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なぜ今も、女性天皇・女系天皇・女性宮家問題が論じられないのか?

河西秀哉名古屋大学大学院准教授
(写真:ロイター/アフロ)

 現在、統一地方選挙後半戦、そして衆参補欠選挙が行われている。しかし、そのなかでほとんど争点として議論されていないことがある。「皇位継承問題」である。 

 岸田総理は2月26日の自由民主党大会で「安定的な皇位継承を確保する方策への対応も先送りを許されない課題で、国会における検討を進めていく」と述べた。しかし、その後、まったく議論された形跡はない。

 そもそも、若い男子が秋篠宮家の悠仁親王しかいない現状で、皇族女性が結婚すれば皇族を離れなければならないと規定されている現在の皇室典範においては、皇族数の減少は避けられない状況である。

 それもあって、平成の天皇が退位する時の国会では、付帯決議で、何らかの方策を採ることが求められた。そして政府は2022年1月に皇族数を確保する方策として、①皇族の女性を結婚後も皇室に残すこと、②旧皇族の男系男子を養子として皇室に迎え、皇籍に復帰させる、という二つの案を軸とした有識者会議の報告書を国会へ提出した。

 その後、国会では細田衆院議長が各党に議論を委ねた。しかし、まったく停滞している。自民党は麻生副総裁を座長とした懇談会を1回開催するものの、「議論の環境が整っていない」としてその後は開催されていない。立憲民主党も野田元首相を中心に検討委員会を何度か開催したものの、当初予定していた中間取りまとめは行われていない。日本維新の会は2022年4月に上記②の案を評価する意見書を衆参議長に提出し、皇室典範の改正を主張するなど、最も活発に動いたかのように見えるが、その後はそれを大きく主張しているようには見えない。

 つまり、国会の議論は停滞しているのである。その理由は、各党内でも個々の考え方が様々にあるからだろう。議論すれば紛糾する可能性がある。だから、そのまま放置している、そういう現状なのである。そのため、選挙の公約ともならない。

 しかし、それでよいのだろうか。愛子内親王はこの4月から大学4年生となった。将来のことを見据える年齢でもあろう。悠仁親王も来年の9月には18歳となり、成人を迎える。佳子内親王は28歳である。それぞれこれから歩む人生があるなかで、議論が停滞しているのは、本人たちにとって宙ぶらりんの状態である。

 こうした現状を打破するには、私たち国民がもっと関心を持つことが必要だろう。そして、それを喚起するためには、もっとメディアがこの問題について報道していかなければならない。それによって、政治家ももっと真剣に動くことになるだろう。

 繰り返すが、皇族本人たちの状況を考えれば、もう今でも遅いくらいで、すみやかに議論を進めていかなければならない。私たちも積極的にこの問題を考え、メディアももっと報道していってほしい。

 

名古屋大学大学院准教授

1977年愛知県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(歴史学)。日本近現代史、そのなかでも特に象徴天皇制を専門としている。京都大学大学文書館助教、神戸女学院大学文学部准教授などを経て、現在は名古屋大学大学院人文学研究科准教授。2016年8月の平成の天皇の「おことば」以降、テレビ・新聞・雑誌などのメディアで評論やコメントなどを多数発表。

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