51.6%が避難所等の公共トイレを利用したい 避難所における新型コロナウイルス感染症対応とトイレ課題

(写真:ロイター/アフロ)

今回のテーマは、自然災害時の避難所における新型コロナウイルス感染症対応とトイレ課題です。

地震や水害が起きると、私たちは必要に応じて避難所に避難することになります。

避難所というのは、不特定多数の人が集まる場所で、主に公立小中学校の体育館や公民館等になります。3つの密(密閉、密集、密接)を避けることが難しい環境です。

2020年4月7日、国から地方自治体に連絡された「避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について」には、平時の事前準備及び災害時の対応に向けて留意すべき内容が示されています。

そこで、本記事では、これらの留意事項に関して検討する際に必要なトイレの課題を整理します。

1.ホテル・旅館等を避難所として活用する際のトイレ確保

自然災害時は避難所が不足することが想定されるため、指定避難所以外の避難所の開設、ホテルや旅館等の活用等を検討することになっています。密集を避けるため分散して避難しようというものです。

現状における外出自粛と災害時が大きく異なる点は、断水・停電などによりライフラインが途絶えることです。もちろん水洗トイレは使えなくなります。そのため、ホテル・旅館等を避難所として活用することを検討するのであれば、トイレ機能をどのように確保するかをあわせて検討することが必要です。トイレがない場所では避難生活を送ることができません。災害用トイレの備蓄は必須ですが、それとともに水洗トイレを再開するための建物の給排水設備の点検方法の作成も必要になります。

参考:集合住宅におけるトイレの災害対応

2.親戚や友人の家等への避難する際のトイレ備蓄

避難所が過密状態になることを防ぐため、可能な場合は親戚や友人の家等への避難することが考えられます。2018年に日本トイレ研究所が東京都および大阪府の2000名を対象にアンケートを実施したところ、災害用トイレを備えている割合はわずか16.9%でした。

親戚や友人の家に避難する場合、そこのインフラが被災していなければよいですが、被災している場合は、自らのトイレの備えを持参するか、もしくは避難先に事前に備えておくことが必要だと考えます。現実的なのは、避難することを前提にお互いの分を備えることが必要だと思います。

調査・作成:NPO法人日本トイレ研究所
調査・作成:NPO法人日本トイレ研究所

3.避難所のトイレ・手洗い設備の確保と維持管理

トイレと手洗いは、具体的な設置場所も含めてセットで考える必要があります。手洗い設備に関しては、歯磨き等の口腔ケアを行う場としても必要です。手洗いに関してはチョロチョロと洗うのでは不十分になるため、しっかり手を洗うことができる設備の確保について検討することが必要です。

また、断水により流水による手洗いが出来ないことも大いに考えられます。その場合は、ウェットティッシュ等による拭き取りや消毒用アルコールで対応することになります。消毒用アルコールについてはトイレの入口等にも設置することが必要になります。設置場所と必要量を決めておくことが求められます。

トイレの維持管理に関して「避難所における感染対策マニュアル(2011 年3月 24 日版)」では、以下のように記述されています。

トイレ数に対する使用人数の潜在的な多さのため、一時避難所は、特に衛生設備の頻繁かつ管理された清掃、およびメンテナンスを必要とする。避難所として整備された施設では職員がトイレに配置され、大勢が一度に衛生設備を使うのを管理しており、少なくとも1時間に1回は環境表面の拭き掃除をする。また、手洗い石鹸やペーパータオル、トイレットペーパーなどの基本的物品が補充される。

一時避難所では、設備の規模や特性などにより、環境表面の清掃に限界がある。そのため、手指衛生の重要性が増す。

出典:避難所における感染対策マニュアル(2011 年3月 24 日版)

トイレの衛生を管理する責任者を配置し、定期的に清掃・消毒・管理する体制の確保および平時の教育が必要です。また、被災者だけで対応することは困難ですので、専門業者等も含めてどのように実施するかを検討することが必要です。とくに屋外に設置する仮設トイレについては、給水やトイレットペーパー補充、ごみの回収(使用済みのトイレットペーパーやサニタリー用品等)、手に触れる場所の消毒、トイレ内の掃除、くみ取り等を定期的に実施することが求められます。これについてはし尿収集を担っている団体・企業との連携も不可欠です。

前述のマニュアルには、手指衛生のモニタリングが有効であることが示されています。自然災害時は、水洗トイレが使用できず、災害用トイレを使用することになります。適切な方法での使用を促すためには、手指衛生とセットで、災害用トイレについても使用方法等をサポートする仕組みが必要です。西日本豪雨災害の際に、愛媛県の病院においては、トイレ専用のスタッフを配置し、外来患者に対して災害時のトイレ使用方法を説明するようにしました。

4.避難所トイレの換気機能および排水機能の確保

トイレにおいても十分な換気が必要です。トイレに窓があるのかどうか、換気扇やガラリの有無も確認しておくことが必要です。避難所となる小中学校では、換気扇が汚れていたり、故障していることも考えられます。事前の確認と清掃が必要です。

また、トイレ内の排水口が詰まっている場合もあるため、トイレ空間内の衛生が保たれるように平時から点検を徹底することが必要です。

換気扇とガラリ(撮影:NPO法人日本トイレ研究所)
換気扇とガラリ(撮影:NPO法人日本トイレ研究所)

5.有症状者のための専用トイレおよびスペースの確保

症状が出た方のための専用スペースとトイレを確保することが必要になります。既設のトイレを専用として使用できればよいですが、トイレの数や動線、管理等により無理な場合は、簡易トイレ等を用いて新たにトイレスペースをつくることが必要になります。その場合、プライバシーを守るためのパーテションや簡易なトイレブース等を併せて備えることが必要です。

(参考:簡易トイレの種類と特徴)

6.在宅避難者のためのトイレ対策

前述の日本トイレ研究所によるアンケートでは、「大地震で地域全体が停電・断水している時、あなたはどちらでの避難生活を選びますか?」という問いに対して、67.2%が自宅での避難生活を選びました。建物が危険でなければ自宅を選ぶのは当然だと思いますし、とくに感染症流行時であればなおさらです。

しかし、「大地震が発生し、断水により自宅の水洗トイレが使用できなくなった場合、あなたはどうしますか?」という問いに対しては、「避難所のトイレを利用する」が33.9%で最も多く、次いで多いのが「公園や公衆トイレを利用する」17.7%でした。これらを合せると51.6%の人が公共トイレを期待していることになります。もちろん自助として災害用トイレを備蓄することは重要ですが、避難所のトイレ対策は、避難所に避難する人だけでなく地域で在宅避難している人も利用することを想定して検討することが必要だと考えます。

調査・作成:NPO法人日本トイレ研究所
調査・作成:NPO法人日本トイレ研究所

避難所のトイレ対策については、2016年に内閣府(防災担当)が「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」を作成しましたので、市区町村はこれに基づいて「災害時のトイレの確保・管理計画」を作成することが必要です。その際には、新型コロナウイルス感染症を考慮した内容を盛り込むことが必要だと考えます。