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過密日程が光明に。Jリーグの再開後に”見つかる”18クラブのタレントたち

河治良幸スポーツジャーナリスト
ネクストジェレレーションマッチでインパクトを与えた横浜F・マリノスの津久井匠海(写真:田村翔/アフロスポーツ)

新型コロナウイルスの蔓延を受けて中断期間が続いているJリーグ。なかなか再開の目処が立っていませんが、村井チェアマンはリーグ戦をできるだけ100%消化したい姿勢を示しており、再開後はかなりの過密日程になることが確実視されます。

また昨日の記事「コロナ禍でもサッカー界は前向きに。FIFA提案の特別ルール「5人交代制」のメリットを考える」に書きましたが、FIFAが期間限定での”5人交代制”を提案していることが伝えられ、正式に認可されればJリーグも採用される公算が高くなります。

何れにしてもリーグ戦が過密日程になれば、それだけ若手選手や開幕戦でサブだった選手にもチャンスが回ってくる可能性が高くなることは確実です。そうしたチャンスをモノにしてブレイクしそうなタレントをJ1の18クラブ、リーグ開幕戦で出場機会の無かった選手から独断でピックアップしました。

サッカー界隈ではよくクラブのファンサポーターには認識されているけど、クラブの外側であまり知られていないタレントがいざ試合に出て活躍すると「見つかってしまう」「見つかってしまった」と表現しますが、そうしたポテンシャルを秘めた選手たちです。

コンサドーレ札幌 MF 高嶺朋樹 1997年12月29日生まれ

大卒ルーキーながらルヴァン杯の開幕戦に出場。リーグ開幕戦は出番がありませんでしたが、ベンチ入りはペトロヴィッチ監督の期待の表れでしょう。ボールを奪う能力と展開力を兼ね備えていて、スピーディーな流れの中でも正確なパスを繰り出すことができます。ボランチは札幌でも役者の揃うポジションですが、一味違ったリズムを加えることができる高嶺は出場チャンス次第でブレイクする可能性が高いと見ています。

ベガルタ仙台 FW 山田寛人 2000年3月7日生まれ

ルヴァン杯の浦和戦は終盤に投入されましたが、リーグ開幕戦はベンチ外。しかしながら、183cmのサイズをしなやかに使ったファーストタッチやボールキープは目を見張るレベルにあります。昨シーズンはJ3のセレッソ大阪U-23とJ2のFC琉球で合計9得点をあげましたが、サイドアタックがメインのベガルタで覚醒的な活躍をするポテンシャルは十分にあります。大事なのは一にも二にも積極性でしょう。

鹿島アントラーズ FW 染野唯月 2001年9月12日生まれ

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U-19代表候補であり、すでに知る人ぞ知るタレントですが、尚志高のエースとして大注目されるはずだった高校サッカー選手権は怪我で欠場、その怪我を引きずる形で鹿島でのスタートにも出遅れたため、ここまでの公式戦3試合でベンチ入りもしていません。しかし、得点感覚に疑いの余地はありません。

高校時代の途中までは下がって組み立てることも多かったところから意識を変えて、よりペナルティエリア内で勝負するスタイルに変えたことで得点力が開花した背景があります。鹿島のFWとして守備やポストプレーの役割もありますが、フィニッシュでどれだけ強みを出せるのかが鍵になりそうです。その意味でも最初は途中投入の方が力を発揮しやすいかもしれません。

柏レイソル MF 仲間隼斗 1992年5月16日生まれ

昨シーズンのファジアーノ岡山で15得点を記録して、J2のライバルでもあった柏レイソルに引き抜かれた形ですが、もともとレイソルのアカデミー育ちで、9年越しに愛着あるクラブのトップチームに帰還を果たしました。左サイドハーフから繰り出すカットインや斜めの飛び出しは鋭く、個人能力は同ポジションの主力である瀬川祐輔やリーグ開幕戦で途中出場から活躍した神谷優太にも引けを取らないものがあります。ここまで8シーズンに渡りJ2でプレーしていたためJ1で未知数な部分はありますが、その壁を打ち破って行く期待ができる選手です。

浦和レッズ MF/FW 伊藤涼太郎 1998年2月6日生まれ

登録はMFですが、トレーニングマッチなどでは4ー4ー2の2トップで起用されており、ルヴァン杯の開幕戦でも出場こそ無かったものの、FWとしてベンチ入りしていました。ただ、主力の興梠慎三やレオナルド、杉本健勇とも異なり、トリッキーなボールコントロールやターン、意外性に富んだパスで切り崩すタイプなので、まさに途中から流れを変える役割が打って付けです。もちろん本人はスタートから出たいと思いますが、終盤の大事な時間帯に、J1屈指とも言えるアタッカー陣の中でも違いを見せるはずです。

