最強チームの主将が青赤軍団入り

 今夏の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)を制し、Jリーグのユースチームも参戦する高円宮杯プレミアリーグEASTでも首位を独走。「いま日本で一番強いチーム」(大宮アルディージャU-18・丹野友輔監督)という言葉が自然と語られる存在となっている青森山田高校。そのサッカー部主将であり、U-20日本代表候補にも名を連ねるMF松木玖生の、J1・FC東京への来季加入内定が12日に発表となった。

 松木は1年生ながら主力に定着した2019年当時から「高校を出たらJではなく欧州へ行く」と公言していた欧州志向の持ち主。実際、今年初頭や夏にはオランダやドイツなど欧州クラブに練習参加するなど、移籍の道を探ってきた。実際にオファーを出してきたチームもあり、本人にとっては悩みどころとなった。

 ただ、「より成長できる環境はどこか」(松木)を考えたときに、「長友佑都選手のような海外の良い部分も悪い部分も知り尽くした選手がいるクラブにいって、じっくり土台を作ってからでも遅くはない」(黒田剛監督)結論に至り、急転直下でJ入りの可能性を探ることとなった。松木サイドの方針転換を聞いてすぐに動いたのがFC東京だ。

 元から「もし欧州を断念するのであれば是非ウチにとは言われていた」(黒田監督)チームであり、日本代表DF室屋成を始めとしてOBで在籍していた選手も多く、またFC東京の育成組織から青森山田を進路に選ぶ選手も少なくないことから両者の関係性は深い。急転直下で公式オファーに至り、松木サイドがこれを受諾。北の快男児が来季より青と赤のユニフォームに袖を通すことが決まった。

異色のスタイルを持つ闘将ボランチ

チップキックでPKを決める松木。その豪胆さは最大の魅力だ
チップキックでPKを決める松木。その豪胆さは最大の魅力だ

 ボランチながらリーグ戦でもカップ戦でも得点を量産する異色のスタイルの持ち主で、高校総体では得点王に輝き、リーグ戦でも得点ランク3位につける。常にゴールを狙い続けており、点を取り損なった試合の後は、まるでストライカーのように「今日は決められなかったんで」と仏頂面で自分への不満を述べるのも、いつものこと。これほどゴールにこだわるボランチもなかなかいない。FC東京の石井豊スカウト部長も「パンチ力・正確性があってボランチというポジションから得点を奪える」ことを高く評価したポイントとして真っ先に挙げた。

 かといって守備をサボるタイプかと言えば、そこも真逆だ。これも石井部長が「得点力に加えて守備への貢献度が非常に高い」と評する通り。アグレッシブなプレスでボールを狩り、ピンチと観ればゴール前まで戻って体を張って守る姿勢も光る。絶対的な運動量と球際での厳しさを見せ続けるのも“松木らしさ”だ。

「自分がやらないと周りに言えないですから」

 そうさらりと言ってのけるように、主将として周りに厳しく要求しつつ、誰よりも自分がそれをやってみせる。背中で引っ張りながら声でも引っ張るその姿勢は、プロ入りする期待の選手に対して辛口になりがちな黒田剛監督をして「本当に頼もしい主将」とコメントさせるほどである。

 ポジションについては各指導者やスカウトでも意見が分かれる、また悩むところのようで、年代別代表チームでは左足のキックと運動量を買われて左サイドバックでプレーしたこともあり、小学校時代にはGKまで経験するなどほぼ全ポジションを経験済み。スピードやテクニックに特段秀でるタイプではないだけにインサイドハーフが最適な位置にも見えるが、ここはプロのステージで揉まれながら自分の生きる場所を探ることとなりそうだ。

 何にしても、1年生のときから先輩やスタッフに食ってかかることがあるほど、物怖じしない、遠慮しないスタイルが松木の真骨頂。この点は「中学1年生で初めて会ったとき、『ついこの間まで小学生だったんだよな?』と思うくらいの堂々とした様子で、ふてぶてしかった」と黒田監督が語った通り、ずっと変わらず貫いてきた部分だ。プロの舞台でも変に萎縮することなく、「1年目からやれる自信はある」と語った通り、堂々としたチャレンジを期待しておきたい。

松木 玖生(まつき・くりゅう)

2003年4月30日生まれ。180cm/76kg。北海道室蘭市出身

室蘭大沢SCでサッカーを始め、小学校卒業後はよりハイレベルな環境を求めて青森山田中学校へ。青森山田高校在学中(3年)。U-15から各年代の日本代表チームを経験しているほか、U-20日本代表候補にも飛び級で選出された経験を持つ。ちなみに身長は、「本当は179cm」とのこと。