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日本代表はJリーグが育てた。”オール欧州組”のメンバーでもっとも多くの選手が在籍したJクラブは?

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

約1年ぶりの合宿をオランダのユトレヒトで行っている日本代表は今夜カメルーンと、13日にはコートジボワールと対戦します。

今回は新型コロナウイルスの影響で”オール欧州組”となったことが話題になっています。森保一監督は招集できないことを承知の上で、数名の国内組をリストアップしていたとのことですが、こうした事情の中でも欧州組だけで、ほぼフルメンバーと呼べる日本代表の活動が可能になったことは1つ日本サッカーの成長を示すものでもあります。

普段Jリーグを観続けている立番としては寂しさもありますが、土台としてはJリーグのレベルが着実に上がっているからこそ、欧州で活躍して、日本代表に選ばれる評価を得られる選手が増えていることは間違いないでしょう。

そこで日本代表の23人の選手たちがJリーグのどのクラブに在籍してきたのかを整理しました。

本来は25人のメンバー編成でしたが、直前の怪我のため辞退したウエスカの岡崎慎司(清水エスパルス →)とマルセイユの長友佑都(FC東京 →)は集計に入れませんでした。オランダの入国制限の関係で参加できなかったパルチザンの浅野拓磨(サンフレッチェ広島 →)とロストフの橋本拳人(FC東京 → ロアッソ熊本 → FC東京 →)も対象外ですが、本来は招集されるべき選手ということであげておきます。

GK

川島永嗣 大宮アルディージャ/名古屋グランパス/川崎フロンターレ

権田修一 FC東京/サガン鳥栖

シュミット・ダニエル ベガルタ仙台/ロアッソ熊本/松本山雅

DF

吉田麻也 名古屋グランパス

酒井宏樹 柏レイソル

室屋成 FC東京

植田直通 鹿島アントラーズ

冨安健洋 アビスパ福岡

安西幸輝 東京ヴェルディ/鹿島アントラーズ

板倉滉 川崎フロンターレ/ベガルタ仙台

菅原由勢 名古屋グランパス

MF

原口元気 浦和レッズ

柴崎岳 鹿島アントラーズ

遠藤航 湘南ベルマーレ/浦和レッズ

伊東純也 ヴァンフォーレ甲府/柏レイソル

南野拓実 セレッソ大阪

鎌田大地 サガン鳥栖

中山雄太  柏レイソル

三好康児 川崎フロンターレ/北海道コンサドーレ札幌/横浜F・マリノス

堂安律 ガンバ大阪

久保建英 FC東京/横浜F・マリノス

FW

大迫勇也 鹿島アントラーズ

鈴木武蔵 アルビレックス新潟/水戸ホーリーホック/松本山雅/V・ファーレン長崎/北海道コンサドーレ札幌

ここからシンプルに在籍経験を集計していくと、以下の結果になります。

鹿島アントラーズ 4人

FC東京 3人

川崎フロンターレ 3人

名古屋グランパス 3人

柏レイソル 3人

横浜F・マリノス 2人

浦和レッズ 2人

サガン鳥栖 2人

松本山雅 2人

北海道コンサドーレ札幌 2人

ベガルタ仙台 2人

ガンバ大阪 1人

セレッソ大阪 1人

湘南ベルマーレ 1人

アビスパ福岡 1人

大宮アルディージャ 1人

東京ヴェルディ 1人

ヴァンフォーレ甲府 1人

アルビレックス新潟 1人

水戸ホーリーホック 1人

V・ファーレン長崎 1人

ロアッソ熊本 1人

こうしてみると、意外にバラけていることが分かります。その中でも鹿島はさすがというか、大迫勇也、柴崎岳、植田直通は生え抜きのまま”常勝軍団”で地盤を作って欧州に旅立っており、東京ヴェルディから移籍してきた安西幸輝も、クラブ初のアジア制覇に貢献して移籍という流れでした。

2位にはFC東京、川崎フロンターレ、名古屋グランパス、柏レイソルと言ったJ1の強豪クラブが並びます。FC東京は橋本拳人と長友佑都が今回は外れたので、そこも含めて集計したら5人になりますが、共通するのは若手の育成もしっかりしていることです。いい選手を補強するだけでなく、アカデミーの選手を含めた若手を起用しながら主力に育てて欧州移籍という形があります。

もっとも川崎に関しては川島永嗣が大宮アルディージャ、名古屋グランパスで経験して、いきなり主力候補として加入しており、アカデミー育ちの板倉滉はベガルタ仙台、三好康児は北海道コンサドーレ札幌と横浜F・マリノスの貢献なしでは語れません。

横浜F・マリノスの場合はその三好と久保建英の二人とも期限付き移籍という形で半年の所属でしたが、アカデミーからの生え抜きである遠藤渓太がドイツ1部のウニオン・ベルリンで順調に活躍すれば、次回以降の招集も十分に期待できそうです。

続いて在籍期間を集計してみました。細かくは契約日数などが違うので、そこは大まかに半年単位で計算しています。二種登録の期間は省いて、ただし、久保建英に関してはFC東京のU-23でJ3の試合に継続して出ていた時期もプラスしました。

鹿島アントラーズ 18年

FC東京  15.5年

川崎フロンターレ 10年

柏レイソル 10年

浦和レッズ 8年

名古屋グランパス 7.5年

ベガルタ仙台 5.5年

サガン鳥栖 5年

アルビレックス新潟 5年

湘南ベルマーレ 5年

東京ヴェルディ 4年

大宮アルディージャ 3年

北海道コンサドーレ札幌 2.5年

セレッソ大阪 2年

アビスパ福岡 2年

松本山雅 1.5年

ガンバ大阪 1.5年

横浜F・マリノス 1年

ヴァンフォーレ甲府 1年

V・ファーレン長崎 1年

水戸ホーリーホック 0.5年

ロアッソ熊本 0.5年(+1ヶ月)

ここも鹿島が最長になります。一人ひとりが1つのサイクルを作って欧州に飛び立っている証明とも言えます。もっともそのサイクルも少しずつ短くなっている中で、クラブとして勝つことと育てることをいかに両立していくかは課題になっており、その布石も着々と売っているように見られます。

FC東京も今年は橋本拳人と室屋成が途中に移籍ということで、難しいシーズンになってはいますが、一定期間の活躍を経て旅立っていることは明らかです。

オンラインが普及し、世界のスカウト網がどんどん広がる中で、日本人選手もビジネス的な側面ではなく、純粋に実力が評価されてオファーが来る傾向が強まっており、選手もJリーグをステップにして欧州移籍をして、日本代表での定着につなげるという意欲が高まっているのは良いことですが、そこに移籍金をどう発生させてクラブを潤わせていくかなど、こういう流れだからこその課題もあります。

何れにしても今回は史上初の”オール欧州組”という活動になりますが、Jリーグから巣立った選手たちという視点でも注目してみると面白いと思います。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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