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米国の干ばつ深刻化 ラニーニャ現象、この冬も

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
米国の半分の地域で、干ばつや異常な乾燥が続いている(写真:ロイター/アフロ)

 米海洋大気庁(NOAA)は20日、この冬の天候の見通しを発表しました。ラニーニャ現象により偏西風が押し上げられ、南西部、メキシコ湾岸、そしてアラスカ西部で平年より気温が高くなる可能性が高くなっています。

米国のこの冬の気温予想図(NOAAホームページより)
米国のこの冬の気温予想図(NOAAホームページより)

米国の半分で干ばつ被害

 降水量が少なく、乾燥が続く可能性もあります。ラニーニャ現象が発生した2020年後半以降、カリフォルニア州など西部では極端に雨が降らなくなり、異常ともいえる乾燥が続いていて、解消の見通しは立っていません。

 また、最新の干ばつ監視情報によると、現在、米国の半分の地域で干ばつとなっていて、極度の干ばつとなっている地域もわずかながら増えています。生活への影響も深刻で、米国全体の約7割にあたる2億1,600万人以上に影響があるそうです。

【2022年11月~2023年1月の干ばつ予想図】米国の半分以上の地域で、干ばつが続く予想となっている(NOAAホームページより)
【2022年11月~2023年1月の干ばつ予想図】米国の半分以上の地域で、干ばつが続く予想となっている(NOAAホームページより)

 日本では大雨による影響の方が大きいため、全国の半分で干ばつが起こる状況は想像できませんが、この夏は欧州や中国で日照りによる影響が深刻化しました。ドイツではライン川が干上がったため物流が滞り、中国では長江の水位が低下したことで水力発電が不足し、大規模な計画停電を余儀なくされました。

輸入小麦の半分は米国から

 干ばつとは長期間にわたる雨不足、雪不足で、数か月からときには数年続くことがあります。米国では最も広範囲に影響することから、被害額が高額となる気象災害のひとつに考えられています。

 日本への影響も心配です。たとえば、日本は小麦の約9割を輸入に頼っていて、その半数が米国産です。

日本に輸入される外国産小麦のうち、半分が米国産
日本に輸入される外国産小麦のうち、半分が米国産写真:アフロ

 米国では秋に種をまいて、翌年の春から初夏に収穫する冬小麦が多く栽培されていて、主力産地であるカンザス州からテキサス州にかけては現在、干ばつのレベルが最悪です。

 歴史的な円安で、身の回りのものが次々と値上がりしているなか、世界的な異常気象も頻発しています。今まで興味はあっても遠い存在であった世界の天気がより一層、身近に感じられます。

【参考資料】

米海洋大気庁(NOAA):U.S. Winter Outlook: Warmer, drier South with ongoing La Nina、October 20, 2022

米海洋大気庁(NOAA):U.S. Drought Weekly Report for October 18, 2022

米国立気象局(NWS):Understand Drought and Know How to Respond

ABC NEWS:Bodies of water all over North America are drying up due to drought, climate change: Experts、October 20, 2022

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは117冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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