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三笘薫、前田大然、旗手怜央、上田綺世。日本代表フレッシュ組はベトナム&オマーン戦で救世主になれるか!

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

日本代表は今夜ベトナム、17日にはオマーンとアウェー2連戦に臨みます。ただでも過酷な環境に加えて、欧州から直接チャーター便でベトナムに移動した11人が給油地のロシアで足止めを食い、合流が遅れるなど、絶対的に勝ち点3が求められる試合でかつてない厳しい状況にある日本ですが、どう言う時こそフレッシュな戦力が救世主的な働きをするチャンスでもあります。

今回は追加招集の堂安律(PSV)を含めて28人が帯同していますが、A代表との兼任で森保一監督が率いた東京五輪のメンバーから三笘薫(サンジロワース)と旗手怜央(川崎フロンターレ)が初選出。前田大然(横浜F・マリノス)と上田綺世(鹿島アントラーズ)は2年前のコパ・アメリカでA代表を経験済ですが、いわゆるフルメンバーの活動は初めてとなります。

彼らはまずベンチ入りの23人枠に入る必要があります。当初の段階では4人ともに”当落線”と言えましたが、合流が遅れた欧州組の11人、さらに別メニュー調整が伝えられる酒井宏樹の状態などを考えても、少なくともベトナム戦でベンチ入りする可能性が高まっています。

オマーン戦はベトナム戦を終えてコンディション、試合でのアピール度などがどうなっているかにもよりますが、2試合の中でチャンスを得ることができれば、アウェーで2連勝がノルマに等しい目標となる今回、救世主的な存在になる期待は十分にあります。

三笘薫

ベルギー1部のサンジロワースではウイングバックのポジションからチャンスメーク、フィニッシュと存在感を示してA代表入りにつなげた三笘。「自分のプレースタイルを継続してやれているところが1つ良かった」と語る一方で、それを監督やチームメートに理解してもらうためのアピールやコミュニケーションに関しては、川崎時代よりも積極性を出すことを心がけていたようです。

欧州に渡ってから3ヶ月ほどで「国内組と海外組というのが変わっただけで、選手としてはあまり変わってないですし、能力としても大して変わってないと思う」と言うものの、この大事なライミングで招集された意味をよく理解しており「チームのために戦うことが求められますし、自分がどう成長したかを発揮する場ではなくて、日本のために戦う、力を合わせることが大切」と語ります。

5バックのベトナムに対して、スタートから出るか途中から出るかでポジショニングや仕掛けのタイミングも変わってきそうですが、縦にも斜めにもドリブルで仕掛けられる自在性とミドルレンジからゴールを狙えるシュート力、さらに逆サイドからのクロスにうまく合わせるセンスなどはベトナムのディフェンスにとっても脅威的になるはずです。

今回たまたま南野拓実、原口元気、古橋亨梧と左サイドをこなせるタレントのベトナム入りが遅れており、浅野拓磨や前田大然、さらに元同僚の旗手怜央も左サイドをこなせるものの、従来の主力のコンディションが整ってくるオマーン戦よりもベトナム戦の方がチャンスかもしれません。

前田大然

前回コラム:前田大然の選出で揃った快速4人。伊東、古橋、浅野、前田。日本代表の「トップガンズ」が世界をかき回す。

先日のFC東京戦で2度目のハットトリックを達成するなど、J1で21ゴールを記録している前田大然。「チームで結果を残して代表に来たので、コンディションはすごく良い」と自信を強めており、東京五輪で消化不良に終わった分も、今回のチャンスにゴールという結果が期待されます。

「スピードの部分はやっぱり負けないと思ってます。それ以外のところではまだまだ他の選手に勝てるとは思っていない」

古橋、伊東、浅野と言ったスピードスターが揃う今回の代表でもスピードだけは負けないと言う前田ですが、そうしたスピードを連続して出せる能力も特筆に値するレベルであることはJリーグで対戦した長友佑都も認めます。

