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高校総体私撰ベスト11+α。真夏の大会を彩った傑物たち

川端暁彦サッカーライター/編集者
左から宮崎、小森、西川、原田、福島(写真は以下すべて川端暁彦)

高校総体ベスト11を選んでみる

 8月13日、高校総体男子サッカーの決勝が行われ、山梨学院が桐光学園を2-1で破り、初めて夏の栄冠を勝ち取った。ここでは正月の高校サッカー選手権でも主役候補となり得る、今大会を彩ったタレントをピックアップしてみたい。自分なりの視点でベストイレブン形式で選んでいるが、特定の高校に偏ることのないように人数も1校2名までに制限させてもらった(ただ、優勝した山梨学院だけ1校3名を選出)。このため、ポジションには余りこだわらずに選考させてもらっている。

GK市川隼(山梨学院3年)

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PK阻止率57.1%の『控え』守護神

「神懸かっている!」と形容したのはチームのエース、宮崎純真。今大会はPK8本中6本をセーブするという鬼のような活躍ぶりで全国制覇に大きく貢献。決勝後半の終盤にも1対1のピンチを防ぎ、そこからのカウンターが劇的な同点ゴールに繋がった。実はシーズン前まで控えGKと目されていた選手だったのだが、負傷者が出る中でポジションを掴み取り、すっかり信頼も獲得した。

DF吉田航(昌平3年)

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戦う昌平のキミッヒ

「何故かアイツの対面が常に相手のキーマン」(DF関根浩平)だった今大会、高知中央の怪物留学生オニエに始まり、青森山田の檀崎竜孔、大津の水野雄太といったU-18日本代表選手など名だたる猛者と右SBとして対峙して粘りの応戦を見せ続けた。「和製キミッヒ」(命名:林舞輝)らしい巧みな持ち上がりやパス出しといった個性も光り、ド派手ではないが昌平サッカーになくてはならない選手だった。

DF望月駿介(桐光学園3年)

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成長著しいキャプテン

「元々は大人しい性格」と鈴木勝大監督が言うように、いわゆるキャプテンタイプではなかったが、今では声を出しまくるリーダーに成長。相棒の内田拓寿とどちらを選ぶか実は迷ったが(というか桐光の4バックは全員選びたいくらいだが)、主将としての貢献を加味してチョイス。なおストッパーとしての能力の高さも折り紙付き。エアバトラー養成所として知られるFC多摩出身者らしく、今大会はセットプレーからの得点源としても大いに脅威となった。

大石悠介(山梨学院3年)

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静岡から来た空中の猛者

決勝戦でパワープレー要員として前線に置かれたことからも分かるように、183cmの高さが活きる空中戦に抜群の信頼感。気が利く上に戦える西澤俊とのコンビは絶妙で、GK市川を含めたトライアングルはまさに要塞の趣だった。全国舞台を夢見て(そして先輩の加藤拓己@早稲田大学に憧れて!?)、静岡から一念発起して山梨へやって来た男は、夏の全国舞台で大いに存在感を発揮。

DF福島隼斗(大津3年)

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ワイドフィードとリーダーシップ

ボランチでもプレーできる器用さを持つが、今大会はCBとしてプレー。両足から繰り出される高質のロングフィードは対戦各校の脅威となり、対人でも強さを見せた。もう一つの持ち味である運動量はこのポジションでは発揮しづらいところだが、コーチングはより味方を助けることに。プロ入りが濃厚な選手だけに、冬に向けてまた一段階の成長を期待したいところだ。

MF原田虹輝(昌平3年)

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Jスカウトも驚愕、開眼の名手

とにかくボールを取られない。ヒョイッとスペースへ運び出すプレーが絶妙で、リズムを作り変化も作る。準々決勝は大津相手に衝撃の60mドリブルも披露しているが、あれもまずコース取りが絶妙だ。加えて今季完全に覚醒した感のある得点力もあり、密かに狙うプロ入りはもはや射程内。あるJ1強豪クラブのスカウトは「あんな選手がいたとは。かなり好きなタイプです」と驚愕しつつ、興味津々の様子だった。

MF佐野海舟(米子北3年)

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ニョキッと生える中盤の狩人

「あんな身体能力の選手は東京にいないですよ」と対戦した関東第一の小野貴裕監督も驚嘆させた身体的な素養の高さは抜きん出ていた。倒れてもすぐ立ち上がれる筋力があり、そもそも簡単には倒れない。無理に思える体勢から足が出てきて、ボールを狩れる。そしてもちろん競り合える。山梨学院のMF平松柚佑などは佐野を目標に挙げ、試合を観戦した際も佐野をひたすら追い続けたほど。

