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カタールW杯で救世主に!?パリ五輪世代の”神セブン”

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:築田純/アフロスポーツ)

カタールW杯の抽選会で日本はスペイン、ドイツ、プレーオフ2(コスタリカとニュージーランドの勝者)と同じE組に入りました。

優勝経験を持つ列強が2つ入り、ベスト8以上を狙う日本には非常に厳しい組ですが、そこを突き抜けていかないことには未来は開かれません。そのための大きな武器になりうるのが若手の成長株です。

大岩剛監督が「A代表からパリ五輪へ」を掲げるU−21日本代表(夕刊フジの久保氏は「プレミアジャパン」と命名)の選手たちはもちろん、来年のU−20W杯を目指す”03ジャパン”の選手たちにもチャンスはあります。

実際にチームを率いる富樫剛一監督は合宿のミーティングで「この中に本気でカタールを目指す奴はいるか」と選手たちに問いかけたそうです。

「夢フィールドから世界へ。パリ五輪代表に挑む”03ジャパン”のJリーガー9

でU−19代表から飛躍が期待される注目選手をピックアップしましたが、2001年以降生まれのパリ五輪世代でカタール行きが期待できるタレント7人を厳選し、現在のA代表にも負けない武器に絞って紹介します。

なお、すでにA代表の常連である久保建英は”殿堂入り”で対象外とします。

鈴木唯人(清水エスパルス)

推進力のあるドリブルからシュートに持ち込む鋭さは現在のA代表にも見当たらない。二列目のアクセント役として、周りにつなぐ役割なども意識しているが、やはり姿勢を崩すことなく突き抜けていくジェットストリームのような動きは強豪国のディフェンスでもなかなか止められないはず。またキッカーとしても優秀。清水ではあまり蹴る機会がないものの、鋭く曲がり落ちるCKや直接FKは貴重なゴールをもたらす可能性が十分だ。

斉藤光毅(ロンメル)

横浜FCからマンチェスター・シティと提携関係にあるベルギー2部のロンメルに移籍。一時期の怪我を乗り越えて、成長速度を上げている。スピーディーな中にも変化のあるドリブルと意外なタイミングで繰り出すラストパス、フリーランなど、攻撃センスの塊だ。また周囲とビジョンが響き合うほどに輝を増すタイプで、鈴木唯人や荒木遼太郎とのコンビはファンタジーを感じさせる。リーダーシップもあり、本人もA代表にこの世代から何人も入っていけるように、チームで圧倒的な結果を残していきたいと意気込む。

荒木遼太郎(鹿島アントラーズ)

”太郎”の愛称で親しまれる前年度のJリーグ・ベストヤングプレーヤー。一見して何を考えているか分からない立ち居振る舞いから、タイミングを外したボールタッチで相手の裏や逆を取り、決定的なプレーにつなげる。昨年の今頃に比べるとやや周りに合わせすぎている間もあり、もっと弾けて欲しいところもあるが、やはり現在のA代表に無い色を加えていけるアタッカーだ。また鈴木唯人、斉藤光毅と同じくキッカーとしても非凡なので、A代表に割り込んでいければ自ずとチャンスは出てくるだろう。

藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)

”ジョエル”の能力はパリ五輪世代でも1つ突出している。J1の首位を争うマリノスでも主軸になってきているのがその証拠だが、デュエルが強いだけでなく、守備で間合いに入っていくのが抜群にうまい。しかもボールを持って相手の守備を外すことができるので、おおよその局面で優位に立てる。そして何より”ボックストゥボックス”の動きを得意としており、A代表の主力を張る遠藤航、田中碧、守田英正とも異なるダイナミズムで、中盤だけでなく前線も活性化できる。何より物怖じしないキャラクターなので、すんなり入って行けそうだ。

西尾隆矢(セレッソ大阪)

センターバック として上背は並だが、筋骨隆々とした体は日本人離れしている。そして何よりハートが強い。本人はあまり自覚が無いようだが、そこにいるだけで存在感があり、周囲の選手に安心感を与えているようだ。「日本人だろうと外国人だろうと、絶対に負けたくない」という対人戦は当たりが強いだけでなく、技術もあるので、ファウル無くしっかりボールを奪うことができる。そして高さで上回る相手にも体を付けて邪魔できるので、190cmを超えてくる外国人FWにも対応できそうだ。

半田陸(モンテディオ山形)

今回はJ2から唯一のチョイスとなるが、大岩剛監督も楽しみな一人にあげるほど、攻守両面のセンスが目を引く。もともと本職がセンターバックということもあり、ライン側のデュエルではまず負けない。そして逆サイドからのクロスを跳ね返すことも得意としている。そしてボールを動かしながらタイミングよくアタッキングサードに顔を出すことができ、クロスの精度も高い。日本を予選突破に導いた山根視来のアシストは大きな刺激になったようで、自チームで圧倒的なプレーを見せて、早期のA代表入りを視界に捉えている。

大畑歩夢(浦和レッズ)

本大会に向けて”不安のポジション”となっている左サイドバックだが、おそらくパリ五輪世代では最も近い位置にいるのがサガン鳥栖から浦和に移籍した大畑だ。持ち前のスピードに加えて、戦術的なビジョンがしっかりしている。言ってみれば”左の内田篤人”のような選手で、左後方から攻撃にガイドラインを与えて、最後は自分も左足のクロスなどで決定的な仕事ができる。経験値はともかくとして、今のA代表には見当たらないセンスを備えたサイドバックであり、攻守に効果をもたらせそうだ。所属クラブで酒井宏樹と左右のサイドバックを組んでいることもアドバンテージになる。

そのほか、怪我で長期離脱中ながらパリ五輪世代のリーダー格であるMF松岡大起(清水エスパルス)や好調の柏レイソルの前線で日に日に存在感を増しているFW細谷真大、”03ジャパン”世代ながら強靭なフィジカルとスピリットでFC東京で中盤の主力を張るMF松木玖生(FC東京)、昇格組の京都サンガで”ホールディングセブン”として獅子奮迅の働きを見せるMF川﨑颯太、J2の首位を争う東京ヴェルディの中盤を仕切り、左足のキッカーとしても無類の精度を誇る山本理仁などは今後の活躍次第で森保一監督の目にとまってもおかしくない。

現在の主力メンバーも含めて、カタールW杯の最終メンバーに入れるのは23人だが、5人交代制を前提に、26人に拡大されるという情報もある。大事なのは実績ではなくドイツやスペインと言った相手を負かす可能性を上げられる武器を持ったタレントだ。そういう意味ではパリ五輪世代であっても十分に資格がある。ここにあげた選手に限らず、半年間あきらめずにチャレンジして欲しい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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