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シャルケ×レアル・マドリー「白い巨人」に挑むシャルケ。ジャイキリのカギは内田×クリロナ

河治良幸スポーツジャーナリスト

いよいよチャンピオンズリーグが再開する。

『サッカー「番狂わせ」完全読本 〜ジャイアントキリングはキセキじゃない〜』(東邦出版)の来月リリースを記念し、"日議”こと「日本代表について議論するページ」のインタビューに答える形で、ジャイアントキリングの視点から、2月17日に行われるチャンピオンズリーグ・ラウンドオブ16シャルケxレアル・マドリーの内田篤人とクリスティアーノ・ロナウドのマッチアップにフォーカスした。

☆内田とロナウドのイラスト(なかむらりおた)&フォーメーション付き記事はこちら

「日本代表について議論するページ」

【第1レグ:スタメン予想】

シャルケ

GK:ヴェレンロイター

DF:ヘーベデス、マティプ、ナスタシッチ

MF:内田、ヘーガー、ノイシュテッター、ボアテング(バルネッタ)、フクス

FW:フンテラール、チュポ=モティング

レアル・マドリー

GK:カシージャス(ナバス)

DF:カルバハル、ヴァラン、ナチョ(ペペ)、マルセロ

MF:トニ・クロース、イジャラメンディ、イスコ

FW:ベイル、ベンゼマ、ロナウド

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(日議)CLベスト16ではシャルケxレアル・マドリーの対戦に対してどのように思われますか?

(河治)普通に考えればレアル・マドリーの方が戦力は上でしょう。お互い主力にけが人がいる状況とはいえ、レアル・マドリーは特に攻撃陣に関してはベンチの層も厚いですし、大きな問題は無い。ただ、ディ・マッテオ監督というのはチェルシー時代のCLを見ても分かる通り、対戦相手が強大になるほど勝負強さを発揮するタイプでもある。

ブンデスリーガでのここまでの戦いぶりが"退屈"と言われることもありますが、相手が強くなるほど面白い戦いを見せてくれると思います。その意味で、レアル・マドリー戦は非常に注目です。

(日議)内田選手は初めてロナウド選手と対戦しますがココのマッチアップはどのように思われますか?

(河治)勝負のキーポイントであることは間違いありません。ただ、ここのマッチアップの前に気をつけたいのは、クリロナと周囲の関係をいかに断ち切るかですね。

リーガエスパニョーラでは先日アトレティコ・マドリーがレアル・マドリーに4-0で勝利しましたが、ロナウドとベンゼマのホットラインをほぼ完璧に断ち切ったことが大きな勝因になりました。システムは違いますが、シャルケにとっても参考になる試合だったと思います。

(日議)シャルケの場合、内田とヘーガーの連携ということでしょうか?

(河治)そうですね。ヘーガーの守備は非常に大きなカギを握ると思います。彼がベンゼマをCBと縦に挟み込むことで、落としをロナウドが前向きに受けるチャンスを奪ってしまうことが重要です。

ベンゼマは高さより柔らかいボールタッチで起点を作っていくタイプの選手。CBが縦を切るだけだと、簡単にボールをキープしてウィングやMFにパスを通されてしまいます。特にロナウドがやや中に入ってクサビを受ける形はレアル・マドリーの必勝パターンで、直後のロナウドのマークも曖昧になりやすい。

しかし、左サイドで中盤の選手から出されたパスをロナウドが持っても、あらかじめ内田などがマークできるため、いきなり後手を踏むことはありません。それだけベンゼマのポストプレーを封じるメリットは大きく、そのためにヘーガーの役割が重要になるわけです。

(日議)シャルケのCBも絡む必要がありますね?

(河治)右にヘーベデス・中央にマティプ・左にナスタシッチが入ると思いますが3人の役割も重要ですね。2トップが主流でない現代において、3バックのメリットは状況によって1人が前やワイドに守備をしても、中央に2人残る状況を作れることです。

ベンゼマが左サイドに流れれば、そこに右CBのヘーベデスが、右に流れれば左CBのナスタシッチが対応することになりますが、その間に中央を突かれてもCBが2人残っているため十分に対応が可能です。

ただ、その間も中盤の選手はCBと距離をコンパクトに保って、バイタルエリアを空けない様にしておくことが大事。おそらくアンカーで出場するノイシュテッターはあまり引っ張りだされることなく、バイタルエリアを埋め続ける役割を全うするでべきです。その意味でも中盤ではヘーガーの柔軟なポジショニングが問われてきますね。

(日議)シャルケの1番重要な選手はヘーガーと言うことでしょうか?

