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あなたも誤解?将来を明るくする週一回の低山里山歩きがもたらすメリット。

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
厳しい冬山に備えて冬毛に変わりつつある雷鳥 ※写真はすべて筆者が撮影

 厳しい環境で生きる野生生物は食べるために野山を動き回らなくてはなりません。食物連鎖の掟で生きている特別天然記念物のライチョウも今は真っ白に衣替えが済んでいる頃でしょう。

 現代は筆者である私を含め高齢化社会の中で生活しています。仕事の効率化やデジタル化、生活の利便性向上、交通機関の発達、医療環境の向上などによって長寿が普通となっています。私たちがヒトという野生の掟の中で身に付けてきた生存に関わる様々な遺伝子に基づく情報と機能は数世代で変わることはないのです。

 健康寿命を延ばすことに無関心な方はそんなに多くはないはずです。低山里山歩きのモチベーションを高め維持するのに役立つポイントをご紹介します。

ススキ揺れる曽爾高原 ※写真はすべて筆者が撮影
ススキ揺れる曽爾高原 ※写真はすべて筆者が撮影

 運動において有酸素領域で行うことが有益であることは様々な発信がなされているのでご存じだと思います。

参考:週1回の「軽」登山で生活習慣病を防ごう  鹿屋体育大学 山本正嘉

 私が実践しているゆっくり歩くフィールド観察ハイキングに参加いただいている皆さんの爽やかな笑顔からも実感しています。

紅葉と光が湖面で競演 ※写真はすべて筆者が撮影 
紅葉と光が湖面で競演 ※写真はすべて筆者が撮影 

 平地を歩くウォーキングやジョギングを実践している方も多いかと思いますので、山歩きとの違いを挙げておきます。

1:登りと下りがある。

2:不整地であり、手足をバランスよく使う必要がある場面がある。

3:背中に荷物を背負っている。

4:人里から離れるので体力に見合った行程管理が必要である。

5:3~6時間程度の天候変化に備える必要がある。

6:栄養と水分補給といった健康管理が必要である。

7:季節や天候、体力や体調に見合った登降速度コントロールが必要である。

 いかがでしょうか。面倒くさいと感じたでしょうか。

「面倒くさい!」これは実は大切な要素なのです。

 運動は筋肉だけでなく、脳機能も活発に活動することが求められるのです。五感に入る情報と身体能力をバランスさせながら、食事や水分補給と衣服調整など健康管理を自分自身で行うのです。

 漫然と行う筋肉トレーニングや音楽を聴きながらのウォーキングとは違い、歩いた距離や時間以上に身体と脳に高い負荷がかかるのです。当然、運動後の休息と良い栄養と睡眠が大切なことは言うまでもありません。

筋肉も脳も使わなければ劣化すると覚えておきましょう。

写真撮影が楽しい。和歌山城を歩く ※写真はすべて筆者が撮影
写真撮影が楽しい。和歌山城を歩く ※写真はすべて筆者が撮影

 大切なのはわかるけれど、始める切っ掛けや続ける動機づけが必要かいう方も多いかと思います。

老若男女、世代を超えて  ※写真はすべて筆者が撮影
老若男女、世代を超えて  ※写真はすべて筆者が撮影

 同じ60歳、70歳、80歳同士が出会う機会があった時、その姿勢や老化具合に危機感を感じることがあると思います。逆に優越感を感じる方もいるかもしれません。若々しい方はどういう日常を送っているのでしょうか。できることから真似してみてはいかがでしょうか。

 今まで運動らしい運動をしていなかった方にこそ知ってほしい低山里山歩きや城址や神社や古道巡り、ジオサイトや博物館巡りを週に一回ほど行うことのメリットについてお話しします。

1:高血圧・糖尿病・膝関節症・腰痛・骨粗鬆症など慢性疾患の有病率が低下

2:脚筋力・腹筋力・敏捷さ・歩行速度など基礎運動能力が向上

3:四季の自然環境変化や解放感によって、コミュニケーション能力が向上

4:森林浴効果によるリフレッシュ効果によって、精神の安定性が向上

5:多様な自然環境や地理と歴史を自分の足と目で学べるので、好奇心が向上

6:姿勢が良くなり笑顔が多くなるので、日常生活の質が向上

7:食事の質に気を配るようになり、食生活の質が向上

8:自分自身に自信を感じられるようになり、外出が気楽になる

 いかがでしょうか?

 激しくなくても運動を継続することが大切さだということは、病気や怪我で寝込んでしまった後の体力筋力低下に愕然としたことがある方ならお判りでしょう。

 大汗をかく登山を長時間行う必要はありません。同じ山やコースでも構いません。四季折々に変化する草木を見るだけでも良いのです。友人知人との会話を楽しみながらお出かけしてみませんか。

 最後に若い世代の方が見ていただいているならお願いです。

 ご両親やおじいちゃん、おばあちゃんがお出かけしやすいように気遣っていただけたらと思います。

過去記事:お散歩アウトドアのすすめ 強いストレスに曝された生活を取り戻す小さな試み。

参考文献:山本 正嘉 鹿屋体育大学 週1回の低山登山がもたらす恩恵とその具体的な実施方法について

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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