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SUV全盛、の2018年を動画で振り返る・後編

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

 筆者自身は2018年に国内外の試乗会で約200台以上を試乗したが、その中で今年試乗したSUVを数えてみると実に約40台程度と約2割にも達した。ということで、今年試乗したSUVを筆者のYouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」で収録した動画とともに振り返っていく、その後編がこの記事となる(前編はこちら→https://news.yahoo.co.jp/byline/kawaguchimanabu/20181231-00109681/)。

 9月にはメルセデスAMG GLC 63S 4MATIC+というモンスターSUVに試乗した。このモデルはメルセデス・ベンツのSUVであるGLCのトップモデルで、4.0LのV8ツインターボエンジンを搭載し、最高出力510ps、700Nmを発生。0−100km/h加速タイムは3.8秒を実現する1台である。

 

 また9月の中旬には、アルファロメオ初のSUVであるステルヴィオを、その名の由来となったイタリアのステルヴィオ峠で試乗するという極めて貴重な経験をした。実に48ものヘアピンカーブを擁した、イタリアの自転車レースであるジロ・デ・イタリアのコースにもなっているこの峠を走らせると、なるほどこのクルマがステルヴィオと名付けられた理由がよく分かったのだった。

 

 10月にはVWのコンパクトSUVであるティグアンに、ついにディーゼル・エンジン搭載モデルであるTDIが追加されたので、これを撮影・試乗して動画を公開。ディーゼルゲート事件を起こしたVWがあえてディーゼル・エンジン搭載車を日本試乗に送り出したわけだが、現状では好調なセールスを記録している。

 

 三菱自動車は同社のPHEVであるアウトランダーPHEVを大幅改良した。今回はエンジン排気量拡大に始まり、モーター、バッテリーの出力や容量を向上。その他ステアリングやボディ剛性、サスペンションなど多岐にわたって手が入り、かなり完成度を高めたと言える。

 

 さらに10月にはボルボXC40の廉価グレードが日本上陸を果たしたので、これを試した動画を公開した。2.0Lターボながらも低出力版を搭載するが、安全装備等は総て上級グレード、上級車種と変わらぬという魅力あるモデルだった。

 

 そして注目されていたマツダCX-5の商品改良によって、新たに追加された2.5Lのガソリンターボエンジン搭載車と、ディーゼルエンジンに6速MTを組み合わせたモデルを試乗。多くの人が注目した2.5Lのターボはなかなかの仕上がり。しかしディーゼル+6速MTがそれ以上に印象的だったと紹介している。

 

 そして10月にはこれもSUVではないが、このブームの素地を作った1台と言えるジープ・ラングラーの試乗動画を公開した。今年はメルセデス・ベンツGクラス、スズキ・ジムニー、そしてこのジープ・ラングラーと、クロカン4WDの元祖的な存在が3モデル揃ってモデルチェンジした、実に奇跡的な年でもあったのだ。

 

 またスバルのコンパクトクロスオーバーであるXVに、新型フォレスターに搭載されたのと同じe-BOXERが搭載された新グレードであるAdvanceが追加されたため、これも試乗動画を公開した。XVはフォレスターよりも車両重量が軽いため、モーターによるアシストをより感じやすい仕上がりが印象的だった。

 

 さらにマツダCX-8は、昨年の登場から1年を待たずして商品改良を受け、ディーゼル・エンジンのみのラインナップだったところに、新たに2.5LのNAエンジンとターボ・エンジン搭載モデルの2種類を追加したのだった。これによってCX-8はさらに選択肢が増えた。既に人気モデルだが、よりその台数を積み上げる要素となるだろう。

 

 さらにBMWのX4も試乗。このモデルはX3のクーペ版とも言える位置付けとなる1台である。この時に試乗したのは、スポーティなMパフォーマンスのモデルM40iで、搭載エンジンは3.0Lの直列6気筒ターボ。最高出力360ps、最大トルク500Nmを発生し、これをxDriveという4WDを介して路面に伝えるモデルだ。その性能の高さと走りの良さに、SUVはスポーツカーにもなり得ることを感じさせた1台だった。

 

 11月になると、ホンダが実に2年半ぶりに復活させたCR-Vを試乗した。このモデルは既にアメリカでは展開されていたが、ホンダはついに日本試乗にも導入することを決めたモデルである。先代モデルはSUVブームが始まる直前に日本市場撤退を決めた不遇なモデルだったが、果たして今回のモデルはどう受け止められたか? 

