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MLB審判がコミッショナーの説得でわずか1日で抗議活動を取り止め

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
白いリストバンドを着けて抗議活動を行うMLB審判たち(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 MLB審判の組合組織である『ワールド・アンパイア・アソシエーション(WUA)』が19日、ツイッター上で強烈な声明を発表した。

 最近過熱化している審判に向けた“言葉による批難”の抑制を求め、試合中に審判たちが白いリストバンドを装着し、抗議活動を行うというものだ。

 今回の活動を実施することになったのは、8月14日のレンジャーズ対タイガース戦でイアン・キンズラー選手が主審のエンジェル・ヘルナンデス氏から退場処分を受けたことで、翌日キンズラー選手が報道陣の前で「(ヘルナンデス氏が)試合の流れを変えてしまった。彼は別の仕事が必要だ。心からそう思う」と審判批判を行い、大きな波紋を広げていたためだ。

 キンズラー選手はこの発言でMLBから罰金処分を受けたものの、WUAは選手たちの審判批判が拡大しないことを求め、抗議活動に踏み切る判断を下したようだ。

 このWUAの行動に対し、MLBのロブ・マンフレッド=コミッショナーが即、問題解決に動き出した。WUAと話し合いを行い、近々WUAと正式なミーティングを実施することを提案し、抗議活動の取りやめに同意させることに成功した。以下、WUAはツイッター上で発表した声明だ。

 「我々は、コミッショナーが言葉による非難や他の重要な案件について真剣に取り組んでくれる姿勢を示してくれたことに感謝する。我々は自らの誠実さを明らかにするために、(コミッショナーが約束してくれた)ミーティングが開催されるまで抗議活動を取りやめにする」

 ただこれで問題が完全に解決したわけではない。コミッショナーとWUAのミーティングで話し合いが物別れに終わった場合、WUAは新たな抗議活動を実施する可能性も十分にあり、決して予断を許さない状況だ。

 さらに抗議活動の発端となったキンズラー選手は懲りる様子もなく再び問題発言を繰り返しており、そう簡単にはいきそうにないのかもしれない。

 「審判を続けている限りリストバンドをつけていればいいいんじゃないか。自分はどうでもいいけど…」

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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