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「今日もどこかで起きている!スズメバチ被害」山歩きで注意したい危険生物 昆虫編 

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
実りの秋、スズメバチの活動が活発な時期ですね *記事の中の写真はすべて筆者が撮影

家族や友人を誘って近郊のハイキングに出かけるには良い季節が近づいてきました。楽しいハイキングを台無しにしてしまう原因の中のひとつに危険生物による被害があります。人の生活圏でも発生するスズメバチ被害です。登山やハイキングで注意すべき危険生物とその回避するポイントをご紹介します。

夏が終わる!黄昏のバッタ 
夏が終わる!黄昏のバッタ 

スズメバチ

アルプスの夏、一斉に咲いていた花々の中を元気に飛び回っていたハナアブなどの昆虫たち、9月の半ばとなると気温が下がることが多くなり、姿を見ることが少なくなってきます。

一方、身近な里山である1000m前後の低山はこれからがハイキングの本番です。そこで気になってくるのがスズメバチです。

私の体験をお伝えします。誰もが楽しいと感じる穏やかな登山道でした。目の前に黄色と黒の胴体を持つ指の大きさほどもあるスズメバチに出くわした時、私がとるべき行動はその場から離れること、それが精一杯でした。

それぞれのスズメバチの特徴をよく知って、スズメバチを驚かせないように細心の注意を払いながら生活したいもの。特に子供を持つ親は十分に注意して子供たちを遊ばせたいものです。

出典:自然のチカラ~昆虫や野生動物、植物の不思議 スズメバチの種類ごとの危険度レベル

今の季節、女王バチのまわりには数百もの働きバチが、巣を拡張し守っているのです。

9月にはいると、いよいよ来年女王バチになる新女王と配偶者のオスといった生殖虫の生産が開始されます。その頃にはちょうど、働きバチの数も最大となり、餌集めも巣の防御も万全の状態に整っているのです。巣に刺激を与えるものには容赦なく、多数の働きバチが毒針を使った激しい防衛行動を示します。

出典:NHK解説アーカイブス

基本的に昆虫などを食べる肉食ですが、花の蜜も集めて巣に持ち帰ることもあるようです。
基本的に昆虫などを食べる肉食ですが、花の蜜も集めて巣に持ち帰ることもあるようです。

登山者やハイカーが刺されないために注意すべきこと。

★登山道を外れて脇道に入ることは、うっかりスズメバチの巣に近づく可能性が高まるので避けるようにしましょう。

★先頭を歩くとき、登山道の行く手をふさぐようにスズメバチが周回する様だと近くに巣がある可能性が高いです。静かに素早く通り過ぎるようにしましょう。

★ハチが周囲をホバリングしてカチカチと威嚇する音を出すようだと危険度は高まっています。引返すか大きくう回して、急いで、かつ静かにその場を離れます。

★偵察で近づいてきたハチを手などで追い払わないこと。

★黒い服より白い服の方が攻撃を受けにくいといわれています。黒髪、黒い瞳も淡い色の帽子とサングラスで防御が良いでしょう。

★すべてが雌である働きバチは巣を守るため、不用意に近付いた登山者に対して「警報フェロモン」を毒針から噴射する場合があります。その警報フェロモンがまき散らされると、付近の登山者が一斉に刺されてしまうことになります。香水には警報フェロモンに近い成分を含む場合があるので、強い香りは避けるのが無難です。

飛び回るハチを刺激してはいけません。
飛び回るハチを刺激してはいけません。

もし、刺されてしまったらするべきこと。

☆刺された場所から10m以上は離れること。

☆ポイズンリムーバーなどの器具で毒液を体外に吸い出すこと。

ポイズンリムーバーはハチ毒などを吸い出す器具です。
ポイズンリムーバーはハチ毒などを吸い出す器具です。

☆流水で毒素を洗い流して冷やすこと。

☆局所的な痛みと腫れであれば、抗ヒスタミン剤の軟膏・クリームを活用すること。

☆患部を高い位置に上げると痛みが和らぐ場合もあります。

☆全身にアレルギー症状が出る「アナフィラキシー」が起きた場合は、緊急事態です。すぐに医療機関へ運ばなくてはなりません。

☆上記の応急処置をして、安全な場所であお向けで足を高くして楽な姿勢で寝かせ、吐いたものをのどに詰まらせないよう顔を横に向け、呼吸の状態を常時観察するなど、医療関係者からの助言に従うようにしましょう。

虫刺されに対するアレルギーがある一部の人では、全身反応という、ずっと重度で危険な反応が起こります。その場合、刺し傷によってアナフィラキシーが起こり、死に至ることもあります。実際、米国疾病対策センターの推計によると、米国では刺し傷のアレルギー反応によって毎年60~70人が死亡しています。さらに、死には至らないが非常に重篤な反応が数万人で生じています。

出典:MSDマニュアル 家庭版

スズメバチが攻撃をするのは、あくまでも自分たちの巣を守るための行動です。生態系の一員であるスズメバチを駆除するのは家の近くに巣をつくった場合にしましょう。

登山者やハイカーは自然界へのビジターということを忘れないで、秋のハイキングを楽しんでください。

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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