(河治)戦術的にはそうなりますが、勝負のキーマンはやはり内田でしょう。理由は簡単で、シャルケの中央の守備が破綻しなければ、右サイドでロナウドと最もマッチアップする回数が多くなると考えられるからです。

つまり戦術的に機能しても、ここの1対1で内田がロナウドに惨敗してしまったら、全て水の泡になってしまいます。

シャルケにとって大事なのは、まず中を締めてベンゼマとロナウドのホットラインを断ち切り、ロナウドが中でいきなりフィニッシュを狙う様な状況を作らせないこと。そしてロナウドがサイドでボールを持つ状況を増やし、そこでの1対1で内田が負けないことです。

(日議)内田がとるべき守備はどのようなものになると思われますか?

(河治)なるべくサイドのポジションを維持したいです。内田は状況判断のいい選手なので、中盤が劣勢になると中に絞って守備を安定させようとするかもしれません。

そこでロナウドを止めることになればいいですが、レアル・マドリーの左サイドバックはマルセロなので、内田が中に寄りっぱなしになれば、間違いなく突いて来るでしょう。

今季のエル・クラシコの第1戦ではレアル・マドリーがバルセロナに3-1で勝利しましたが、マルセロが高い位置から一気に抉って上げたショートクロスをピケがハンドしてしまいPKとなり、それをロナウドが決めたシーンがありました。

[3-5-2]というシステムはもともと中央に強く、サイドが空きやすいシステムです。そこでウィングバックの内田がロナウドに釣られて中に入ってしまうと、相手サイドバックにとってフリーゾーンが生まれてしまいます。

内田がロナウドと勝負するのは基本サイドで、よほどのことが無い限り、中の守備はヘーガーなどに任せたいところです。

逆にロナウドがサイドでボールを持ち、さらにマルセロが追い越そうとする様な場面では右CBのヘーベデスに流れてもらい、うまく受け渡して対応したいところです。

(日議)内田が1対1でロナウドに対するときのポイントは?

(河治)ロナウドはバイタルエリアではオフ・ザ・ボールから多彩な動きをしてきますが、サイドでは足下でボールを受けて、そこから純粋な1対1を仕掛けてくるのがほとんどです。

例えばロッベンの様にいきなりドーンと裏を狙ってくることはないので、内田としては少し距離を取りながらじわじわプレッシャーをかければ、単純に突破される心配はほとんど無いでしょう。

フェイントにもあまり惑わされるタイプではないですしね。難しいのはカットインにどこまで突いて行くか。先ほど言った様にサイドの持ち場を外しすぎると、シンプルなパスから中盤を経由してマルセロに出され、一気にオープンスペースを突かれる様な危険もあります。

なので、ある程度のところでヘーガーなどに受け渡したい。ただし、深い位置であればロナウドはカットインから危険なミドルシュートを打ってくることもあるので、直接狙われる様な位置では付き切ることも大事。

その場合はヘーベデスが内田とポジションをチェンジする形で右サイドのケアに回るべきです。

1対1で簡単にやられないことを前提に、いかに状況判断して周りと役割を受け渡していけるかが守備の生命線になります。

(日議)ズバリ内田はロナウドを止められますか?

(河治)サイドでは止められると思います。ただ、中に入っていくタイミング、マルセロの攻撃参加など、状況変化が生じてくるので、そこを仲間とうまく共有して相手のリズムを崩したいところですね。

(日議)現実的にシャルケは守備に回る時間が多いと思いますが得点パターンはカウンターもしくはセットプレーですがレアルの守備陣をかわせると思いますか?

(河治)まず守備から入り、レアル・マドリーの攻撃リズムを狂わせれば、おのずと攻撃のポイントは見えてきます。内田は前にロナウド、後ろにマルセロがいる状態でなかなか攻め上がるチャンスは無いかもしれませんが、3バックでいざという時はヘーベデスがカバーしてくれることもあり、周囲が高い位置にボールを運べると判断すれば、思い切って上がっていきたいですね。

レアル・マドリーはセルヒオ・ラモスがおらず、ペペも万全とは言えない状況で、ゴール前でシャルケの2トップがクロスに合わせるシーンができれば大きなチャンスでしょう。内田も多少アーリー気味でもいいので、チュポ=モティングにタイミング良く合わせていきたいですね。ブンデスリーガで出場停止中のフンテラールとのホットラインにも期待したいです。

(日議)最後にシャルケがジャイアントキリングを起こせる可能性はどれぐらいですか?

(河治)最初がホームなので、ここでなるべくアウェーゴールを奪われずに勝利を飾ってベルナベウに乗り込みたいですね。

内田が1対1でロナウドを完封できるという期待を込めて30%にしておきます。

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スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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