「速いだけじゃなくて、裏へ走るタイミングとか、スプリントを何度もできる、そして守備もできるということ。あの試合も55回くらいのスプリントをしているんですよね。それは世界レベルで見ても相当トップレベル。筋肉の遅筋と速筋、両方高いレベルで兼ね備えている。なかなか世界でも数少ない武器を持った選手だと思います」

中央かサイドかとい言われたら中央の方が能力を出したやすいと言う前田大然ですが、マリノスでは左サイドからのチャンスメーク、タイミングよく中に流れる動き出しを使い分けており、状況に応じて起用できるのは強みです。攻守両面で高い強度を出し続けられるタイプなので、スタメンでも十分に活躍が期待できますが、やはり相手に疲れが出てくる後半によりチャンスがあると言えます。

旗手怜央

4ー2ー3ー1ならサイドバックとサイドハーフ、4ー3ー3なら中盤のインサイドハーフでも起用できる汎用性は旗手の強みで、チームのコンディションが揃っていないベトナム戦、過密日程で迎えるオマーン戦と2つの試合で効果的と言う意味では4人の中で最もチャンスがあるかもしれません。

俊敏性、技術、戦術眼をハイレベルに備えており、A代表は初招集ながら五輪代表で森保監督も特徴を把握していることから、何ら不安なく送り出せることができるはずです。相手に押し込まれた時間帯での守備などに課題はありますが、堅守からのカウンターを得意とするベトナムに対しては旗手の切替の早さや持久力が生きてくるはず。

第一に可能性があるのは左サイドバックですが、合流が遅れた欧州組にはオーストラリア戦で4ー3ー3のスタメンとして活躍した守田英正も含まれており、仮に引き続き4ー3ー3を採用する場合はシステム理解力の高い旗手が抜擢される可能性もあります。何でもできる便利な選手でありながら、好機を逃さない観察眼やセンス、元FWらしいゴール目の決定力といったところは他の中盤の選手に無いスペシャリティでもあります。

サイドバックやウイングで起用されても高水準のプレーを期待できるだけに、試合の中でシステムや配置を変える場合でも旗手がいれば、メンバー交代をしなくてもマイナーチェンジは可能なので、今回の2試合で活躍できれば”一家に一台”の貴重なマルチロールとして定着していく可能性があります。

上田綺世

今シーズンの鹿島アントラーズでリーグ13得点を記録しているストライカーは今回選ばれたことについて「僕のクラブでの活動を認めてもらえたのは自信になっているので、それを表現したい」と語ります。

「世代別としかやったことないですけど、タフなチームですし、個々の技術も高いので。そういう粘り強さとかは、日本の武器でもあると思うので、球際のところも含めて粘り強く戦っていきたい」

ベトナムについてそう語る上田ですが、1トップもしくは2トップのスペシャリストとして想定するならば、経験の豊富な大迫勇也がファーストチョイスである場合、この4人の中ではベトナム戦に関しては出場チャンスを得ることが最も難しいかもしれません。

ただ、今回はオナイウ阿道が外れて、本職のFWとして招集されていることを考えれば、勝負のカードとしては森保監督も持っておきたいでしょう。100%持ち前の能力を発揮するにはパスの出し手とのイメージ共有も必要になるタイプで、それはA代表に選ばれたばかりの頃の大迫に重なります。

ただ、同じ世代の田中碧はもちろん遠藤航とも東京五輪で一緒にプレーしており、鹿島の大先輩である柴崎岳とはコパ・アメリカで縦ラインを形成しています。右サイドの伊東純也などはシンプルに動き出しの特長を合わせやすいかもしれません。理想は大学時代から良く知る三笘や旗手と同時にピッチに立つことですが、普段と違う選手と組んでも結果を出せるようになれば、それこそストライカーとしての殻を破ることにもつながり、引いてはA代表定着の足がかりにもなります。

好条件が整えば高い決定力を発揮することは間違いないですが、多少難しいシチュエーションでも一振りで決めきってしまう選手になっていければ、日本を代表するストライカーになっていくポテンシャルは十分にある。最終予選の厳しい局面で、今回は誰の活躍より日本代表が勝つことが大事ですが、こう言う時こそ新しいエースの誕生にも期待したいところです。

(本文写真:筆者撮影)

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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