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お台場舞台の『ラブライブ!』劇場アニメで沼津ともコラボ! 「聖地」相乗効果に期待

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
アクアシティお台場に設置されている高咲侑(右)と上原歩夢(左)の等身大パネル

 東京の秋葉原、静岡県沼津市など、様々な舞台で物語を繰り広げてきたラブライブ!シリーズ。2020年には東京のお台場を舞台にしたシリーズ3作品目の『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(『虹ヶ咲』)、21年には4作目となる東京の原宿や渋谷を舞台にした『ラブライブ!スーパースター!!』がテレビアニメ放送されています。いずれの作品も舞台地とのコラボが積極的に実施されており、アニメツーリズム協会の「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」にも選ばれています。

 6月23日(金)からは『虹ヶ咲』の新作エピソードOVA『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY』が全国の劇場で公開されており、ブルーレイなどの先行販売もされています。

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY』のキービジュアル
『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY』のキービジュアル

『虹ヶ咲』とは?

 『虹ヶ咲』は、2019年9月から23年6月末までリリースされていたスマートフォンゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS』を原作とした作品群で、ゲームのほかにも音楽CDやライブイベント、テレビアニメ、漫画やドラマCDなど、多岐にわたるメディア展開をしています。

主な舞台であるお台場・有明地区周辺施設とのコラボも精力的に行われている。写真はりんかい線が全線開業20周年として国際展示場駅に設置していた「虹ヶ咲学園前」の駅名標
主な舞台であるお台場・有明地区周辺施設とのコラボも精力的に行われている。写真はりんかい線が全線開業20周年として国際展示場駅に設置していた「虹ヶ咲学園前」の駅名標

 2023年時点でシリーズ最多の12人のスクールアイドルがそれぞれソロとして活躍しており、従来作のようにチームとして「ラブライブ!」という大会の優勝を目指して邁進するストーリーとは異なるのが特徴です。

お台場の各施設で虹ヶ咲メンバーの等身大パネルが設置されている。写真は「アクアシティお台場」
お台場の各施設で虹ヶ咲メンバーの等身大パネルが設置されている。写真は「アクアシティお台場」

 一方同好会全体としてはスクールアイドルの祭典や、自分達のライブを企画・主催するなど、文科系的で、大学のサークル活動のような雰囲気なのがこれまでにない特色といえます。

「ダイバーシティ東京プラザ」に設置されている『虹ヶ咲』の等身大パネル
「ダイバーシティ東京プラザ」に設置されている『虹ヶ咲』の等身大パネル

 2020年と22年の2期にわたってテレビアニメ化がされ、丁寧な構成と、毎話のようにライブパートシーンがある演出から高い評価を得ています。年間ブルーレイディスクの売上で見ても20年放送のテレビアニメの中では2位、22年は3位となっています。『ラブライブ!』から離れていたファンの再獲得や、新規ファン層の開拓にも繋がっており、シリーズの中でも人気が高い作品といえます。

6月23日にユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で開かれた舞台挨拶の様子。左から主人公・高咲侑役の矢野妃菜喜、上原歩夢役の大西亜玖璃、優木せつ菜役の林鼓子
6月23日にユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で開かれた舞台挨拶の様子。左から主人公・高咲侑役の矢野妃菜喜、上原歩夢役の大西亜玖璃、優木せつ菜役の林鼓子

『NEXT SKY』公開日にキャストが舞台挨拶

 6月23日(金)から劇場公開されている新作エピソードOVA『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 NEXT SKY』では、『虹ヶ咲』のキャスト(声優)による舞台挨拶も行われました。登壇したのは主人公・高咲侑役の矢野妃菜喜、上原歩夢役の大西亜玖璃、優木せつ菜役の林鼓子の3人です。3人はそれぞれ『NEXT SKY』で「注目して欲しいシーン3つ」を選び、その魅力について話しました。

 矢野は「メイドカフェ力説・夢のコラボ・彼方さんの手作り!?」、大西は「アイラちゃんかわいい・メイド萌え・栞子のポニーテイル」、林は「特大クラッカー・屋形船で登場するランジュ・エンディングのシーンの2人」を挙げました。

 『NEXT SKY』はアニメ2期13話から続く話になっており、ヒロインの歩夢が2週間のロンドン留学から戻ってくるところから始まります。そこで歩夢はロンドンで出会ったスクールアイドルのアイラを連れて登場します。

 「特大クラッカー」はその時登場するもので、林演じるせつ菜と、ランジュが歩夢を祝おうと鳴らします。その際発砲音のような爆発音を成田空港第2ターミナルの到着ロビーで轟かせており、場所柄アニメだからこそできる演出となっています。ちなみにこの場所には「成田アニメロード」が6月末まであり、「アニメ聖地88」の「0番札所」に定めている、アニメとゆかりのある場所でもあります。

 その後、同好会メンバーはアイラをもてなすのですが、その中で屋形船と秋葉原のメイド喫茶を案内します。こうしたシーンを主な「注目して欲しいシーン」として挙げていました。

