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【謹賀新年】今年のJリーグでブレイクが期待される7人

河治良幸スポーツジャーナリスト
唐山翔自/筆者撮影

明けましておめでとうございます。

去年は国内外のサッカー界にとっても大変な年でしたが、新型コロナウイルスが少しでも早く収束して、当たり前のようで、当たり前ではない日常がサッカーファミリーに戻ってくることを初日の出に願いました。

早速、今年のJリーグでブレイクする7人を予想したいと思います。実際に活躍を期待する選手はたくさんいるのですが、お正月らしく”七福神”にかけて7人にしました。

唐山翔自(ガンバ大阪) 2002年9月21日生まれ

一昨年のU−17W杯に出場したFWであり、同年に高校2年生ながら2種登録されて、Uー23チームで8得点。昨年は10得点を記録して、トップチームでJ1のピッチにも立ちました。

しかし、サガン鳥栖で2度の決定機を外してしまい、厳しい声も浴びました。本人も「動きは良かったと思いますが、あのシーンで迷っちゃった自分がいた。それがショックで、自分はそういうところで迷わないのが強みだから。あれはショックでした」と振り返りますが「もうゴール目掛けてメチャ振り切るしかない」と前向きに切り替えているようです。

独特の動き出しは相手のディフェンスにとって捉え所がなく、かなり注意深く見ていても、気がついたら逆を取っていたり、裏に抜け出している嗅覚と軟体動物のようなしなやかさがあります。

熱心なファンサポーターは「唐山坊主」の愛称で親しまれており、得点を「徳点」と表記されるなど、その風貌がトレードマークになっています。「自分のオリジナリティという感じで見られるのはすごい嬉しい」と語り、応援してくれる人のためにも”徳点”を狙います。

ガンバ大阪と言えば宇佐美貴史やパリリックといった実績のあるFWも揃っていますが、そうした先輩たちに追いつき追い越すことはもちろん、2003年生まれの坂本一彩など下から突き上げてくる選手にも「絶対負けたくない」と競争意識を燃やします。

新型コロナウイルスの影響で、今年予定されていたUー20W杯が無くなってしまうというショッキングなニュースがあったばかりですが、ガンバで”徳点”を積み上げて、大きく飛躍することが期待されます。

武田英寿(浦和レッズ) 2001年9月15日生まれ

青森山田高の主軸として選手権をわかせ、昨シーズン鳴り物入りで加入。ルーキーイヤーでのブレイクも期待されましたが、再開後もなかなか出番を得られないまま月日が過ぎて行きました。

大槻毅前監督は体力面や守備面などの課題を指摘し、武田自身もその課題に向き合う1年となりました。

「シーズンの初めよりは強度という部分で大槻さんがチームのテーマとしても掲げていたので、そこで自分は筋トレだったり、ディフェンスのところを意識して取り組んできたので、一番成長した部分かなと思います」

そうシーズンを振り返る武田。浦和サポーターからの待望論も強まる中、第32節の湘南ベルマーレ戦でデビュー。終盤からの投入ながらパス、ドリブル、左足のシュートで見せ場を作りました。

続く川崎フロンターレ戦で初先発、最終節の札幌戦でも途中出場と、最後に3試合出場した中で、やれる部分がある手応えと課題の両面を感じたはず。年末に行われたUー19日本代表の合宿でも溌剌とした動きを見せていました。

唐山と同じく当面の大目標だったUー20W杯が無くなってしまいましたが、武田は「日々の練習から1日1日を無駄にすることなく、クラブで結果を残すことはすごく大事」と語り、地道に成長し、結果を出していくことで次の代表につながっていくことを強く自覚しているようです。

徳島ヴォルティスをJ1昇格に導いたリカルド・ロドリゲス新監督については「ポゼッションをベースに攻めるイメージがある。自分には合っていると思います」と武田。大槻前監督から厳しさを学び、成長の糧としたMFがパスワークを主体とするサッカーで大輪の花を咲かせるか期待です。

柴田壮介(湘南ベルマーレ)2001年5月26日生まれ

アカデミーの先輩である齊藤未月がロシアのルビン・カザン、同じボランチの金子大毅が浦和レッズに移籍と中盤の主力がクラブを去り、正真正銘の主軸として飛躍が期待されるるのが柴田です。

ボランチの選手としてはJトップレベルのスピードを誇り、ボールを奪ってそのまま攻撃につなげるセンスも備える柴田は昨シーズンの終盤に3ー1ー4ー2の中盤の底、いわゆるアンカーを経験したことで声の大事さを学び、個人で存在感を示すだけでなく、全体をオーガナイズする意識を高めています。

「(遠藤)航さんもドイツであれだけ活躍してて、未月君もロシア行って上を目指すところで、湘南から世界に出る選手が増えている。その中で、次は自分とか(田中)聡とか、そういうふうにならないといけない」

彼も唐山や武田と同様にUー20W杯という代表での目標を失った一人ですが、湘南で絶対的な要へと成長できるか。降格4枠という厳しいレギュレーションの中で残留、さらに上位躍進を果たせるかは果ぬきのMFにかかっていると言えます。

紺野和也(FC東京)1997年7月11日生まれ

大卒ルーキーの当たり年と言われた昨シーズン。FC東京でも安部柊斗が中盤で主力の座を掴み、中村帆高も名大学の先輩である室屋成がドイツのハノーファーに移籍した状況で、左右のサイドバックを兼任する形で多くの出場機会を得て成長、安部とともに東京五輪の候補合宿に選ばれました。

