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MLB公式サイトが注目する左腕だけの隻腕中学生捕手

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB公式サイトで紹介されている記事の一部

まずはMLB公式サイト上で5月3日(現地時間)にアップされた記事が以下のようなものだ。

Middle school catcher Luke Terry lost his arm as a baby, but he can still throw out runners”(中学生捕手のルーク・テリー君は幼児時に腕を失ったが、それでも走者を刺すことができる)

タイルにあるように、テネシー州に住む隻腕の中学生捕手、テリー君を紹介する内容だ。テリー君は生後19ヶ月で、炎症が悪化したことで右腕を失った。それでも彼はそのハンディをものともせず、「3番・捕手」としてチームの主力選手として活躍しているそうだ。

記事の中でも紹介されているが、テリー君が牽制球を投げる動画を見てみると、左腕一本で捕球してから投げるまでの一連の動作の俊敏さに驚かされてしまう。

これまでMLBにも隻腕選手が存在した。通算87勝を挙げたジム・アボット投手が代表的な存在だが、自分自身もかつてナショナルズに在籍していたチャド・ベンツ投手を直接取材したことがあるし、また記事によれば1945年にピート・グレイ選手という外野手もいたようだ。

残念ながら自分の記憶している限り、日本のプロ野球に隻腕選手が誕生したことはない。そもそも隻腕の少年が野球をやる環境すら整っていないのではないだろうか。まず両親がテリー君が隻腕だからといって気にすることなく野球をやらせている積極性と、チームの監督もハンディだと考えずに捕手を任せている寛大さ──。こうした環境がアメリカには整っているからこそ、隻腕選手でもMLBまで辿り着くことができるのだ。

今後テリー君がどのレベルまで野球を続けられるかは誰にもわからない。ましてや捕手というポジションを考えれば尚更のことだ。だが両親は今後もテリー君が納得するまで野球を続けさせるはずだ。

ぜひ日本でも、皆が分け隔てなく野球を楽しめる環境が備わってほしいものだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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