林が挙げたエンディングの、台場公園でせつ菜(右)と栞子(左)がベンチに座っている場面。この絵を含めた4種ランダムで、ブロマイドが7月7日(金)~7月13日(木)の劇場来場者特典としても配布される
林が挙げたエンディングの、台場公園でせつ菜(右)と栞子(左)がベンチに座っている場面。この絵を含めた4種ランダムで、ブロマイドが7月7日(金)~7月13日(木)の劇場来場者特典としても配布される

 またエンディングでは背景が実写で映されているのが特徴で、そこに登場するポラロイド写真にキャラクターが描かれています。林が挙げたエンディングのシーンは、林演じる2年のせつ菜と、1年の三船栞子が2人で台場公園のベンチに座っている場面です。この2人は虹ヶ咲学園の新旧の生徒会長という間柄でもあり、何を話していたのか興味深い場面です。

 舞台挨拶では新情報として、2024年から劇場上映シリーズ三部作の公開が発表されました。まだまだ『虹ヶ咲』の展開が続くことに、舞台挨拶を訪れたファンからは悲鳴のような大きな歓声が湧きました。

2024年から展開予定の劇場上映シリーズ三部作のキービジュアル。お台場で一番高いレインボーブリッジ台場側主塔の上に立ち、秋葉原などがある都心方面を見ている
2024年から展開予定の劇場上映シリーズ三部作のキービジュアル。お台場で一番高いレインボーブリッジ台場側主塔の上に立ち、秋葉原などがある都心方面を見ている

「聖地」から見た『NEXT SKY』の見どころ

 筆者も公開初日に『NEXT SKY』を鑑賞しましたが、特筆すべき点は、他の『ラブライブ!』作品の舞台を訪れていたり、その場所にまつわるものが登場したりしている点です。

「UTX」のモデルである「秋葉原UDX」
「UTX」のモデルである「秋葉原UDX」

 主人公の侑たち同好会メンバーは先述のように秋葉原を訪れるのですが、実はこれ自体も『虹ヶ咲』のアニメでは初めてのことになります。この際、初代『ラブライブ!』でライバル校として登場した「UTX」がスクールアイドルの名門校として紹介されています。「UTX」が初代以外の『ラブライブ!』作品に登場したのも初で、長年のファンにはたまらない場面ともいえるでしょう。

『NEXT SKY』の舞台となった秋葉原にあるアンテナショップ「CHABARA(ちゃばら)」
『NEXT SKY』の舞台となった秋葉原にあるアンテナショップ「CHABARA(ちゃばら)」

 そしてその足で同好会メンバーは山手線高架下にある、全国のアンテナショップが入る商業施設「CHABARA(ちゃばら)」に行きます。「ちゃばら」では沼津フェアがやっており、「のっぽパン」や「寿太郎みかんジュース」など、沼津舞台の『ラブライブ!サンシャイン!!』とコラボしてきた商品を虹ヶ咲メンバーが手に取るシーンがあります。

金沢駅の鼓門(つづみもん)。『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の主な舞台の一つだ
金沢駅の鼓門(つづみもん)。『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の主な舞台の一つだ

 この時背景に金沢駅の鼓門が描かれたポスターも登場しており、現在スマートフォンアプリで展開中のシリーズ最新作『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の舞台である金沢を彷彿させる演出となっています。

作中で侑たちが歩いた神田明神横の明神男坂。「μ's」の練習風景にもたびたび登場した
作中で侑たちが歩いた神田明神横の明神男坂。「μ's」の練習風景にもたびたび登場した

 そして初代『ラブライブ!』や『サンシャイン!!』で重要な舞台となった神田明神を参拝しており、初代のスクールアイドルグループ「μ’s(ミューズ)」が練習した神社脇の階段(明神男坂)も登場しています。その後メイド喫茶をメンバー達は訪れ、メイド衣装も着るのですが、このお店も初代で南ことりがバイトしていた「キュアメイドカフェ」がモデルになっています。

『NEXT SKY』にも登場した東京・原宿の竹下通り。海外からの観光客も多い。街を挙げた『ラブライブ!スーパースター!!』とのコラボが積極的に展開されている
『NEXT SKY』にも登場した東京・原宿の竹下通り。海外からの観光客も多い。街を挙げた『ラブライブ!スーパースター!!』とのコラボが積極的に展開されている

 また、別の日に同好会の別のメンバーがアイラを原宿に案内しています。これも原宿などが舞台になっている『ラブライブ!スーパースター!!』を意識させる場面にもなっています。

 このように、『NEXT SKY』では他のシリーズ作品の舞台も紹介する場面が特徴的で、これはラブライブ!シリーズ史上でみても例がないことといえます。アニメ『虹ヶ咲』からラブライブ!シリーズに入った新規ファン層が『NEXT SKY』を観て沼津に行くきっかけになるなど、「聖地」間の相乗効果も期待できる作品になっています。

 ラブライブ!シリーズは「聖地」を複数持つ作品だけに、今後の展開がどうなるのか。海外のファンも多く、コロナが明けたこれからがいよいよ楽しみといえるでしょう。

(写真は全て筆者)

(画像は全てバンダイナムコフィルムワークス提供)

(c)2022 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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