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猛暑の中での登山、熱中症や最悪の事態を防ぐ5つのポイント

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
夕闇迫る中のヘリ救助。記事中の写真は全て筆者が撮影

梅雨が明けていきなりの猛暑となりました。ビルの反射と谷間の歩道は危険なくらい暑くなっています。

暑さに馴れることを暑熱馴化といいます。まだ暑さに馴れていない梅雨明け直後の今、熱中症の危険を上手に避けながら、山で出会う絶景、可憐な高山植物などを楽しむ為のポイントをご紹介します。

吹き抜ける風は爽やか
吹き抜ける風は爽やか

標高が1000m高くなれば約6.5度気温は低下し、風速は1m/s 増す毎に体感温度は1度低くなるといわれています。

山の中には緑いっぱい、木陰が多いので直射日光を避ければ、猛暑の時期でも山なら楽しく過ごせるけれど、実際には熱中症などの事態になっている人も多いのです。

熱中症は外気温の高さだけが原因ではなく、登山の運動強度による体温上昇と湿度と風などの条件が組み合わさり、体温が制御できず高くなることで起きる様々な症状です。私たち山岳ガイドは医療機関から離れた山中でこのような事態を避けることが大変重要であると考えています。予防が最も大切です。

緑は天然クーラー
緑は天然クーラー

できることは熱中症を防ぐこと。山を快適に歩く五つのポイント!

1:歩きながら水分補給ができるハイドレーションシステムを活用すると小まめな水分補給が可能です。補給のタイミングは30分毎に2~3口を飲むようにします。50ml程です。私の愛用グッズは2000ml までの水が入りますので、自分の歩行時間に合わせて持っていけば、一日中不足することはありません。汗として失うミネラル補給の為にスポーツ飲料を1口、水を2口と組み合わせるなど工夫するのも良いことです。

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2:熱をこもらせない風通しの良いメッシュ素材の服装と肌を露出して直射日光で体温を上げないことです。もちろん行き過ぎた日焼けも避けたいところです。直射日光を浴びて頭部を熱しては体に悪いので、この時期はハットがお薦め!

3:体温を上げすぎない為にはゆっくり歩行が大切です。軽く息が弾んで会話ができる程度の心拍数を意識しましょう。風通しが良い木陰があれば積極的に利用して「立ち休憩」をとりましょう。登山では50分歩いたら10分休憩といったパターン化された歩行を勧める場合もありますが、暑いこの時期は無理の無いよう体温を上げすぎないよう小まめな休憩をお勧めします。

4:血糖値を安定させるために小まめな行動食の摂取をします。お弁当を広げての昼食も楽しいですが、行動中1時間に一回程度は行動食を摂るのがお勧めです。行動食とは立ったままでもすぐに食べられるお菓子などです。糖質やアミノ酸を含んだスポーツ系のゼリーやバーは重宝します。雨蓋やポケットに入れておくといいですね。

水分も同時に補給できるアミノ酸ゼリーがあると安心
水分も同時に補給できるアミノ酸ゼリーがあると安心

5:何と言っても早朝出発がお勧めです。 昼過ぎには下山してのんびりしてみてはいかがでしょうか?早朝出発のメリットは熱中症対策だけではなく、もっと大切なことがあるのです。

山の中ではうっかりしたミスによる怪我、道迷いは誰にでも起きる可能性があるものです。行動可能な時間が十分あることで、私たちは焦らずにゆっくり確実に下山するなどの行動ができるのです。

どんなトラブルも起こすのは自分自身。予防行動が山での病気発症を防ぎます。

楽しい夏休みを!!

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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