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日本代表オランダ遠征のメンバーが発表。4バックを基軸に選手のポジション配置を読み解く

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

日本代表の森保一監督は10 月9日と13日にオランダのユトレヒトで行われるカメルーン戦とコートジボワール戦のメンバー25人を発表しました。

初招集は地元オランダのAZに所属する菅原由勢だけでしたが、昨年のコパ・アメリカで活躍した三好康児(アントワープ)や昨年11月の活動では国内でコロンビア戦を行った東京五輪代表(当時U-22)に参加していた久保建英(ビジャレアル)、堂安律(ビーレフェルト)、板倉滉(フローニンゲン)がA代表に復帰。五輪代表のキャプテン候補である中山雄太(ズウォレ)も招集されて、A代表の常連である冨安健洋(ボローニャ)をを含め、7人が東京五輪世代になります。

川口能活GKコーチなど、実際なかなか活動できていない五輪代表のスタッフも今回の活動に参加することになり、1つのグループとして考えているという反町康治技術委員長の言葉通りのメンバー構成になりました。

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菅原に関して森保監督は「(AZでの)出場機会は足りないところもありますが、今回のオランダ遠征での招集条件の中で、ヨーロッパ組でチームを編成、チームを作った中で、将来A代表の十分絡んでくるだろうという期待も込めて、彼は招集しています」と説明しました。現在の評価に加えて、先々の期待も込めての選出であるようです。

本来はもう少し多い編成だったと森保監督。今回はJリーグの選手に加えてロシアの橋本拳人(ロストフ)とセルビアで得点を量産する浅野拓磨(パルチザン)は報道にあったとおり、オランダの入国制限との兼ね合いで今回は断念したとのこと。

これまで主力メンバーだった中島翔哉については「長期間チームでのプレーをしていなかった」と前置きした上で「チームに合流してトレーニングしているという情報はもらっていますが、まずは所属チームで結果を出して、チームの信頼を掴み取ってまた、また代表の選手選考に入ってこられるように日常を過ごしてほしい」と語りました。

今回は1年ぶりの活動ということもあり、勝利を目指すとともに、基本的なコンセプトを確認する機会にしたいという森保監督。合宿の状況で変化しうることを踏まえながらも「4バックでトレーニングを積んで試合に臨みたい」と明言しました。

現在は多くの代表候補が欧州のリーグに所属しており、今回のようにフルメンバーを欧州組で編成できてしまうことは確かですが、やはり編成上センターバックとボランチには少し不足するところがあります。菅原に関しては右サイドバックをメインにボランチ、サイドハーフなど多くのポジションをこなすマルチロールですが、橋本を招集できなかったボランチでも紅白戦ではテストされて、複数ポジションで備える形になると予想できます。

板倉と中山もセンターバックとボランチの両ポジションを本職としてこなせるマルチロールで、板倉はコパ・アメリカで柴崎とボランチのコンビを組みましたが、現在フローニンゲンではセンターバックのレギュラーに定着しており、一方で中山は五輪代表の活動でボランチの起用が多かったことに加えて、ズウォレでも直近の試合でアンカーとしてMOM級の活躍を見せたということで、基本は中山がボランチ、板倉がセンターバックという振り分けで、状況を見てスイッチすることも考えられます。

興味深いのは2列目の構成です。完全に本職としてハマるのは右サイドハーフの伊東純也と左サイドハーフの原口元気の二枚で、久保建英はまだ主力を掴めていないビジャレアルで、2列目の3ポジション全てのオプションになっています。一方で右サイドの主力を担ってきた堂安律は新天地のドイツ1部ビーレフェルトでスタメン出場しているものの、インサイドハーフがメインになっており、攻撃のコンダクターとしても新境地を見出しつつあります。

中島翔哉がいない左サイドハーフは原口がファーストチョイスになりそうですが、久保もビジャレアルでテストされているとはいえ、左足で縦の仕掛けやクロスが主体になる順足側のプレーはあまり慣れていうない様子も見られます。三好康児も万能型のMFで本来はトップ下をメインに、コパ・アメリカのように左利きを生かしたカットインでゴールに迫る役割でスペシャリティを発揮できます。

ただ、今回の編成上、原口の他にも誰かが左側をやるということを想定すると、やはり久保がオプションで、三好も限られた練習時間で左をテストされる可能性はあります。そう考えると、メンバー構成がかぶる鈴木優磨や森岡亮太はともかく、なぜエイバルの左サイドで活躍中の乾貴士が招集されなかったか疑問は残りますが「できれば多くの選手を選考したいと思っています。

その中で、ポジションのバランス、総合的に考えて選手の選考を考えています」と語る森保監督の頭の中ではすでに、左サイド構想もあるはずです。かつて南野がこのポジションに入ったこともありましたが、今回はどうなるか。

久保谷三好のトップ下起用の可能性もありますが、基本的にはこれまで通り4ー2ー3ー1と言っても”縦の2トップ”に構成で、ストライカー色の強い選手を中央に二枚並べるのが基本になるはず。昨年の予選では鎌田と南野が縦の関係になり、途中で前後を入れ替える流れも見られました。

ただし、今回は本職の1トップをこなせる大迫勇也が健在で、スペイン1部のウエスカで1トップを張る岡崎慎司、ベルギーのベールスホットで2トップのFWとして結果を出している鈴木武蔵もいることから、鎌田も南野も揃って縦の2トップのセカンドトップ的な位置付けでトップ下に入る形が考えられます。もちろん試合中には大迫、岡崎、鈴木武蔵のうち二人を前線に並べる、純粋な4ー4ー2の形もテストされるかもしれません。

25人という構成なので、おそらく国際親善試合の規定路線である6人交代制になる中で、どの選手がどれだけプレー時間を得られるのかは分かりませんが、来月にも代表活動ができるように現在全力をあげているとのことなので、その活動とセットで、来年3月に再開が予定されるアジア二次予選に向かっていくことになります。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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