法政大から有力クラブとの争奪戦を制する形でFC東京が獲得、開幕当初は気鋭のドリブラーとして彼ら二人と同等に期待された紺野ですが、再開後は次第に出番を失い、9月には怪我も経験。復帰後もベンチ入りすらままならない状況が続きました。

安部や中村に限らず、周りの大卒ルーキーが活躍する中で「試合に出られなくなった時期にはかなり焦りがありました」と語っていた紺野。勢いだけでは通用しなくなった中でオフ・ザ・ボールのポジショニング、守備のハードワーク、ディフェンスに詰められないためのファーストタッチと言った課題にも向き合い、地力を付けてきました。

最終節で初先発。前半だけで交代となりましたが、小柄なスピードスターがチームに勢いを与えるジョーカーとしてだけでなく、攻撃の主力に君臨できるか。注目のシーズンになります。

渡辺皓太(横浜F・マリノス)1998年10月18日生まれ

言わずと知れたテクニシャンであり、パス&ムーブの技巧とセンスは高いポゼッションをベースとしたアタッキングフットボールを掲げるマリノスでも際立っています。

それでも長い時間の出場が叶わず、途中出場で輝きを放っても、役割としては消化不良に終わってしまう。そうした姿はマリノス のファンサポーターはもちろん、J2ながら中盤の主力に君臨していた時のプレーを知る東京ヴェルディのサポーターからみても、もどかしいでしょう。

そんな渡辺が、年末に行われた東京五輪候補の合宿に追加招集され、途中合流だったものの練習試合で確かな違いを見せました。ポジションは4ー2ー3ー1のトップ下。ボランチからもワイドな組み立てや効果的な縦パスなど背どころは多いですが、守備面で求められる強度やバランスワークの負担を考えると、このポジションが現在の最適解にも見えます。

しかし、マリノスにはマルコス・ジュニオールという絶対的なクリエイターがいます。もともと4ー3ー3も好むアンジェ・ポステコグルー監督が4ー2ー3ー1を主に採用するのもマルコス・ジュニオールの特性を生かす意味合いが強いように思いますが、渡辺皓太が脅かしていけるのか。ボランチでの成長も見守りつつ、起用法の部分で期待したいところです。

中野伸哉(サガン鳥栖)2003年8月17日生まれ

2003年生まれ、昨年のUー17W杯に15歳で出場した中野は順調なら今年のUー20W杯に飛び級で選ばれていたでしょう。しかし、言い換えると彼には次のチャンスがあります。

昨年は高校2年生にしてJ1の試合に15試合出場し、年齢を感じさせないクレバーな攻め上がり、守備の奮闘でサガン鳥栖の左サイドを支えました。そして30日に行われたクラブユース選手権Uー18の決勝では左から鋭い切り返して右足のグラウンダーシュートを突き刺し、新時代のサイドバックとしての能力を賞明しました。

フィジカル面はまだまだ向上の余地があるものの、すでにプロの舞台でも遜色ないパフォーマンスを出せるのは抜群のスキルとセンスによるところが大きいでしょう。そこに肉体的な強さが加わったらどれほどの選手になるのか末恐ろしいですが、昨年より今年の方が良くなるのは疑いありません。

チームメートに松岡大起という、アカデミーの後輩が絶対サボれない模範がいることも中野にはメリット。1学年上で、トップ昇格を決めた相良竜之介の存在も良い刺激になるはずです。重ね重ね言うとフィジカル面の充実はまだこれから先なので、彼に関しては大成するまで長期の怪我が無いことを願うばかりです。

荒木遼太郎(鹿島アントラーズ)2002年1月29日生まれ

昨シーズンは高卒ルーキーにしていきなりポジションを掴んだかに見えましたが、そこから壁に当たり、チーム状態が良くなっていく中で、かえって序列が下がっていくという悔しい経験を味わいました。

「入る前はこんなに試合に出れるとは思ってなかったですけど、試合出た中で100%のパフォーマンスを出せないことが多くて、自分としては悔しい年になった」

そう振り返る荒木はもともと中央を得意とするタイプで、右サイドで起用されても中央に流れて組み立てに参加する形を好みます。実際に”01ジャパン”ことUー19 日本代表も鹿島と同じ4ー4ー2ながら、2トップが常に裏抜けを意識する動きが多く、早い段階で中央に流れてサイドバックを外側から引き出すと言っポジショニングを多用していました。

しかし、鹿島では一度ワイドに張ったところからタイミングよく中に入っていく役割意識と状況判断が求められる中で、どう自分の持ち味と向き合って安定したパフォーマンスにつなげていくのか。チーム戦術がオートマチックに昨日してきているだけに、どれだけ攻撃センスが高くても、そこができた上で発揮していけなければ、ザーゴ監督2年目となり、よりタイトルがノルマになってくる鹿島でポジションは掴めないでしょう。

もちろん中央でポジションを掴んでいくケースも考えられます。見た目とは裏腹にボールを奪う力が着実に上がっており、代表合宿の試合でも守備面で確かな存在感を見せていました。全国高校サッカー選手権に出場中の須藤直輝のような注目の高卒ルーキーなども入団してくる鹿島ですが、荒木の真の意味でのブレイクがチームとしての飛躍に大きく影響しそうです。

写真:筆者撮影

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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