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虫の少ない秋冬の低山ハイキングは女性におすすめ 安全安心に楽しむ5つの秘訣

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
寒気がやってきた晩秋 雲海の日の出に心が躍る *記事の中の写真はすべて筆者が撮影

つい先日まで掛布団を蹴飛ばして寝ていたのに、無意識に掛布団を引き寄せてしまうひんやりとした夜も多くなってきました。暖かい空気と冷たい空気が出会うこの季節になると、早朝の山間地には素晴らしい雲海が現れます。ヒンヤリと感じる空気が新鮮です。赤やオレンジや黄色の衣装をまとった梢や落ち葉が美しい秋の登山を楽しむポイントをお伝えします。

立ち止まって上を見上げてみよう
立ち止まって上を見上げてみよう

虫のいなくなる秋から冬は女性登山者の皆さんが喜ぶ時期です。少し切ないけれど美しい季節です。

「頂上を目指さない山歩き」を一層楽しくする5つのポイントをご紹介します。

湖面のカンバスも見逃さない! 紅葉に浮かぶ水草
湖面のカンバスも見逃さない! 紅葉に浮かぶ水草

1:防寒のポイントは血管を意識しましょう。

脈を測ることができる体の部位は動脈が皮膚の浅いところを通っています。手袋と袖口にすき間をつくらないこと、頸部、つまり首回りをネックゲーターで覆うことが大切です。頭部は重要な脳があるので帽子で保温することを忘れないようにしましょう。

2:ゆっくり歩きましょう。発汗も少なめなので防風ウェア(レインウェアは防水防風機能があります)を着ている方が安心です。ゆっくり丁寧に歩けば転ぶことも少なくなります。可愛いキノコなどを見つけることもできるので一石二鳥です。

ゆっくり歩けばたくさんの時間を山で過ごすことになります。そこでおすすめするのは、行程が短く頂上を目指さない自然と遊ぶ山歩きなのです。引き返し下山開始時刻を遅くても13時には設定しましょう。(もちろん計画を立てて決定するのはあなた自身です。)

「自分は大丈夫!」が一番あぶない。ホッと気を抜いた時に起きる転倒。その訳は?」 ⇒ こちら

朽ちて自然に帰りつつある倒木 自然の営みに目を向けてみましょう。
朽ちて自然に帰りつつある倒木 自然の営みに目を向けてみましょう。

3:陽が短いです。早朝に出発するようにしましょう。秋から冬への移り変わりを発見することができます。

ヘッドランプは必ず持っていきます。電池は新しいものに交換しておきます。

暗い時間に歩く予定を立てていないのになぜ必要なのでしょうか? 

それはあって欲しくないことでも想定して計画を立ててほしいからなのです。薄暗い中でも足元と登山道を照らせば、転倒も道間違いも防ぎやすくなります。加えて暗い中でほかの人に自分の存在をアピールすることもできるのです。(ピカッと光るものは昼間であってもヘリコプターから視認しやすいという報告もあります)

私の答えは「保険・余裕・備え」です!

「週末は山登りですか?「その計画と装備、命の軽量化になっていませんか?」 ⇒ こちら

淡雪が降った朝、足元に秋の名残がありました。
淡雪が降った朝、足元に秋の名残がありました。

4:温かい飲み物を魔法瓶に詰めて出かけましょう。

日常の感覚で1000mの山に出かければ平地にくらべ6度程度気温は低いので肌寒く感じます。冷え込んだ朝にはたくさんの霜で真っ白になることもあります。身体の中から温めると心に余裕ができます。体温保持のために行動食も多めに持っていきましょう。

良くある質問:行動食はどういうものですか? なぜ必要なのですか?

短い時間の休憩時にすぐに食べることができる「おやつ」と思ってください。スポーツ系の栄養ゼリー、豆大福、どら焼き、各種栄養バーなどいろいろな種類から好きなものを選んで試してみましょう。同じものをがっつり食べることは避けるのが賢明です。食べる目的は血糖値をできるだけ下げ過ぎないよう上げ過ぎないようコントロールしたいからです。筋肉と脳の機能を良い状態で維持するために1時間に一回の割合で小まめに食べましょう。

アスリートの皆さんは、一般の方よりエネルギーの出し入れが活発なはずでから、普段から「血糖値をゆるやかに上げること」を心がける必要がありそうです。また、カロリーだけ十分にとれていても低血糖状態では元気が出ません。体も動かないし、気分も落ち込むのは当然

出典:SPORTSONE.JP

表面霜 真っ白の木の葉を敷き詰めたかのようです。
表面霜 真っ白の木の葉を敷き詰めたかのようです。

5:デジカメのターゲットを変えてみよう。

いつもは展望が良い場所でシャッターを切るものです。ここまで読んでいただいた中で紹介した写真は見上げたり、しゃがんだり、立ち止まって季節ならではの小さいものを私が撮影したものです。

秋は冬の入口、冬は春への助走の時期です。

お友達と一緒に行くと「私と視点がちがうな、へぇーそこは気が付かなかった」などと自分の視野を広げることができます。何歳になっても面白がれる、なんて素敵な事でしょうか。

冬越しの準備は完了です。葉を落とした木々にも注目です。
冬越しの準備は完了です。葉を落とした木々にも注目です。

収穫の秋です。週末は街を抜け出し郊外へ足を向けてはいかがでしょうか。

合せておすすめ「美しい紅葉の裏に危険が潜む秋山登山 知っておきたい命を守る7つのルール」 ⇒ こちら

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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