FC東京 MF/DF 鈴木喜丈 1998年7月6日生まれ

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スケール感のあるボランチで、センターバックとしてプレーすることもできます。2016年からU-23でJ3を経験しており、クラブは大学との両立を容認してもトップ昇格させたほど。しかし、2018年に手術した左膝を翌年に再手術する事態に見舞われ、早期でのブレイクのタイミングを逃してしまいました。デュエルに強く、攻撃では相手のプレッシャーを受けても難なく正確な組み立てができる選手です。両ポジションとも戦力は充実していますが、とりわけ過密日程になることが予想されるFC東京の救世主的な存在になるポテンシャルを備えた選手です。

川崎フロンターレ DF イサカ・ゼイン 1997年5月29日生まれ

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昨年の関東大学リーグのアシスト王。スピードと運動量を生かしてサイドバックから攻め上がるプレーが期待されます。右サイドバックは開幕戦から新加入の山根視来が見事にハマり、主力のポジションを確保した様相でしたが、中断期間を経て評価にどう変化が生じているかは注目ポイントです。本職の右サイドに加えて左サイドでもテストされており、左右の使い分けを覚えることができれば、出場のチャンスはより増えるはずです。

横浜F・マリノス MF/FW 津久井匠海 2002年4月30日生まれ

さすがJ1王者だけあり、サブも含めてトップチームであまり知られてない選手が見当たらないので、J2クラブから加入の前貴之や仙頭啓矢のチョイスも考えましたが、ユース所属ながらACLの30人に登録された選手から、大きな可能性を持つアタッカーをピックアップしました。ゼロックススーパー杯の前座として行われたネクストジェネレーションマッチで、高校選抜を相手にFWと左サイドハーフの両ポジションで高い存在感を見せていたのが津久井です。

ドリブルの突破力とキープ力が抜群で、危険なラストパスも繰り出しますが、やはり最大の持ち味は正確なシュートで、本人もそこにこだわりを持っているようです。現時点ではユースのプレミアリーグEASTが主戦場になりますが、中断期間も含めた1年間の成長次第でトップチームでのチャンスが回ってくれば新たな希望の星になるでしょう。

横浜FC FW 草野侑己 1996年7月21日生まれ

大卒ルーキーだった昨シーズンすでに5試合で先発、11試合に出場して4得点1アシストを記録していますが、ルヴァン杯はベンチ入りも出番無し。リーグ開幕戦はベンチに入りませんでした。再開後にJ1での真価が問われてきます。鋭い動き出しを武器とするアタッカーで、泥臭いゴールも得意としています。

昨シーズンの4点中、3得点は途中出場であげています。23歳ながら一児のパパであり、長女の誕生時にはクラブの公式を通して「より一層の責任を持ち、家族のために選手としても、一人の人間としても成長していけるよう頑張ります」とコメントしていました。53歳のカズから18歳の斉藤光毅までいる環境の中で、たくましく成長している様子で、J1でチームを躍進に導く活躍ができるか注目です。

湘南ベルマーレ MF 柴田荘介 2001年5月26日生まれ

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”湘南魂”を絵に描いたような選手で、17歳に時にプロ契約を結ぶなど、クラブでも期待の星と言えます。先輩の齊藤未月にも通じるものがありますが、もともとボール奪取にスペシャリティがあった齊藤に比べて、攻守両面でのバイタリティが光っており、トータルバランスの良い選手です。U-19日本代表では松岡大起や松本凪生など強力なライバルが揃っていますが、プレーは溌剌としている一方でマイペースなところも感じられ、ひとっ飛びでなくても、着実に成長していく期待があります。ハードワークが大前提の湘南のスタイルからして、中盤ではスタメンも含めて、おのずと活躍のチャンスが巡ってくるでしょう。

清水エスパルス FW 川本梨誉 2001年6月11日生まれ

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右サイドからパワフルな仕掛けと力強く正確なクロスでチャンスを作り出す選手で、タイ代表FWティーラシンの決定力などを生かすには打って付けの選手。ウィング、サイドハーフ、サイドバックのあらゆるポジションからダイナミックに、攻守に関わることができます。ポジションとしてはサイドが適任ですが、流れでは中央でも決定的なプレーができ、シュートのパンチ力もあります。U-19日本代表でもあり、サイドハーフでは浦和レッズの武田英寿、サイドバックではFC東京の中村拓海などがライバルになりますが、川本の場合は途中投入で流れを変える役割も十分に期待できるので、エスパルスでもまずはジョーカーとして台頭するかもしれません。

名古屋グランパス DF 藤井陽也 2000年12月26日生まれ

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生年月日を見てわかるとおり、数日の差で来年のU-20W杯やパリ五輪に出られないという”超谷間の世代”ですが、アカデミーの大先輩である吉田麻也も似た境遇からA代表まで上り詰めた選手です。

