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WBC2大会連続準決勝敗退で再考すべき常設化侍ジャパンの強化策

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
接戦を演じながら2大会連続で準決勝敗退が決まった侍ジャパン(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

そもそも侍ジャパンが常設化されたのは、第3回WBCで3連覇を逃し、今大会で王座奪還を目指したためだった。この4年間小久保監督の采配下で、主力メンバーをある程度固定化しながら毎年のようにプレミア12や強化試合を行い、チーム強化に取り組んできた。

結果として1、2次ラウンドを史上初めて全勝突破したものの、準決勝では惜敗ながらも米国に敗れてしまった。原因は健闘した投手陣とは裏腹に、2次ラウンドまで元気だった打撃陣の沈黙だった。試合後に稲葉打撃コーチが「あそこまで手元で動く球は日本にはない。凄い投手たちだった」と証言しているように、日本の統一球より変化が大きいメジャー球を見事に駆使するメジャー一線級の投手たちを攻略できなかったことに尽きる。

しかし「メジャー球の扱いにくさ」や「メジャー主流の手元で動く球種」というのは、第1回WBCから指摘され続けた課題だった。それが今回も同じ問題を解決できなかったということは、せっかく常設化したのに関わらず明確な解決策を講じてこなかったことを意味するだろう。

そもそも今回の侍ジャパン戦士達がメジャー球を使って試合をしたのは、昨年11月の強化試合が最初だった。その時もメジャー球の扱いに四苦八苦する投手たちが多かったが、各投手の頑張りのお陰で短期間ながら本番にしっかり準備をしてきた。だがもっと先を見据えた強化策を立て、毎年代表候補選手を招集し強化合宿を実施しメジャー球を使っておけば、こんなゴタゴタも起きていなかったはずだ。

またメジャー投手対策においても、所属球団と連係しながら侍ジャパン主導で数名の打者をカリブ諸国のウィンターリーグに派遣するのもいいだろうし、DeNAが横浜スタジアムに設置したVRなどの最新機器を使い、メジャー主力投手が投げる球種の軌道に慣れさせることもできるだろう。すべては侍ジャパンのやり方次第なのだ。

更に言及すると、今回も第3回大会同様、東京ドーム開催の2次ラウンドを突破した侍ジャパンとオランダが準決勝で敗れた。これは偶然ではなく、10時間の移動と極度の時差を強いられながら数日後に決戦に臨まなければならない2チームに対し、もう一方の2次ラウンド突破チームは、第3回はマイアミからの移動があったが3時間の時差しかないし、今回はサンディエゴから時差もなく数時間の移動で済んでいるのだ。明らかに条件が違いすぎる。

侍ジャパンとしては睡眠や食事に関するスペシャリストを採用し、少しでも選手のコンディショニングを整えるプログラム構築が求められるだろう。またWBCの度に国中が「世界一奪還」で盛り上がり、大きな期待を背負わなければならない選手たちの精神的なケアするためにも、メンタル・トレーナーを常駐させておかねばならないだろう。これらも必要不可欠な強化策の1つだ。

今後も侍ジャパンの常設化は継続されるのだろう。ならば今回の敗退で戦術や戦略ばかりを分析するのではなく、侍ジャパン全体でもっと根本的な部分について考えていくべきではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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