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次はフランス! U-17日本代表は、この第2戦で「未来」を示す

川端暁彦サッカーライター/編集者
強力ウイング・アドリ(パリSG)を万能戦術兵器・喜田陽が迎撃(写真:佐藤博之)

グループステージ突破を懸けて

 初戦で大勝したチーム同士の対戦となった。2強2弱のグループという様相が見えただけに、「首位突破を懸けた試合になる」(FW久保建英=FC東京U-18)という見立ては、恐らく正しい。「ホンジュラス戦より厳しい試合になる」というFW宮代大聖(川崎F U-18)の予測も間違いないだろう。ただ、2位以内が見えている中で「負けたら終わり」という不安感の中で戦わずにいいということでもある。分かりやすく、チャレンジしていける試合だ。

 フランスについて指揮官は「まあ、デカい」と笑いつつ、やはりセットプレーを懸念材料に挙げる。「190超えの選手が2,3枚いて、セットプレーは攻めの5枚を180~190位の選手を出してくるので、もう物理的に厳しい」と指摘する。日本も185cmの小林友希など真っ向勝負で競れそうな選手もいるのだが、そう多くはない。CBに馬場晴也(東京Vユース)を先発させ、第1戦はCBだった菅原由勢(名古屋U-18)をSBに回す布陣となりそうなのは、高さのある選手を一定数そろえるという狙いもあるだろう。

 もちろん、セットプレーだけのチームではなく、「攻撃の威力・迫力は満点のチーム」(森山監督)。特に個人のウイングプレーから一気にサイドを切り裂いてくるプレーはかなり強烈だ。第1戦では右ウイングのFWヤシン・アドリ(パリSG)が1人で3アシストを記録していたが、まずは彼のような「個」を止めないことには話にならないだろう。破られなかったとしても、そこからCKを取られ続けるだけでも高さの劣勢がある分、自然とキツくなる。そこで左SBには攻撃自慢の鈴木冬一(C大阪U-18)ではなく、抜群の戦術理解力と守備センスを持つ喜田陽(C大阪U-18)を配置して、ウイングに蓋をする策が採用されそうだ。また喜田が第1戦で務めていた右SBには菅原がCBからスライド。菅原もまた1対1の強さはピカイチの選手なので、対面のウイング対応を託せる選手だ。

先発濃厚な奥野耕平(G大阪ユース)がキーマンとなりそうだ(写真:川端暁彦)
先発濃厚な奥野耕平(G大阪ユース)がキーマンとなりそうだ(写真:川端暁彦)

 またボランチでは主将の福岡慎平(京都U-18)が第1戦で負傷退場しており、「ドクターも本人も大丈夫と言っているけれど」(森山監督)、ここは大事を取って先発は回避することとなった。本番はあくまでグループステージを突破してからのこと。ここで主将に無理をさせる必要はないという判断だ。代わって、奥野耕平(G大阪ユース)が先発見込み。こちらも守備に定評のある選手で、「大舞台だから緊張するとか、そういうのないんですよね」と語る強心臓が魅力の黒子タイプ。「体を張るのが僕のボランチとしての役割。攻撃の芽を潰す、相手の起点を潰してやろうと思っている」と燃える。フランスは10番を背負うカケレ(リヨン)らインサイドハーフの選手が中央で起点になりながら、ワイドへの展開からウイングの個人突破という流れが最大の形。このインサイドハーフの起点になる仕事を奥野が潰せるようなら、グッと勝利は近づいてくる。

「殴り勝った」2年前の再現なるか

 ここまで守りの話ばかりをしてしまったが、こと攻めに関してはフランス相手でも十分に得点を狙える算段があるからだ。フランスの脅威を指摘した森山監督も「こっちも負けないだけの攻撃力はある」と自信を見せる。2年前にフランスのホームで行われたバル・ド・マルヌ国際親善トーナメントで対戦した際も、日本は3-2で殴り勝った。そのときのポジティブなイメージも残っているのだろう。選手たちからフランスを恐れるような言葉も聞こえてこない。あの試合ではMF上月壮一郎(京都U-18)のスルーパスから宮代が先制点を奪い、久保がスーパーゴールを突き刺してリードを広げ、そこから相手の猛反撃を受けてセットプレー(!)などで同点に追い付かれたものの、最期はアディショナルタイムで中村敬斗(三菱養和ユース)がFKから劇的決勝弾という流れだった。現在の主軸メンバーがその特長を存分に出した上での勝利の記憶が残っている。

 逆にフランスにはホームで苦杯を舐めたネガティブな記憶である。FWアドリは「一昨年、このチームは日本と試合をして負けている。日本がいいチームというのは知っているし、印象はとても良い」とした上で、「勝つために全力を尽くしたい」と意欲を燃やす。よく欧州勢がやらかしてしまう欧州域外の国を侮って油断するような流れは期待できそうにないが、決勝トーナメントを前に強国との真っ向勝負を体感できる貴重な機会となることも、また確かと言えそうだ。

 日本時間の10月11日20時半から始まるフランス戦は、決勝トーナメント以降も見据えた「未来」を占うゲームとなりそうだ。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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