187cmのサイズと年齢に似合わない冷静さを持つセンターバックは昨シーズン、注目に値するパフォーマンスを見せました。豊田スタジアムで川崎フロンターレに3ー0と勝利した試合で小林悠、レアンドロ・ダミアンを封じる大仕事をやってのけました。結局リーグ戦4試合に出場しましたが、フィッカデンティ監督に代わってからはバックラインをいじる余裕がなく、主力の丸山祐市と中谷進之介が健在だったこともあり、ベンチ入り止まりでした。

新シーズンもルヴァン杯、リーグ戦ともに開幕戦はベンチから試合を見届けることになりましたが、すでにトップレベルで能力の片鱗は見せているだけに、再開後に出番が来れば高水準のプレーを見せる可能性の高い選手です。

ガンバ大阪 MF 奥野耕平 2000年4月3日生まれ

”井手口2世”の呼び声もあるアカデミー育ちのタレントで、ボランチのポジションから高い位置でボールを奪って正確なパスを繰り出す能力に優れています。マリノスを破ったリーグ開幕戦はベンチ入りも出番がありませんでした。しかし、あの勝利をピッチサイドで立ち会ったことは大きな財産でしょう。ガンバの中盤には井手口陽介、矢島慎也、もちろん大ベテランの遠藤保仁もおり、FC岐阜から復帰した市丸瑞希も期待のタレントですが、活動量とクオリティを兼ね備えた奥野のプレーは再開後にインパクトをもたらし、ガンバ躍進の起爆剤になる可能性があります。

セレッソ大阪 MF 松本凪生 2001年9月4日生まれ

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昨年のU-20W杯でトレーニングパートナーとして参加したので、セレッソのファンサポーター、J3のセレッソ大阪U-23などでプレーを観たことがない人も名前は聞いたことがあるかもしれません。来年のU-20W杯を目指すU-19日本代表ではサガン鳥栖の松岡大起などと共に、中心的な選手で、リーダー格にもなりうる選手です。中盤でのデュエルにめっぽう強く、鋭い飛び出しからミドルシュートを決めることもできます。

ヴィッセル神戸 DF 山川晢史 1997年10月1日生まれ

186cmの長身を生かした空中戦やデュエルも魅力ですが、本人が自負するのは声で人を動かせるという部分で、早期から統率力を発揮できる資質は備えています。ヴィッセルにはフェルマーレン、ダンクレー、大崎玲央、渡部博文というセンターバックがいますが、ACLも含めた過密日程を戦うにあたり、フェルマーレンを欠く試合での後ろからの攻守の安定は不安要素になり得ます。締めるところは締めるというメリハリをうまく出して行ければ、新たな五輪候補として競争に加わっていくことも期待できます。

サンフレッチェ広島 MF 藤井智也 1998年12月4日生まれ

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2021年の加入が内定。立命館大に在学中ながら特別指定選手としてチームに参加しています。大学では左サイドが本職ですが、3ー4−2ー1の右アウトサイドもチョイスになりそうです。スピードとスタミナをハイレベルに兼ね備えており、身体的な資質はすでにプロで通用することは確かでしょう。あとは、いかに実戦で発揮できるか。クロスボールを味方のアタッカーに合わせるコンビネーションやイメージの共有も鍵になりそうです。

大分トリニータ DF 羽田健人 1997年7月7日生まれ

777という幸運の星に生まれたような選手。184cmという体格以上にデュエルで強さを発揮するセンターバックです。ポジショニングの正確性も売りで、オフで裏を取らせることなく厳しい対応ができる。昨年、すでに特別指定選手として参加しており、ベガルタ仙台戦でJ1デビューしています。開幕戦はベンチ入りしませんでしたが、三竿雄斗やヴァンフォーレ甲府から加入した小出悠太と言ったライバルもいる中で、いかに成長をアピールできているかがポイントになってきそうです。

サガン鳥栖 FW 兒玉澪王斗  2002年4月24日生まれ

今月18歳の誕生日を迎えたばかりの二種登録選手ですが、すでにトップチームの主力として注目される松岡大起や本田風智に続く台頭が期待されます。ゴールのにおいを嗅ぐ能力に優れている印象を受けるストライカーで、ガンバ大阪の新星である同学年の唐山翔自にも通じますが、いつの間にかポイントに入り込んでワンタッチゴールを決めることができるタイプでしょう。

その一方で、サイドから鋭いクロスを入れるなどアシスト能力もあるので、4ー3ー3の場合はウィングで起用されるかもしれません。アカデミーからの昇格組では1年先輩の石井快征も期待されますが、クラブの経営危機も伝えられる中で、2002年生まれの選手が台頭して来れば、ファンサポーターにとっても大きな希望になるはずです。

(本文写真・筆者撮影)

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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