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11月パナマ戦、メキシコ戦の日本代表メンバーから起用法を読み解く

河治良幸スポーツジャーナリスト

森保一監督が率いる”サムライブルー”こと日本代表は11月にオーストリアで行われるパナマ戦、メキシコ戦に向けたメンバーを発表しました。

初招集はなく1年ぶりの活動となった10月からは大きな変更点はオランダの入国制限で前回は見送られていた橋本拳人(ロストフ)と浅野拓磨(パルチザン)が加わったことと、所属クラブのある地域当局の規制を考慮して大迫勇也(ブレーメン)が外れたこと、あとはコンディション不良により辞退となった長友佑都が引き続き招集されたことです。

「あまり選ばれなかった選手のことは聞きたくないですが大迫選手、Jリーグ以外で今回呼べない他に、欧州で活躍している選手たちもいる。4ヶ月後には突破を決めに行く2次予選の試合があることも理由で、こう言うメンバーになっているのか。最終予選に向けてはリストアップにいるのか、考えを教えて欲しい」と言う筆者の質問に森保監督はこう回答しました。

「招集できなかった選手たちがいるという部分は私自身もスタッフのミーティングでも考えたうえで、今回の招集にさせていただいてます。できなかった選手ということについては1人1人言及するのはここでは控えたいが、我々スタッフがリストアップしている選手たちは今回のメンバー以外にもいる中で映像確認、チームとコンタクト取って情報収集は常にしています。今後のW杯予選に臨むことをまずは考えながら準備しなければいけないと思いますし、今回10・11月に欧州にいる中で呼べなかったけど、力のある選手たちはいると思います」

「これからまだ力をつけて代表に絡む選手もたくさんいるということは認識している。そこに関しては来年以降の招集を考えていきたい。できればより多くの選手を招集してチームに慣れてもらいたいが、いろんな選択肢がある中で、何でもかんでもと言うより選択肢をもっていい活動をすることを考えていますし、チームでしっかり結果を出し続けている選手なら急に招集があったとしても、代表として機能できると思ってます」

森保監督がどう言う選手たちを指しているかはさておき、やはり今回の2試合が終われば、来年3月にいきなり二次予選の2試合があり、そこで突破を決めておかなと、次の6月を東京五輪の準備もしくは新しい選手をテストするような機会にできなくなってしまう。ここまで二次予選4連勝の日本は3月に連勝すれば他国の結果に関係なく予選突破が確定する可能性が高く、大迫と国内組の有力候補をのぞけば、今回は本番仕様に限りなく近いメンバーと言えます。

そうした中で気になるのは4ー2ー3ー1の左サイドハーフで、いわゆるスペシャリストは原口元気しかおらず、コートジボワール戦では久保建英が起用されたものの、あまり機能したとは言えないパフォーマンスでした。3バックなら長友佑都はもちろん菅原由勢や室屋成も選択肢に入ってきますが、4バックの場合に前回は出番の無かった三好康児、あるいはパルチザンで様々なポジションをこなしている浅野拓磨をテストするプランも考えられますが、ある意味、最も見えないセクションと言えます。そこの見解を森保監督に聞くと、こう回答が返ってきました。

「あえてというほどではないですが、我々が選手のチームでの活動を見ている中で、どういうコンディションなのかを見ながら招集してますし、色んなシステムの変更だったり、組み合わせだったり、誰かケガをしたらどうするのかということだったりを考えて、左だけでなくオプションを考えています。例えば直近で言うと、室屋も左をやっていますし、これからのことを考えると国内の選手も含めて、まだまだ左に入る選手はいる。選手たちの状態もしっかり見て、いろんな予想をしていただいて、いろんな発信していただければ」

もう1つ気になるポジションは1トップです。コートジボワール戦では鈴木武蔵がベルギーでの確かな成長を見せる形でアピールしましたが、浅野拓磨もスペシャリストではないものの、オプションの1つとして大迫や鈴木武蔵ともタイプの違った1トップでの効果を出すことは可能です。

森保監督は鈴木武蔵について札幌時代より1対1の局面が多くなる中で「得点に絡む、前線で顔を出す、時には潰れて味方に取らせる」と言う役割ができていることを評価しています。一方で浅野については「自らシュートに持って行く貪欲さを持ちながら、状況判断をしてアシストもできる。直近の試合でも2トップとサイド、1トップの場合はトップ下、1トップもパルチザンでやってプレーの幅を広げている」と評価しており、メインで起用するポジションについては最も読みにくい一人ですが、大迫がいない中で1トップをテストする可能性は高そうです。

こうしたことを踏まえて4ー2ー3ー1と3ー4ー2ー1それぞれの布陣を想定しました。

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見たら分かるとおり2列目の右と中央は本職候補がひしめいていますが、左はスペシャリストが原口しかいません。ただ広い意味での候補は多い中で、森保監督がどう使って行くかが11月の2試合でも引き続き、注目ポイントになります。左サイドバックも本職と言える選手は長友だけですが、コートジボワール戦で守備に関しては良いところを見せた中山をはじめ室屋、菅原がこなせるので、3バックとの使い分けの中でどうテストして行くのか興味深いところです。

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4バックに比べて今回のメンバー構成にしっくり当てはまりやすい理由としては左ウィングバックの候補に原口と長友が当てはまるから。また酒井宏樹を3バック右で使えるので、サイドアタッカーの伊東を右ウィングバックのファーストチョイスにでき、所属クラブではインサイドの起用がメインになっている堂安をシャドーにすることで、現在伸ばしている視野の広さを生かしやすいメリットがあります。

また4ー2ー3ー1よりも1トップの選手が孤立しにくいため”大迫ロス”になりにくい効果が期待できます。ただ、単純に練習時間が4バックより短いので、今回の合宿でより時間を割いて本格的に組み込んでいくのか注目です。

補足:堂安律がクラブ事情で辞退になりました。同時の追加招集はリリースされていませんが、4バックの右サイドハーフ、3バックの右シャドーからそれぞれいなくなるので、2試合の起用法もまた変わってきそうです。例えば久保建英は本来の右サイドで起用される可能性が高くなり、前回は出番の無かった三好康児のチャンスが拡大するかもしれません。

このまま追加招集が無ければ23人となり、アジア予選のメンバーと変わらない人数になりますが、ハノーファーなど他のドイツ圏も出入国の規制が読みにくくなっており、ここからさらに辞退が出てくると、編成的にも難しくなってきます。代表合宿は月曜日にスタートしますが無事に残りメンバーが揃うのか気になるところです。

その後、オーストリアのザルツブルクでプレーする奥川雅也。CLの本戦でバイエルンからゴールを奪ったアタッカーは2列目ならどこででき、2トップなら前線もこなせますが、スペシャリティを発揮するのは4ー2ー3ー1の左サイドハーフや2シャドーの左なので、原口以外にスペシャリストのいなかった現在の日本代表にはうってつけの招集選手とも言えます。

ここまで招集されてこなかったことが不思議なぐらいのタレントですが、二次予選の突破を決める来年3月の2試合に向けた最後のテストとも言える今回の2試合でどこまでアピールできるか、また元同僚の南野拓実とのコンビネーションにも期待がかかります。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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