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ムネリン一軍昇格観戦記「何もかもが懐かしかった!すごい濃ゆい3日間でした」

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
試合前に行われるウォーミングアップ前にグラウンド上に大の字で横たわる川崎宗則選手

「すごい後輩たちが成長したというのを感じ取ってすごい選手になったなと思ったのと、懐かしかった、何もかもが。濃ゆい3日間でした。いい思い出になりました。ありがとうございました。

このチームで野球をやらせてもらっていることが幸せです。僕の人生にとってこんな素晴らしいことはないです。これらかも、もっともっと幸せになりたい。みんなにオレを幸せにして欲しい。そう願うばかりです」

京セラドームを離れるバスに乗り込む前に、川崎選手は笑顔でこの3日間を振り返った。その表情は実に充実したものだった。

今回のシリーズは、4位ソフトバンクが2位オリックスに勝ち越しに成功。勝った2試合の終了後、ベンチからロッカーに引き上げる選手たちが盛り上がる中、一番響き渡っていた声が聞き覚えのある川崎選手のものだった。言うまでもなく勝ったチームが騒がしいのは当然のことだが、何となく川崎選手がその勢いを助成しているように思えたのは自分だけではなかったはずだ。

シリーズ初戦前に行われたミーティングで、挨拶に立った川崎選手は2軍の時と同様に「Have fun(楽しもう)」を提唱したという。先発陣に故障者が続出した影響もあり、開幕から不本意な状況が続くチームにとって、やはり川崎選手が最も必要なエッセンスでありカンフル剤になろうとしている。試合前の練習中はずっと笑顔で声を発し続け周囲を明るくし、試合中も周囲を見回しながら様々な選手とコミュケーションを怠らない。まさに選手皆で試合を楽しもうとする姿勢が溢れ出ていた。

初戦と第2戦に先発出場し、守備ではファンを沸かせる場面もあったが、打撃の方では8打数1安打4三振に終わった。だが心配する必要は無い。「ちょっとずついい感じになってきましたね。タイミングの間が良くなってはいないんですけど、こういう感じかなというのが見えてきた」と話すように、今年キャンプで取り組んできたものがかたちになり始めていると打ち明けてくれた。

このシリーズでは二塁しか守る機会がなかったのは残念だったが、出場機会のなかった第3戦の試合前に行われた守備練習では左翼と遊撃に入り、ファンの前で堅実なフィールディングを披露している。特に左翼では、本塁への送球で矢のようなノーバウンドでイチロー選手ばりの“レーザービーム”をみせるとファンからどよめきと拍手が巻き起こったほどだ。改めてスーパー・ユーティリティの可能性に胸躍らせるしかなかった。

ゴールデンウィークも重なり第2、3戦は3万人以上のファンが集まったが、記者席から見渡す限り、どの試合もソフトバンクが陣取る三塁側内野席の方が埋まっていたように見えた。ファームで調整中も適地ながら川崎選手を見るためにファンが集結するなど、改めてその人気ぶりに驚かさせる思いだった。

今日で電撃復帰会見からちょうど1ヶ月が経過した。本人も本当に慌ただしかった濃密な時間を過ごしてきたはずだ。

「時差ボケやらの調整やらの、体力も消耗して忙しかったけど、あっという間に経ちましたね。慌ただしかったけど、僕は酉年なんでね。慌ただしいの、バタバタするの大好きなの。これは僕しかできないんじゃないかな。

(どこでもファンに迎えられ)嬉しかったですね。2軍の時の気持ちも思い出したし、若い選手たちと一緒に汗を流したのも僕にとっては良かった。この1ヶ月間は濃かったし大事にしたいですね」

心身ともに充実した時間を過ごし、そしていよいよ2日には地元ファンが待ちに待ったヤフオク・ドームのグラウンドに立つことになる。

「本拠地なんで楽しみですね。何年ぶりかな…。楽しんでプレーするだけです」

川崎復活劇場はいよいよファイナルステージを迎えようとしている。すでに地元ファンのボルテージはマックスに達していることだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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