると思う」

●ジョシュア・スミス選手

 最後は3人の中で一番若手のスミス選手だ。米国でもバスケットの名門校として知られるジョージタウン大出身の25歳。NBADリーグとフィリピン・リーグを経て、Bリーグは今年初参戦だ。まだ経験が浅いこともあり、他の2選手とは違った意見を語ってくれた。

 「自分のプロキャリアのほとんどがDリーグで、その後2ヶ月間だけフィリピンでプレーしていた。Bリーグとの違いは大きく2つあり、その1つがファウルだ。Bリーグは5ファウルで退場だけど、Dリーグとフィリピンは6ファウルだった。そこがうまく対応できなくて、開幕戦では5ファウルで退場になってしまった。もう1つはプレー時間だ。Bリーグは各クォーター10分だけど、Dリーグとフィリピンは12分なんだ。それに相手選手の特長もまったく把握していない。今はマーカスやジュリアンにアドバイスを受けながら、何とか適応しようと頑張っている。

 まだBリーグの実力を語るのは経験が浅すぎる。Dリーグではすべてのチームと対戦し各選手の実力にも精通していたし、またDリーグはアメリカ国内のリーグだから、新しい選手でも大学時代などでどこかで対戦していたりして少なからず情報を得ているのがほとんだ。しかしBリーグではアメリカ人選手の中に知っている選手がいるだけで、残りの選手はまったく情報がない。もう少し試合を重ねていかないと何とも言えないね。

 まだ日本のバスケットの情報が乏しいけれど、一生懸命練習してチーム一丸となってプレーする伝統があるとは聞いていた。実際チームメイトも皆本当によく練習する。変な意味ではなく、自分が期待していた以上にいいチームだった。このチームでプレーするのが楽しいし、今後彼らと一緒にプレーしていくのが楽しみで仕方がない」

 それぞれBリーグでの経験の差こそあれ、3選手ともBリーグに期待し、彼らなりに精一杯シーズンを盛り上げようとしている姿を感じ取れたのではないだろうか。まだBリーグが発展途上にあるのは間違いない。だが彼らのような熱意を持った外国人選手たちが最善のパフォーマンスを披露してくれることで、日本人選手のみならずリーグ全体も更なる成長へと繋がっていくはずだ。

 Bリーグの未来はかなり明るいようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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