 

 また先に紹介したBMWのX2が日本導入され、それを公道で試乗した動画も公開した。海外で試乗した時はディーゼル・エンジン搭載モデルだったが、日本では1.5Lの3気筒エンジンを搭載したモデルが販売されており、これを短時間だが試乗した模様をお届けした。

 

 さらに11月には日本では未発売の日産の高級車ブランドであるインフィニティのQX50というモデルを試乗。これは以前、日本市場でスカイライン・クロスオーバーの名前で販売されていたモデルの後継となる。今回は世界初となる可変圧縮比エンジンを体感するための技術的な試乗だったが、改めて乗ってみてインフィニティの日本での展開も要望したくなる1台だった。

 

 そして今年試乗した中で最もインパクトがあり、間違いなく実力も1番だと痛感したのがアウディ初の電気自動車であるe-tron。これまでの自動車を総て過去のものにして、これまでのEVをも過去に追いやるほどの仕上がりの良さには相当に驚かされた。特にその静粛性の高さは驚異的で、EVに徹底した静粛性を加えると極めて上質な乗り物になることを痛感させられたのだった。このe-tronは間違いなく、今後のEVのリファレンスになる。しかもSUVのボディ形状で送り出された辺りは、搭載バッテリーの多さと広い室内空間を両立するためでもあるが、商品性とし見てもいま世界中でこの形態が求められていることを反映したと言える。

 

 ユニークなのは、今年50周年を迎えた三菱デリカ。現在販売されているデリカD5が大幅な改良を受けて、フルモデルチェンジに近い内容での進化を果たしたことだ。エンジン性能の向上やATの8速化、乗り心地と安定性の大幅向上に加えて安全装備の充実など、かなりの部分に手が入った。が、極め付けはデザインの大幅な変化で、まるでアルファードやヴェルファイアを思わせるような強烈な押しの強い顔つきを与えられたこと。これがネットを大分ザワつかせたのだった。

 

 今年最後に試乗したSUVがレクサス初のコンパクトクロスオーバーであるUXという新型モデルだ。このモデルはトヨタC-HRが用いた新世代プラットフォームTNGAのレクサス版であるGA-Cプラットフォームを用いた1台で、2.0Lの新世代4気筒エンジンと1速を備えた新世代CVTを搭載。またハイブリッドモデルも2.0Lエンジンと熟成が極まったハイブリッドシステムTHSIIを組み合わせたものを搭載した。そして発売から1ヶ月で月販目標台数の10倍近い8800台を受注した人気モデルである。

 

と、こんな具合でこの1年間で実に多くのSUVに試乗したのだった。もちろんこれは昨年よりも確実に多い台数であり、やはりSUVは確実に世の中の自動車におけるスタンダードになりつつあるとも感じた。セダンやステーションワゴンが主だった時代から、ミニバンの時代となり、さらにミニバンの時代がこなれて淘汰が起き、SUVが幅を利かせてつつある。さらに今後を考えれば電動化に伴って、動力源の配置が変化していくため、クルマの形態もさらに変化していくのだろう。

 が、ドライビングポジションが良好で乗り降りもしやすく、荷物も人も適度に積めるSUVはなるほどイマドキの最適解になっている。また比較的背の高くゆとりのある車体を持つがゆえに、様々な技術を詰め込みやすいため、流行りと合わせて商品性の高さを謳うための器として、作り手にとっても魅力的でもあるわけだ。

 果たして来年はこのSUV全盛がどうなっていくのかにも注目して自動車を引き続きウォッチしていこうと思う。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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