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U-16日本代表がハンガリーにシュート28本4点圧勝スタート。次戦は世界トップクラスに挑む

川端暁彦サッカーライター/編集者
詰めてきたDF2枚の間を通す見事なシュートでゴールネットを揺らしたFW中村敬斗

ハンガリー、マリ、メキシコが参戦

今年で第2回大会を迎えたインターナショナルドリームカップが6月22日、鳥取県を舞台に開幕した。日本の若年層、そして運営面や人脈まで含めた日本全体の国際経験蓄積を目的として創設されたこの大会に、今年は欧州からハンガリー、アフリカからマリ、そして中米からメキシコの3カ国のU-16代表が参戦。U-16日本代表を含めた4カ国の総当たり戦で覇を競うこととなった。

大会初日の第1試合ではマリが一つ年下のU-15代表を送り込んできたメキシコを圧倒。昨年のU-17ワールドカップでも準優勝するなど「間違いなく世界の育成年代でトップにあるチーム」(森山監督)がいかんなく実力を発揮して、3-0と圧勝を収めた。身体能力の高さに加えて視野の広さ、確かな技術を持つMFモハメド・カマラなどは、視察に訪れた関係者に「すぐにJリーグでやれるレベルかもしれない」と言わせるほどのクオリティを発揮。後半から観戦していた日本の選手も「身体能力だけじゃない。技術もある。これが世界のトップクラスなんだ」(DF菅原由勢=名古屋U18)と率直に驚いたようだが、同時に俄然士気も高まった。

自慢の攻撃陣が爆発

先制点を決めた棚橋尭士(中央)が歓喜の疾走
先制点を決めた棚橋尭士(中央)が歓喜の疾走

日本の初戦の相手はハンガリー。先発11人の平均身長は日本の173.3cmに対して、ハンガリーは180.0cm。体重は63.3kgに対して71.2kgと体格差は歴然としていたが、「大きいけれど、別に怖くはない。俊敏性と機動性なら日本が上だから」(菅原)と、立ち上がりからアグレッシブに勝負を仕掛けていった。

「立ち上がりは多少雑になってもいい。背後にボールを入れて前からプレスをかけて敵陣でプレーする」(森山監督)というコンセプトの下で相手を押し込むと、12分にはFW中村敬斗(三菱養和ユース)のパスを受けたFW棚橋尭士(横浜FMユース)が左足シュートを突き刺して先制点を奪取。続く19分には中村が2枚のDFの間を射抜いてファーサイドへと決める「イメージどおりの形」(中村)という見事なゴールを沈めて2点のリードを奪う。さらに23分にはMF久保建英(FC東京U-18)が右サイドバックの桂陸人(広島ユース)をスペースに走らせてのサイド攻撃から、ファーサイドでMF上月壮一郎(京都U-18)が頭で決めて、あっという間に3点のリードを奪い取った。29分にMFドミニク・ソボスライ(MTKブダペスト)にPKを決められて1点を返されたものの、後半も攻勢を継続した日本が終了間際に棚橋の1点を加えて、4-1と圧勝。大会連覇に向けて上々のスタートを切ることとなった。

そして最強マリとの対峙へ

ディフェンス陣を中心に負傷者が相次ぐ中で迎えた大会となったが、本職ではない菅原がセンターバックとして秀逸なプレーを見せ、両サイドバックも攻守で奮闘。収穫の多いゲームとなった。チームの売りである強力攻撃陣は「最近はどの試合でも必ず点を決めてくれている」(森山監督)というように、この試合でも爆発。久保の注目度がどうしても高くなるが、抜群のシュートセンスを持つ中村、ボールを持って怖さを出せる宮代大聖(川崎F U-18)、しなやかな動きが光る棚橋と、それぞれの個性が光る。「サッカーIQ、プレーの質、判断力と観察力、そしてFWに関してはシュート力を強く求めてきた」という森山監督の薫陶を受けながら、相互の刺激で成長を加速させてきた。

そして24日に行われる第2戦、マリとの試合で攻守両面で真価を問われることになる。「足が伸びてくること、スピード、コンタクトの強さ、彼らが経験したことのないレベルとの戦いになる」と表情を引き締めた森山監督は、「育成年代でトップにいる国であり、それではいけないとは思うのだけれど、1対1では間違いなく勝てないと思う。縦のスピードを落として、2人目、3人目で止める必要がある。守備はマンツーマン気味でボールサイドからガッツリくる。日本ではまずないやり方」と強い警戒心をにじませた。

とはいえ、これほどタフな相手と戦えるのは願ったり叶ったりでもある。世界トップレベルと互角以上に「やれるのならば」(森山監督)見えてくるもの、つかみ取れる自信もきっとある。「自分は変わっていない努力を努力とは言わないけれど、このチームには物凄い努力して変化している選手たちがいる」と自分の選手たちの潜在能力と成長力を信じてもいる。2000年生まれ以降の選手たちで構成された「00ジャパン」が鳥取の地で世界トップレベルに挑む。24日の第2戦、事実上の決勝戦という言い方もできるこの戦いで、日本の未来を担う選手たちの真価が問われる。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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