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途中入団でも本塁打を打ち続けるクリス・マレーロの予想を上回る適応力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
すっかりオリックスの主軸に定着したクリス・マレーロ選手

 来日から2ヶ月が経過し、今やクリス・マレーロ選手はオリックスにとって必要不可欠な存在になっている。最近ではステフェン・ロメロ選手との“長距離胞コンビ”でクリーンアップを形成し、かつてないほど打線に厚みを加えている。

 11日の楽天戦でも、4回に2試合連続となる今季10号2ラン本塁打を放ち、チームに貴重な追加点をもたらした。ただ6月9日の1軍デビュー戦で、本塁ベースを踏み忘れ本塁打を不意にしており、実質的には出場43試合で11本を打っている。現在のペースだとシーズン換算で36.58本となり、十分に本塁打王も狙えるほどのハイペースだ。

 「そういうの(本塁打)を期待しています。1本でも多く打ってほしいですね」

 楽天戦後の福良淳一監督の言葉からも理解できるように、すでに首脳陣はマレーロ選手に対し絶大な信頼感を寄せている。

 初めてマレーロ選手の打撃を見た時から長打力があるのは明らかだった。しかし外国人選手特有のローボール・ヒッターで、しかもマイナーリーグの通算打率も.276と決して高いものではなく、失礼ながら本塁打は打てるものの打率を残せないタイプの選手なのだろうと勝手に予想していた。

 しかし蓋を開けてみれば、本塁打を打つばかりでなくここまで打率も3割(.301)をキープ。長打力ばかりでなく安定感も披露している。来日してから2ヶ月が経過し、そろそろ相手チームに攻略法を研究されてもおかくしくないところだが、本人は「ストライクゾーンにも(日本人投手の)攻め方にも慣れてきた」と逆に自信を深めつつある。

 「(現在の本塁打ペースは)嬉しいね。今は日本で野球することをすっかり楽しんでいる。試合を重ねるごとに、徐々に馴染んできていると実感できている。とにかくこのチームに対し居心地の良さを感じているし、それが自分の大きな助けになっている。自分にとっても本塁打を打つことは特別な意味がある。それだけチームが勝つことに貢献できるということだ」

 マレーロ選手本人の話を聞く限り、プロ野球に慣れるため徹底的に研究をしているというわけではないらしい。相手投手のビデオをチェックするのも“時折”程度だという。現在はあくまで自分の技術の中でしっかり対応できているのだ。ただ以前に話を聞かせてもらった時も打撃に関する自分のルーティンをしっかり確立していると話している一方で、練習中に通訳を通じて高橋光信打撃コーチらと対話するシーンを頻繁に見受けられる通り、新しいものを取り入れようとする積極性もかなり高いのが理解できる。それこそがマレーロ選手が日本のプロ野球に適応できている秘訣なのだろう。

 現在のオリックス打線は、間違いなくリーグ屈指の破壊力をもつ布陣が揃っている。マレーロ選手が現在のような打撃を披露してくれる限り、後半戦は更に面白い戦いが期待できるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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