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ルヴァンに届け!U-19日本代表キャプテン齊藤未月の湘南魂。

河治良幸スポーツジャーナリスト
90分とにかく走り、声を出す。それが湘南魂だ。(写真:アフロスポーツ)

インドネシアで行われているAFC U-19選手権(U-19アジア選手権)で影山雅永監督が率いるヤングジャパンは北朝鮮に5-2、タイに3-1で連勝してグループリーグ首位通過を決めた。

「とにかく明るい」と影山監督が言うU-19代表でキャプテンを任されているのが湘南ベルマーレの齊藤未月だ。北朝鮮との初戦では出番がなかったが、タイ戦ではボランチのポジションからハードワークとコーチングでチームを引き締めて3−1での勝利に貢献。試合の終盤には「下がるなぁ!」と仲間に伝える声がスタンドにまで響き渡った。

「立ち上がりちょっとバタついたんですけど、点を取るというより相手を走らせて、相手を疲れさせようという雰囲気になりました。相手が前半途中ぐらいから走れなくなってきて、最初の方は相手も攻撃にエネルギーを持って点が取れなかったので、もう俺たちの時間帯ができましたし、アベちゃん(安部裕葵)の活躍だったり、点を取るべき選手が取ってくれたのかなと思います」

前半は中盤のスペースを使われるシーンも目立ったが「相手も結構うまくやってきてましたし、ボールをつなぐのはうまかったし、ただセカンドボールの奪い合いでは勝った部分は大きかったですし、(最終ラインの橋岡)大樹とも声をかけあいながら奪うところまで前にプレスした方がいいのか、下がった方がいいのか話し合えたのかなと思います」と振り返る。

ハーフタイムでボランチのコンビが伊藤洋輝(ジュビロ磐田)から山田康太(横浜F・マリノス)にチェンジしたが、パートナーの特徴を頭に入れつつも、勝利のためにどう振舞うべきかを臨機応変に判断し、周りにも指示を与える姿が印象的だった。

「前半に関しては(伊藤)洋輝がキックけれますし、大きいので、相手も威圧できるタイプで、康太に関しては攻撃のセンスが高いですし、前でプレーするタイプなので、それを尊重して後半の立ち上がりは前から前から行かせようっていう気持ちにはなってましたし、そこでいい活躍してくれたと思いますし。(後半に)1点取られて最後の15分、20分という形は康太を下げさせて、守備もできる選手ですし、やりずらいという感じはなかったです」

日本が効率よく3点を取った前半にも大きなピンチになりかけた場面はあった。特に湘南の同僚でもある右サイドバックの石原広教が自陣でボールを奪われた時には素早いカバーリングで相手の出どころを封じ、インターセプトで難を逃れた。この試合の中も隠れたビッグプレー1つであり、仲間を救う結果にもなった。

「(石原)広教もけっこうピッチとか、いつもやってるポジションじゃないですし、苦労した部分はあるかなという感じはしました。でもチームですし、それは誰が出ても助け合いの部分です」

大会前にはコンディションに不安を抱えていた齊藤。このタイ戦については「80%ぐらい、80%、90%に上がってきてるんじゃないかと思いますし、もうちょいコンディション万全になっていければ」と語るが、ピッチに立てばそうした言い訳をせずハードワークを全うするのが、熱血漢のチョウ貴裁監督が率いる湘南ベルマーレだ。その下部組織で育ち、ジュニアからトップまで駆け上がってきた齊藤には”湘南魂””ベルマーレ魂”を背負う自負がある。

「(U-19代表は)サボる傾向がチームの中にあって。きついのはわかるんですけど、きついからといって”なあなあ”にしたくない気持ちが僕の中ではあるので。僕とか別に嫌われてもいいですし、そこは言って行きたいなという感じですかね」

ーーあの辺のコーチングなんかはやはり湘南ベルマーレ魂?

「そういう感じありますよ。やっぱり湘南って言ったらサボらないというか、サボったらもう殺されるし(笑)。そういうところはチームは違えど、ちょっとは還元できたらいいかなと」

ーーここで必死に戦っていることが湘南のチームやサポーターへのメッセージになる?

「湘南もルヴァン決勝行ったりとかJリーグ最後の戦いをしてますけど、僕も(石原)広教もここでしっかり戦ってるという気持ちを出さないといけないですし、ベルマーレの代表としてきてますし、日本の代表を背負っているので、そこは臆せずやりたいかなと思います」

”サボったら殺される”はもちろん談笑混じりの中で出たもので、湘南のチョウ監督は恩情に厚い指導者だが、そうしたクラブの気風が齊藤をU-19日本代表のキャプテンにまで引き上げた1つの力とも言える。遠く日本で大一番を迎える所属クラブにエールを送った齊藤。実は試合後に抜き打ちのドーピング検査でなかなか終わらず、2時間後にようやく出てきたが、そうした疲れも見せずに明瞭な声で取材に応じてくれた。

勝負は対戦相手もおり、ここからヤングジャパンが準々決勝で世界の切符を勝ち取り、アジア王者になれる保証はとこにもない。しかし、この熱いキャプテンがまとめるチームが一丸になり、目の前の壁に挑んでいくことは間違いない。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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