MF小森飛絢(富山第一3年)

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受けて良し、抜けて良しの得点王

4試合で2度のハットトリックを含む7得点を記録して大会得点王にその名を刻んだ。フリーマンとして巧みにパスを引き出して起点になりつつ、フィニッシュワークでは怖さと精度を出していった。キックの質自体がそもそも高く、トップ下の位置からミドルシュートも狙える。活躍は「はたくところとドリブルのところの判断が良くなった」(大塚史朗監督)成果でもある。名前の読みは「ひいろ」。

MF西川潤(桐光学園2年)

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証明した圧倒的な成長力

登録はMFだが、実際はFWとしてプレー。決勝までに6得点を記録したのみならず、その突破力は相手校にとっての厄介事であり続けた。決勝でも「ものの見事にやられた」(山梨学院・安部一雄監督)という一発を、練習してきた課題のヘディングで突き刺してみせるなど改めて成長ぶりを見せたが、自身の決定機逸もあっての敗戦は苦い思い出に。だが、これを糧に成長できる選手なのは間違いない。

FW久乗聖亜(東山3年)

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間合いと感性の魔術師

コンスタントな活躍という意味では東山で他に候補もいたように思うが、残したインパクトという意味ではやはりこのエースの存在感が大きかった。柔らかなタッチに加えて瞬発的な速さもあり、身のこなしも柔軟。独特の間合いを作って相手DFを出し抜くプレーは出色だった。中学時代はボランチだった選手だが、体も大きくなってFWとして急成長。これから先の成長も楽しみな選手に違いない。

FW宮崎純真(山梨学院3年)

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目覚めた純真なるストライカー

活き活きとしたドリブルで、たとえ単騎で孤立していても打開してしまうその勝負度胸と感覚の鋭さは抜きん出たものがあった。「正直、宮崎頼み」(安部監督)だったのは一面の事実であり、本人もその期待に応えようという責任感を持ったプレーぶりで、守備でもしばしば効いていた。クロスに合わせた決勝でのゴールは余りなかった形だが、この形を増やせるようだともっと怖い真のストライカーになれるはず。

新人王

須藤直輝(昌平1年)

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ベストスーパーサブ

「別に先発でもいいのだけれど」と藤島崇之監督は言うが、スーパーサブ起用だった理由もよく分かる。変幻自在かつ実に滑らかなドリブルと絶妙な位置取りから仕掛けまくるこの男が途中から出てくるのは相手チームにとっての災いでしかなかった。昌平のサッカースタイルにあこがれて大宮JYからやってきた1年生は、すでに複数のJクラブスカウトが興味を示すほどの活躍を見せている。

大会優秀選手

なお、オフィシャルの優秀選手は以下の通り。攻撃的な選手に偏った選考は例年どおりの特色である。サイドバックで優秀選手に入るのは特に難関だ。

▼GK

市川隼(山梨学院 / 3年)

中川真(徳島市立 / 2年)

小原司(日章学園 / 3年)

▼DF

堀江貴大(昌平 / 3年)

関根浩平(昌平 / 3年)

関海翔(習志野 / 3年)

内田拓寿(桐光学園 / 3年)

望月駿介(桐光学園 / 3年)

大石悠介(山梨学院 / 3年)

西澤俊(山梨学院 / 3年)

飯田敏基(東山 / 3年)

中村拓海(東福岡 / 3年)

吉村仁志(大津 / 3年)

【MF】

檀崎竜孔(青森山田 / 3年)

木下海斗(昌平 / 3年)

原田虹輝(昌平 / 3年)

中村洸太(桐光学園 / 2年)

阿部龍聖(桐光学園 / 3年)

西川潤(桐光学園 / 2年)

平松柚佑(山梨学院 / 2年)

野村海(山梨学院 / 3年)

小森飛絢(富山一 / 3年)

平尾拳士朗(藤枝東 / 3年)

大竹悠聖(大津 / 3年)

水野雄太(大津 / 3年)

河原淳(日章学園 / 3年)

【FW】

榎本樹(前橋育英 / 3年)

森田翔(昌平 / 3年)

鈴木唯人(市立船橋 / 2年)

ウォー・モハメッド(三浦学苑 / 3年)

宮崎純真(山梨学院 / 3年)

久乗聖亜(東山 / 3年)

鶴野怜樹(立正大淞南 / 3年)

大森真吾(東福岡 / 3年)

鈴木陽介(日章学園 / 2年)

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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